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脚の付け根の骨折 〜早期手術と予防について〜

高齢化社会に伴い、脚の付け根の骨折=大腿骨近位部骨折が増加しています。脚の付け根を骨折すると歩行に影響が出るだけでなく、場合によっては寝たきりや亡くなってしまう場合もあります。もし骨折してしまった場合は早期に適切な治療(ほとんどが手術になります)を受けることと、次の骨折を予防するためにその原因となる骨粗しょう症の治療をすることが大切です。

 

社会医療法人恵仁会 くろさわ病院
整形外科・リハビリテーション科 (☎0267-64-1711) 黒澤 一也 医師

 

大腿骨近位部骨折とは?

脚の付け根の骨折=大腿骨近位部骨折には大きく分けて3つあります(図1)。1つは大腿骨頭のすぐ根元で折れる大腿骨頚部骨折、ずれがあるかどうかによって治療法が異なります。次に大転子と小転子と呼ばれる2つの出っ張りの間で骨折する大腿骨転子部骨折で骨折の程度はさまざまです。最後に大腿骨転子下骨折といって先ほど説明した転子部骨折より下で起こる骨折です。

大腿骨近位部骨折は年間10数万人以上の方が受傷していて、高齢者が多く骨粗しょう症が関係してくる場合がほとんどです。そのため女性に多く、骨粗しょう症による背骨や手首の骨折を経験した方はそうでない方に比べ危険性が高くなります。またほとんどの方が転倒して骨折しますが、中には転倒してから時間が経って骨折が分かる場合や、はっきりとした転倒などのケガがなく骨折する場合もありますので注意を要します。

 

大腿骨近位部骨折の診断と治療

大腿骨近位部骨折は先ほど述べたように転倒して受傷される場合がほとんどで、痛みのため立位や歩行ができなくなり病院に救急車で搬送されることが多いです。X線撮影をすれば一目瞭然の事が多いですが、場合によってはX線像では分からずMRIにて診断する場合もあります。補助診断としてCT検査を実施し骨折の状態を把握して手術方法を決定します。早期離床・早期リハビリを目的にほとんどが手術になりますが、現在日本では入院してから手術までの待機期間が平均4.1日あります。しかし海外のデータなどによると入院してから手術まで可能な限り早い方が術後の回復がよいと言われていて、最近では受傷当日や翌日に手術治療を行う場合も増えてきています。手術の方法は骨折の型によりますが、ずれの大きい頚部骨折は人工骨頭置換術(図2)、ずれの少ない頚部骨折はスクリュー固定(図3)、転子部や転子下骨折は髄内釘型の金具を使って手術することがほとんどです(図4)。しっかりと手術をして手術翌日から歩行練習等を始めることで、最近のデータでは入院は約1ヶ月程度となっています。

 

 

 

大腿骨近位部骨折の予防

大腿骨近位部骨折を起こした人は逆側の骨折を起こすことが多いと言われていて、大腿骨近位部骨折の治療を行った後は骨粗しょう症の治療をした方がよいと言われています。もちろん転倒を予防するためのリハビリや運動も必要になりますし、バランスのよい食事を心がけることも大事です。また骨粗しょう症と診断された方や過去に背骨や手首などの骨折をした方は大腿骨近位部骨折を予防するために骨粗しょう症の検査や必要に応じて治療を受けるようにしましょう。

地域の皆さんが脚の付け根を骨折せず元気にしっかり歩けて生活できるよう、予防をしっかりしていきましょう!