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画家 上田 暁子さん

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画家

上田暁子さん

充実した美術予備校時代

絵を描くことを仕事として意識したのは高校受験の時。両親の薦めもあって普通科に進みましたが、その時に「3年頑張って、それでも美大に行きたいなら応援するよ」と言われたのです。高校では美術班で活動しつつ、長期休みを利用して従姉妹のアパートに居候して、埼玉の美術予備校にも通いました。そこでは毎日、朝9時から夜11時頃まで教室に入り浸る生活。基礎からデザインまで集中して学べ、厳しいけれど実りのある期間だったと思います。美大附属の生徒さんも多く、自分にとっては都会の息吹きに触れられる機会でもあり、予備校に行けるのは毎年とても楽しみでした。

 

時の流れや空気感覚を描く

大学で油絵科を選んだのは、高校の頃から好きな素材だったから。いろいろな試みをしてみても、油彩はそれに耐えてくれるんです。考えながら描くことが多いのですが、上に重ねていける油彩画の場合には、失敗が途中から成功に変わることもあるのです。

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また学生時代の前半はモノを中心に描いていましたが、徐々にコマ割りのように人物が連なっている抽象的な画面が多くなっていきました。たとえば夕方に散歩をしている時に感じる、夕暮れ時の妖しい雰囲気や子どもの頃を思い出すような懐かしさ。そうした感覚や時間の流れ、人の動きを、モノそのものよりも表現したかったのです。

 

「はるひ絵画トリエンナーレ」への3度目の応募で大賞を受賞したのも、そんな、少女が連続して動いているような作品。時間や動きを画面に表現するのは、今も続くテーマのひとつです。

 

土地のイメージを表現の中へ

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2011年には、ずっと挑戦したかった大原美術館でのアーティスト・イン・レジデンス(滞在制作)の機会を得て、3ヶ月間制作をさせて頂きました。アトリエとして貸していただいたのは、洋画家・児島虎次郎氏ゆかりの別邸「無為村荘」。深い森と、オリエンタルと西洋の入り混じる不思議な空間で、作品も環境からとても影響を受けました。また昨年1年間、パリで滞在制作できたのも貴重な経験になっています。滞在中に出かけたチェコでは、国立自然公園の山小屋で寝泊まりしたり、森の中でダンスのワークショップに参加したり。ヨーロッパでは自然との関わり方がとてもカジュアルで、そのことも新鮮でした。

無為村荘での木々や草が次第に萌えてくる春の感覚、ヨーロッパの森で過ごした経験。その土地でしか見せてくれない自然のイメージや、特別な空気感がとても面白く、これからもいろんな場所へ赴いて制作、発表できたらいいなと思っています。

 

小学生の頃は浅間山のふもとでキャンプをしたり、山のぼりをしたり、当たり前のようにしていて、ことさら自分がネイチャー志向な人間とは思っていませんでしたが、今、自然からインスピレーションを多く受けているのは、その頃に培われていた感覚が刺激されているのかもしれません。