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瑞宝単光章 消防功労 受賞 渡辺 一夫さん

渡辺 一夫さん●瑞宝単光章 消防功労 受賞
渡辺 一夫さん

1951年佐久市入沢(旧臼田町)生まれ 1975年臼田町消防団入団 1992年同団副団長、1998年から2004年まで団長を務める 2001年臼田町消防団が水防功労者として国土交通大臣表彰、翌年防災功労者として内閣総理大臣表彰を受賞 2012年秋の叙勲瑞宝単光章受賞

 

地域の人へ恩返しを

子どもの頃住んでいた赤谷は、10軒ほどの家が寄り添って建つ山あいの小さな集落でした。青沼小学校まで片道4㎞の道のりを、谷川の急流に沿って毎日歩いて通っていたものです。冬は雪が背よりも高く積もって白いトンネルになるようなところですが、両親や地域の方が雪をかいて安全に歩けるようにしてくれていました。時には長い通学路の途中で、おにぎりやお煎餅をくれたり、急な雨の時に傘を持たせてくれたりする人も。地域の人に守られ、育てられたようなもので、今でも感謝に堪えません。24歳になって消防団に入ったのも、地域に恩返しをしたい、今度は自分が地域の皆さんを守りたいと思ったからでした。

 

臼田警察署庁舎の新築落成記念式典にて 30年の消防活動を振り返って

入団当初から担当してきた入沢地区の中央には、千曲川へ流れ込む谷川が走り、大雨の時などには災害の発生も予測される地域です。団長時代に経験した1999年のゲリラ豪雨は忘れられません。8月13日の夜から激しい雨が続き、翌日になって雨川の堤防が決壊。谷川の橋が流され、道路が決壊する中、団員総出で夜を徹して土のうを積むなど対応に当たり、床上浸水などの家屋被害はあったものの、人的被害をゼロに抑えたのです。2001年の台風でも雨川が増水しましたが、前年までの教訓から堤防の決壊を未然に防ぐことができました。
この年の活動によって国交大臣と内閣総理大臣の表彰を受け、首相官邸に出向くなど貴重な経験もしましたが、いずれも団員の皆が一丸となって地域を守ったからこその受賞だと思っています。
野火火災や林野火災を防ごうと、八千穂や佐久町の消防団と連携して山火事防災パレードを行ったこともあります。実はこの当時、多発していた野火火災がどうにも減らず、ついには妻と2人、法被持参で北向観音へ神頼みに出かけたことも。不思議なことに参拝してからは町内の火災がぱったりなくなったんですよ。

 

仲間たちと長野県綱引選手権大会に参加人の絆が地域を守る

人のつながりが地域をつくるというのが若い頃からの持論。消防団以外にも、地元の仲間たちとさまざまなことにチャレンジしてきました。1987年には「ふれあい橋の会」というグループで、綱引大会などに参加。消防団員を中心に20~30代の若いメンバーが集まり、県内でも上位に入る強豪チームでした。その時のメンバーを中心に、2004年には自分たちで炭焼きを行おうと「一歩の会」を結成。地域の豊かな自然を生かし、お年寄りと子どもたちの交流の場にもなればと思い、炭窯作りから森林整備、キノコ栽培まで取り組んでいます。
消防団を退団し、これからも力を入れたいのは地域づくり。入沢を山菜の村、キノコの村として発信して、三世代交流や山村と都市との交流ができる場にしたいと考えています。我が家でもシイタケやクリタケ、タラの芽の栽培を始めました。今は車社会で、同じ地域でも話もせずにすれ違ってしまうことも多いですが、人同士の結び付きを強くすれば「自分たちの町は自分たちで守る」という意識も生まれてくると思うのです。