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ジャパンチャレンジャーアワード in 小諸グランプリ受賞 田中 由希さん

たなか ゆき 1979年佐久市臼田町生まれ 高校卒業後2年間カナダへ留学 輸入家具会社を経て電子機器・部品を扱う会社に入社、13年間販売窓口として世界中の顧客を相手に営業事務をこなす2019年3月押し花の資格を取り「Rebouquet(レブーケ)」起業

 

 夢は在宅勤務の内職

両親共働きの家庭で育ち、母親は看護師をしていたので、夜勤で家を留守にすることも多く寂しさを感じることがありました。そんな理由から、家で作業ができ、家族との時間がとれる内職の仕事をすることが子どもの頃の夢でした。

英語が好きで高校卒業後に2年間カナダへ留学。送り出してくれた両親には感謝しています。民族や考え方の違いなどを受け入れ、多様性に順応するところに感銘を受けました。日本へ戻った後は語学力を活かし家具の貿易業務を経て、営業事務の仕事に就きました。結婚して2人の子どもにも恵まれましたが、夫は単身赴任で母親の手を借りても子育てのほとんどを1人で抱えている状態。仕事も忙しく、子どもにゆっくり向き合う時間もありませんでした。

 

 働く意義とは

花びらをバラバラにして乾燥させ、色を付けて元の形に戻していきます

「押し花を仕事にしよう」と思ったのは、たまたまネットで見た押し花に感動し、魅力を感じたからです。「これを仕事にしたい!」と瞬間的に思いました。忙しく仕事をこなし、子どもとも過ごす時間が少なく、働く意義がわからなくなっていた頃で、子どものときに夢見た内職の形が見えたような気がしました。それからは月に一度、東京の押し花教室に通い1年間で資格を取りました。花を花びら1枚1枚、茎、葉、全てバラバラにして乾燥させ、専用の絵の具で色を付けます。それを元の形に戻していくという繊細な作業なのですが、初めて1つ作品を仕上げたときには「私にもできた」と、とても自信が持てました。

東京の教室と並行して御代田にある押し花クラブにも通い、地元のご年配の方々に教えていただきました。8人ほど通っていましたが、皆さん20年くらい続けているベテラン。本当に手先が器用で綺麗に押し花に仕立てあげていきます。クラブに通われていた皆さんはご高齢になり、クラブは解散してしまいましたが、たくさんのことを教わりました。東京の教室と御代田のクラブではやり方が異なり、同じ花束から作ったものでも、出来上がりが違うものになるのが不思議でした。

 

 女性の雇用創出のために

ファイナリスト7名の中から見事グランプリ受賞

2019年3月に起業し、2020年2月、起業家を応援する「ジャパンチャレンジャーアワード in 小諸」でグランプリを獲得。現在軽井沢町追分で「Rebouquet(レブーケ)」という会社名で制作と教室をしています。英語で「再生」や「思い出す」という意味の「re」に、花束の「ブーケ」を合わせた造語です。ブライダルブーケや様々なシーンで贈られる花束には感謝の気持ちや家族の大切な思い出が詰まっているので花束を形にして残すことで、その時の想いも一緒に残せると思います。軽井沢町では年間約5000件の結婚式が行われ、うち押し花ブーケの需要は約1割。今はSNSを見て興味を持ってくださる方も増えてきているのでこれからも多くの受注をいただきながら、生徒を育て押し花に加工できるママスタッフを増やしたいと考えています。社会的に孤立してしまいがちな子育て中のママたちのために雇用を生み出し、家での時間を大切にしながら社会と接点が持てる、そんな良い循環を作っていきたいです。