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一般社団法人 軽井沢観光協会長 土屋 芳春さん

土屋 芳春さん一般社団法人 軽井沢観光協会長
土屋 芳春
さん

1956年軽井沢生まれ 1980年日本大学卒業後、90年軽井沢 絵本の森美術館を創設 軽井沢町教育委員、軽井沢町議会議員などを経て、2011年4月より一般社団法人 軽井沢観光協会長 現在、絵本の森美術館やエルツおもちゃ博物館を含む「ムーゼの森」の代表を務める

 

ふるさと塩沢の変遷と共に

生まれも育ちも軽井沢町塩沢。当時の塩沢地区は田んぼや畑の広がる営農地帯で、我が家も農業をしていました。「お前はヤギの乳で育ったようなものだ」と両親に言われた記憶があります。田んぼといえば手植えの時代、隣近所や親戚一同が総出で行う田植えの時には、苗を束ねて植える人の手元にぽんぽん投げて手伝ったのを覚えています。「おこびれ」の時間も楽しいひと時で、今にもつながることですが、塩沢は温かい人情味あふれる地域であることを実感しています。 やがて水田地帯に水をためて人造の塩沢湖がつくられると、往年のスケートブームにのって農業と兼業で宿を始める人も増えてきました。そしてテニスブームの到来。塩沢ほど時代の変遷を受けた地域はなかったのではないでしょうか。我が家も父の代に自宅を新築し、180名収容の大きなロッジを建てて宿泊業に専念するようになりました。大学を卒業してから家業を手伝うようになりましたが、テニス合宿の学生さんたちが多く訪れて、とても賑やかでしたよ。

 

次回企画展を須賀学芸員と打ち合わせ中JCの活動から美術館創設へ

ロッジを営む傍ら、KJC(軽井沢青年会議所)の活動に参加し、地域づくりや町づくりの勉強ができたことは得難い経験でした。特に1985年、KJCの先輩である現軽井沢町長・藤巻進さんが軽井沢高原文庫をつくられたことには大きな刺激を受け、「これからの町づくりには次世代に残す優れた文化が必要だ」と強く思うようになりました。 翌年、高原文庫での企画展などを通じて知り合ったスイスの出版社から「絵本原画を手放すので収蔵してくれるところを探している」という話をいただいた時は、まさに自分の想いとタイムリーにつながった、これは必然だと感じたものです。この時から、欧米の絵本原画や古典絵本をコレクションした、絵本専門の美術館を建てようという構想が生まれました。 欧米絵本の世界は知れば知るほど奥深く、歴史やコレクションの方法を学ぶほどに魅了されました。原画の芸術性はもちろん、古い絵本には当時の印刷技術や装丁技術、販売の方法などさまざまな背景が隠されていて、ひとつの文化が凝縮されているようなもの。開館にあたって、ドイツやフランスをはじめ旧東欧諸国にも出かけ、ヨーロッパの一流の画家たちと直接交流できたことも、今につながる大きな財産となっています。

 

軽井沢絵本の森美術館「第一展示館」上質のリゾートづくりを支える思い

創立から22年、美術館の運営では苦労ばかりしていた気がしますが、当時からの「本物の文化を次世代に伝えたい」という思いは、今も町全体の観光を考える根幹となっています。軽井沢は避暑地として開拓された時代から、おもてなしの精神が住民の中に根付いている土地。これからは、上質なコンベンションリゾートとして、教会文化を受け継ぐウエディングのまちとして、そして歴史や風土に恵まれた本のまち・スポーツのまちとして、いっそう地域力を高めていきたいと考えています。 スポーツのまちの一員として以前はスキーに頻繁に出かけていましたし、ゴルフは今でも好きですが、最近は仕事に追われてなかなか出かけられずスコアが伸び悩んでいます。最近の休日の楽しみは、実は草刈り。3万㎡あるムーゼの森の敷地の雑草を、刈払機を使ってずっと刈っていくんです。きれいになっているのが目で見てはっきり分かるので、すごく爽快なんですよ。妻に教えられながら植栽の手入れをするのも楽しみのひとつです。