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佐久市文化事業団館長 奥村 達夫さん

●佐久市文化事業団館長 奥村 達夫さん●佐久市文化事業団館長
奥村 達夫さん
 
 
1955年愛知県生まれ 日本演出者協会会員 「大草原の小さな家」「カラミティジェーン」などの商業ミュージカル作品の劇作・演出のほか、ショーの構成、大型イベント、国際フェスティバルなどの芸術監督やプログラムディレクターを務める2014年4月佐久市文化事業団館長に就任
東京在住

 

 

子どもたちらしい舞台を

佐久市との関わりは、「こころのミュージカル」や「佐久ミュージカル」の演出、総監修を手掛けた縁から始まり、今年で7年目になります。市民の手でつくる舞台のいちばん大きな目標は、お芝居を通じて、表現力やコミュニケーション力を身につけること。もちろんお客様に見ていただくことも意識しますが、それ以前に、子どもたちの持っているものを、子どもたちらしく表現できるように、その方法を指導しています。p1406_zin02
中には「もっと厳しく指導を」という意見もありますが、成長の度合いは参加者ひとりひとりが自分で測ればいいのであって、コミュニケーション力など基礎になる力が身についていれば、専門的な技術は後からきちんとついてくるのです。実際子どもたちは稽古のたびに成長していますので、私も毎回毎回新しい気持ちで子どもたちと向き合っています。

 

人の心を動かす職業

演出家の道を志したのは大学に入った後。子どもの頃は、実は学校の先生になりたかったのです。小学生の時、右足の骨髄炎を患ったのですが、担任の先生がとても親身になって支えてくれたので、そんな温かみのある素敵な人間になりたいと思いました。参加できないと思っていた遠足も、その先生がおぶって連れていってくれたんですよ。
そこから少し進路を変えたのは、大学受験の時。たまたま高校1年生の時に、NHKで始まったばかりだった「中学生日記」のオーディションに合格し、1年間出演したのがきっかけでした。思春期に本物の現場に触れられたことが大きかったのでしょう。人の心を打つ仕事をしたい、という思いには変わりなかったので。紆余曲折ありましたが、今、子どもたちにさまざまなことを伝える仕事をしていると、自分の原点に返ってきたような気がしています。

 

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新しい文化発信の試み

今は文化ホールの館長として、地域の人たちに質の高いいろいろな文化を体験してもらいたいと思っています。これまでのホールは主に鑑賞の場を提供することでしたが、もうひとつの柱として、もっと直接文化を体験し、親しんでもらう場をつくりたいと思っています。例えば5月からは「パフォーミング・アーツ・スタジオ」と題して、舞台芸術に関わる講演や体験ワークショップを開きます。講師は第一線で活躍中の俳優やアーティスト、クリエイターたちです。
またホールで行うプログラムを、学校や公共施設など、別の会場へ〝出前〞する試みも。これまで、なかなかホールに出向けなかった人たちに、本物の舞台の面白さを知ってもらうことが目的です。
今はネットを通じて気軽に文化を手に入れられる時代ですが、だからこそ非日常の世界に入れるライブならではの楽しみ方を、もっとアピールしていきたいと考えています。新しいことを生み出すために、勇気をもってハードルをひとつひとつ越えていこうと思っています。