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肖像画家 三浦 輝峰さん

 

その人の人生や心を描きたい

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 肖像画と出合ったのは20代後半の頃。それまで風景や生物を描いていましたが、描いた後に空し

さを覚えることがあり、「もっと深く追求できるものはないか」と思っていた時に、先輩が描いた肖像画を見て衝撃を受け、「僕の道はこれだ」と確信しました。

人の顔を描くというのは非常に奥が深く、その方の人生や心までも描き込まないと本物の肖像画ではないと思い、描いています。人生を描かせていただくのですから、注文をいただいてから納めるまで、8号サイズの小さなもので最低3ヶ月、国会議事堂に納める大きな作品などは半年以上かけて描いていきます。描いても描いても「まだどこか違うのではないか」と自分に問いかけながら何度も手を加えます。ご本人の理想の顔というのもあり、「目元を少し優しく」などの要望もあります。その方自身が思っている顔と実際人に見られている顔は多少異なるので、そのまま描いたものを気に入っていただけるとは限らないのです。

対象者は忙しい方が多いため、写真を見て描くこともあります。そんな時は、可能な限りその方の元へ出向いて、自ら写真を撮るようにしています。実際にお会いしないと、その方の血の通った気持ちや心が見えてこないのです。

 

林の掃除は心の修業

 佐久市に自宅兼アトリエを構えて16年目になります。東京に近く、利便性が良く、佐久平の広々とした風景や浅間山というシンボル的な山の存在もあり、ひいき目で見る訳ではないですが、佐久は一番良い所だと思っています。精神的な部分は自然に由来することがありますので、作品作りのためにも環境は大切だと思います。

アトリエのすぐ隣に唐松林があるのですが、引っ越してきた15年前はゴミ捨て場状態で、農業資材やタイヤなどあらゆる物が捨てられていました。それを一つひとつ手で拾い、にかけたりしながら、分別・処分して7〜8年かけてきれいにしました。今でもその林の掃除を日課にしています。作品に向き合う時、自分の気持ちをまっすぐ正しい位置に立たせておきたいからです。林の掃除は心の修業だと思っています。

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身近な風景や花も題材に

 肖像画を主に描いていますが、ありがたいことに「三浦輝峰の風景画がほしい」と言ってくださる方もいるので、個展に出す作品は風景8割、人物2割です。秋には雲場池へ真っ赤な紅葉を見に行きました。肖像画を描く合間に近隣の景勝地へ出かけ、風景や花を描いています。ゴミ捨て場だった唐松林に桜とオダマキが咲き、浅間山を背景にその姿を描き個展に出したら、その作品を気に入っていただいたこともありました。「山がお礼をしてくださったのだ」と思っています。落ち葉の時期は、掃除の際に落ち葉を一カ所に積み上げて山を作ります。何年か経つとその山が風景になるのでは…、そんなことも楽しんでいます。

出身地の伊那市に、毎年おひとり、最高齢者の方の肖像画を寄贈しています。料理が好きなので伊那市長が来られた時など来客の際は、佐久の名物・鯉のうま煮を振る舞うのもまた楽しみのひとつです。