ぷらざINFO/信州人

ポニー馬車・馬搬・馬耕のおはぎ企画 波多野 幾也さん

「野生のエルザ」に憧れて信州人01
東京のマンション育ちだったので、土のある生活がしたいと思い、軽井沢に移住しました。祖父の代から千ヶ滝に別荘があり、小さい頃からよく来ていましたが、当時この辺りは草原でした。20代前半で移住してもう20年以上。軽井沢暮らしの方が長くなりました。
幼少時代は、幼稚園の帰り道に蟻の巣の前でしゃがみ込み、蟻の行動をじっと見ているような子どもでした。親をなくしたライオンの子どもを引き取って野生に戻す実話を描いた映画「野生のエルザ」に影響を受け、野生動物との生活に憧れを持ちました。日本では怪我を負って保護された猛禽類を野生に帰す際に、鷹狩りの技術が使えるということを知り、元宮内庁鷹匠の故・花見薫氏に師事し、鷹匠の資格を取りました。動物園の飼育員やボランティアで活動している方などに、猛禽類の扱い方を指導したり、保護された鷹やふくろうなどを預かり、獲物を捕れるよう訓練し、森へ帰す活動などもしています。

ポニー馬車をスタート
今年の秋から、土屋乗馬クラブと共同でポニー馬車の「おはぎ企画」を稼働させました。「おはぎ」は7歳の雄馬の名前です。土屋乗馬クラブでこのおはぎを引き取ったのですが、大きな馬の中にポニーが1頭なの信州人02で、合う仕事が多くありません。馬はペットではなく経済動物なので、タダ飯食いとはいきません。そこで、専用の馬車をなんとか手作りし、おはぎに引かせて、自分の飼馬代を稼がせられないか挑戦してみようというわけです。馬車だけでなく、犂を引いて田畑を耕す馬耕、林など狭い場所で重い材木を運ぶ馬搬もこなします。乗馬経験があり、馬以外のいろいろな動物の訓練にも慣れていたため、私が調教、馭者を買って出て、任されることになりました。
馬車は軽車両なので車道を走ります。自転車よりも遅く、人間が歩くほどのスピードです。時にはイライラするようなスピードですが、独特のゆったりした時間感覚を味わうと、心のスイッチが切り替わり、心地良く感じられます。軽井沢観光のひとつとしてはもちろん、馬車を演出に使った結婚式、フォトウエディングにも利用していただければと考えています。ウォーキングなどの地域イベントでは、足が悪いので参加できないという方の足として活用してもらうことも可能です。本業は物書きなので、いずれはポニー馬車の話も書きたいと思っています。信州人03

もう一度馬のある風景を
昔、軽井沢は「長倉の牧」と呼ばれたほど、望月と同じような馬の産地でした。貸し馬屋がたくさんあり、旧道には普通に馬が歩いていました。碓氷峠もアプト式が走るまでは馬車鉄道が利用されていたりと、軽井沢は、馬がいる風景が当たり前でした。自動車の普及や糞害の問題もあり、過去のものになってしまいましたが、道から馬が消えてしまったのは、少々淋しく感じます。軽井沢は西洋人が開発した街だけあって、少しバタ臭いところがあるので、馬車のある風景を少しでも取り戻せたらと思います。選択肢のひとつとして、馬事文化があるのも、良いですよね。