ぷらざINFO/信州人

テノール歌手 倉石 真さん

吹奏楽の音色に感動snb01

父の仕事の関係で長野市や飯田市などで暮らし、小学校5年生の時に母の実家のある小諸市に引っ越しました。転入した小諸東小学校には吹奏楽部があり、初めて聴いたハーモニーや音色の美しさに驚き、すぐに入部しました。当時は、何年も連続で全国大会に出場し、金賞を取るような実力のある学校でした。それから高校まで吹奏楽部に所属し、小学校ではチューバ、中学校ではユーフォニウムを担当しました。

野沢北高校に入学した後は、ホルンに転向。部活顧問の故・原博道先生は、東京交響楽団でヴィオラを演奏していた方で、よくプロの音を聴かせてくれました。ホルンで音大進学を目指していましたが、あまり上達せず、高3の時に悩みながらも諦め、音楽自体をやめてしまいました。しかしその2ヶ月後、原先生に「ホルンにこだわらずとも、音楽を続ける道は色々ある」とアドバイスをいただきました。声楽は原先生が勧めてくれた選択肢の1つでした。音楽を続けたかったので、声楽の勉強をし直し、浪人を経て東京藝術大学音楽学部声楽科に入学。小諸での出会いが音楽の道へ進むきっかけになりました。

 

新感覚の日本オペラ「夕鶴」snb02

 今回出演するオペラ「夕鶴」は、よく知られている「鶴の恩返し」が題材です。木下順二氏の書いた戯曲を一字一句変えず、團伊玖磨氏の作曲でオペラにしたもので、日本で多く演じられている作品です。今までの「夕鶴」は、囲炉裏があって着物を着て、という民話調の舞台でしたが、今回は千住博氏の美術、市川右近氏の演出でそういったものがすべて削ぎ落とされています。回り舞台に様々な絵が展開し、めまぐるしく心情を映していくという手法は、斬新でありわかりやすいです。民話の教訓話が、オペラという新しい表現法により、時代を越え、世界が大きく広がっています。メイドインジャパンのオペラとしては、世界に誇れるものだと思います。

snb03今回演じる与ひょうは、主人公つうの夫で、とても優しく純粋な男です。つうのことが好きだっただけなのに、欲深い男たちと関わることで、少しずつ人間性が変わっていくという難しい役です。「つうのことが好き」という気持ちや、「都に行ってみたい」と思う気持ち、観ている方にも与ひょうの気持ちが痛いくらい伝わると思います。現代の夫婦の会話に置き換えられるような場面もあり、楽しんでいただけると思います。

 

 “美しい舞台”を上田でも

 交通の便が良くなり、東京へはすぐ行けるようになりましたが、オペラはまだ馴染みがなく「高尚なもの」というイメージがあるのではないでしょうか。今回、上田での公演が決まり、とても楽しみにしています。オペラは人間の心の動きに焦点を当てるので、話がわかりやすく共感することも多いです。「夕鶴」は身近な民話が原作で、日本語での上演ですから、オペラ初体験の方も肩の力を抜いて観ることができる良い作品だと思います。ドリームチームが贈る今回は、衣裳も美術も舞台演出も素晴らしく、とても美しい舞台ですので、1人でも多くの方に観ていただきたいです。