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平成28年度「信州の名工」受賞・和生菓子製造職人  掛川 潔さん

sin01かけがわ きよし 1941年小諸市生まれ 平成28年度  「信州の名工」(卓越技能者知事表彰)受賞 15歳で菓子職人の道へ 東京都内の菓子店で10年修業した後、佐久市内の菓子店に定年まで35年間勤務 現在は東御市「御菓子処 花岡」にて菓子作りに励む

 

早逝した父の後を継ぎ職人に

もともと父親が菓子職人で小さな菓子屋を営んでいましたが、昭和22年の戦後間もない頃、小学校に上がる前に父親が亡くなり、母親が卸の商品のみを扱いながら店を続けていました。中学を卒業後は家庭の事情で高校進学を断念し、東京の菓子店に就職。小さい頃から母親に「お前もお父さんの後を継いで菓子屋になるんだ」と言われていたので、自然と同じ道を選びました。

上京した最初の頃は大変でした。1年間毎日洗い物ばかりで、両手がひどいあかぎれになり、人前に出るときは手を隠していたことも。今ではほとんど仕事を休みませんが、若い頃は体が弱く、修業中に2ヶ月間静養したこともありました。最初の店に5年勤め、東京では足掛け10年、4軒の店で修業をしました。菓子はその店ごとに作り方が違うので、いろいろな作り方を学びたいと思ってのことでした。その後、故郷に戻り、佐久市臼田の「玉屋」に定年まで35年間勤めた後、現在の職場「花岡」にお世話になり、15年になります。

 

時代に合わせて喜ばれる味をsin03

平成28年度「信州の名工」受賞は恥ずかしいような嬉しいような、いまだに半信半疑ですが、とても光栄なことで、社長やスタッフに感謝しています。菓子職人になり60年、現在も毎朝4時50分に起床し、週6日、朝5時30分〜11時まで仕事に励んでいます。昔は手作業のみで行われていた菓子作りにも機械が使われるようになり、生産性も向上し、ずいぶん便利になりました。

菓子作りで大切にしているのは、時代に合わせてお客さまに喜んでいただける味を追求すること。仕事をする上では作業性も重要なので、早く、効率よく作ることも心がけています。

和菓子は季節を映すもののため、1年12ヶ月、ひと月ごとにそれぞれの季節の菓子を作っています。これからの冬の季節でしたら、さつまいもを使った芋まんじゅうや干し柿を使った柿羊羹ですね。その土地でとれたもの、季節のものを使って作るのは大変なことも多いですが、楽しみでもあります。新しいものへの挑戦もしたいと思っています。社長から「こういうものを作って」と言われて一緒に新商品を考えたり、「こんなお菓子はどうだい」と自分から提案することもあります。自分が作った商品がヒットした時はやはり嬉しいですね。

個人的には、菓子の中でも特に朝生や上生菓子を作るのが好きです。朝生とは餅菓子や団子など、朝作りその日のうちに売り切るものを言います。1月にはうぐいすもち、桜もち、草もち、道明寺といった春の朝生が出てきますので、召し上がっていただきたいです。

 

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体が続く限り職人でいたい

趣味は釣りと旅行。昔は1年中釣りを楽しんでいましたが、今は千曲川での鮎釣りが中心です。旅行は妻と一緒に出かけます。国内全県制覇をしたので、これからは島巡りをしたいと思っています。健康のために、毎日夕方1時間のウォーキングと農作業も欠かしません。野菜は自分で食べる分は自分で作っています。健康に気をつけて、体が動くうちは菓子作りを続け、職人として頑張りたいと思っています。