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糖尿病網膜症で失明しないために

現在、日本人の失明原因で最も多いのが緑内障ですが、2番目に多いのが、これから紹介する糖尿病網膜症です。糖尿病網膜症は、糖尿病に伴って生じる合併症の一つで失明に至ってしまうこともありますが、早い段階からの通院、治療で予防可能なものとなります。

 

中澤眼科クリニック (☎0267-62-0157) 中澤 孝則 院長

 

疫学

 平成26年度の厚生労働省による患者調査では、糖尿病の患者数は316万6000人となり、前回調査(平iga01成23年度)の270万人から3年間で46万6000人も増加しているとの報告があります。

この内、失明原因となる網膜症の方の割合は30〜60%といわれ、およそ95万人〜190万人の方が糖尿病網膜症を患っていることになります。糖尿病を発症してからの期間を罹患期間といいますが、この罹患期間が長ければ、網膜症の割合も多くなり、5年で10%、10年で30%、15年で50%、20年では70%以上の方に見られるとの報告もあります。また網膜症の増悪因子は、罹患期間のみならず高血糖状態の長さにも影響され、血糖の高い状態が長い方ほど網膜症の頻度が高くなり、網膜症の進行度も早くなります。

 

網膜症の発症と進展、治療

 網膜というのは、眼球の内側にある膜組織でカメラのフィルムに相当します。フィルムにダメージがあれば写真が映らないように、網膜症が発症し発展して行く内に、視機能が障害されて行きます。しかし、最初から視機能が低下する訳ではありません。一般的には増殖網膜症といわれる、かなり進行した段階で起きることなので、自覚症状が無いからといって安心はできないと考えてください。網膜症も最初から出現するわけではありませんが、先に書いた網膜症の増悪因子、罹患期間の長さ、高血糖の状態の他にも、高血圧や高脂血症の合併症も、網膜症の悪化を進展させます。ですから網膜症を予防する為には、先ずは内科の先生の指示に従って血糖値のコントロールに努めてください。また、高血圧症や高脂血症があれば、それもコントロールすることが大切となります。糖尿病が発見された段階で、先ずは眼科での眼底検査を受けられることをお勧めします。早い段階であれば網膜症の発現は無いはずですが、糖尿病の発見が遅れたような場合には、既に網膜症が発iga02症していることがある為です。網膜症が無い場合は、その後6ヶ月から1年に1回の定期的な眼底検査をお勧めします。もし網膜症が出現していた場合、それが初期の単純網膜症ならば3ヶ月〜6ヶ月に1回の定期検査が目安となります。単純網膜症では、血糖コントロールが改善された場合は、網膜症が消えることもあります。しかし単純網膜症が悪化してしまうと、増殖前網膜症へと進展します。この段階では、網膜の血管がつまり、血行が途絶える為に、それに対する治療が必要になります。飲み薬やレーザー光凝固術です。一度血行が途絶えた血管をそのままにすると、新生血管が発生しますが、正常な血管と異なり、非常に出血しやすい血管です。この新生血管の発生を防ぐ為にレーザー光凝固術が必要となります。この増殖前網膜症の段階でiga03は1ヶ月〜2ヶ月に1回の定期検査が勧められております。この段階でも視力低下等の自覚症状の無い場合には、眼科へ通院をされて無い方もおられます。増殖前網膜症がさらに悪化し、新生血管の出現や目の内への出血を認めると、増殖網膜症となり、速やかなレーザー光凝固術や、外科的な手術が必要となることがあります。

 

最後に

 毎年糖尿病の患者さんは増え続けていて、糖尿病を予防することは困難なことかもしれませんが、網膜症を防ぐことは可能なのです。先ずは血糖のコントロールと定期的な通院と診察を受けていただきたいと思います。