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(2018年7月1日)
佐久市立浅間総合病院 外科 (☎0267-67-2295) 富岡 寛行 医師
便失禁の原因
便失禁が起こる主な原因は、内・外肛門括約筋の収縮力の低下、分娩時の肛門損傷といわれ、これらの原因が約7割を占めています。この他にも、直腸肛門疾患の術後、炎症性腸疾患・過敏性腸症候群などの内科疾患、脊柱管狭窄症・外傷による脊髄障害、骨盤部の放射治療後なども原因となります。
治療方針
治療は大きく分けると2つあります。1つめは身体への負担が少ない「保存的療法」、もう1つは手術的に行う「外科的療法」です。治療ガイドラインではまず保存的療法を行い、十分な効果が得られない場合は外科的療法を考慮します。
保存的療法の新しい選択肢 〜バイオフィードバック療法〜
保存的療法の中心は便の性状を調整する薬物療法です。薬物療法で十分な改善が得られない場合、当院では新たな選択肢としてバイオフィードバック療法を実施しています。これは患者さんが、モニターで自身の筋肉の活動を確認しながら肛門を締める緩めるといった訓練をする方法です(図1)。また患者さんによっては体幹部や下肢の筋力低下に対するトレーニングの追加が望ましいと考えられる場合もあります。当院では理学療法士と協力し、個々の患者さんの病態にあったトレーニングプログラムを作成しております。
外科的療法の新しい選択肢 〜仙骨神経刺激療法〜
外科的療法には括約筋修復術、順行性洗腸(盲腸皮膚瘻術)、人工肛門造設などがありますが、体への負担の大きさやボディイメージの問題からこれまであまり浸透していませんでした。2014年より保険適用となった仙骨神経刺激療法は、これまでの治療に比べ体への負担が少なく、高い有効性を示しています。 1.どんな治療か 仙骨神経刺激療法は排便に関連した神経を殿部に埋め込んだ装置で継続的に刺激し、症状の改善を図る治療方法です。 2.治療の進め方 仙骨神経刺激療法は以下の4つのステップから成り立ちます(図2)。①「リード線植込み」臀部から仙骨神経に沿うようにリード線を挿入します。1〜2時間の手術です。②「試験刺激」リード線を体外刺激装置に接続し試験刺激を行います(1〜2週間)。効果が得られた方のみ刺激装置植込みに進みます。③「刺激装置植込み」リード線を刺激装置に付け替え、臀部皮下に植込みます。約30分の手術です。④「治療継続」24時間継続的に刺激を行い、刺激装置のバッテリーがなくなると交換が必要となります(5〜10年が目安)。 3.当院での治療実績 当院では2016年1月より本治療を導入し、これまでリード線挿入を11例実施しております。原因疾患は、直腸癌術後4例、前立腺癌放射線治療後3例、特発性3例、潰瘍性大腸炎術後1例でした。11例中10例で50%以上の失禁回数の減少が得られており、その有効性は9割に達しております。感染および癌再発により2例で装置を抜去いたしましたが、現在8例で治療を継続しております。
諦めずにまずは受診を!
便失禁でお悩みの方、誰にも相談できず引きこもりがちになってはいませんか?治療により多くの方で症状の改善が得られています。当院は新規治療であるバイオフィードバック療法、仙骨神経刺激療法の県内唯一の実施施設です。諦めずにまずは当院外科外来(担当:富岡)にご相談ください。
月刊ぷらざ編集部(株式会社信州広告社)
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「自らの意志に反して便がもれる状態」は便失禁と定義されています。今、日本では500万人以上が便失禁を抱えているとみられています。決して特別な病気ではなく、適切な治療により7〜8割の患者さんで改善が得られております。本稿では新たな選択肢であるバイオフィードバック療法と仙骨神経刺激療法を中心に解説します。
佐久市立浅間総合病院 外科 (☎0267-67-2295) 富岡 寛行 医師
便失禁の原因
便失禁が起こる主な原因は、内・外肛門括約筋の収縮力の低下、分娩時の肛門損傷といわれ、これらの原因が約7割を占めています。この他にも、直腸肛門疾患の術後、炎症性腸疾患・過敏性腸症候群などの内科疾患、脊柱管狭窄症・外傷による脊髄障害、骨盤部の放射治療後なども原因となります。
治療方針
治療は大きく分けると2つあります。1つめは身体への負担が少ない「保存的療法」、もう1つは手術的に行う「外科的療法」です。治療ガイドラインではまず保存的療法を行い、十分な効果が得られない場合は外科的療法を考慮します。
保存的療法の新しい選択肢 〜バイオフィードバック療法〜
保存的療法の中心は便の性状を調整する薬物療法です。薬物療法で十分な改善が得られない場合、当院では新たな選択肢としてバイオフィードバック療法を実施しています。これは患者さんが、モニターで自身の筋肉の活動を確認しながら肛門を締める緩めるといった訓練をする方法です(図1)。また患者さんによっては体幹部や下肢の筋力低下に対するトレーニングの追加が望ましいと考えられる場合もあります。当院では理学療法士と協力し、個々の患者さんの病態にあったトレーニングプログラムを作成しております。
外科的療法の新しい選択肢 〜仙骨神経刺激療法〜
外科的療法には括約筋修復術、順行性洗腸(盲腸皮膚瘻術)、人工肛門造設などがありますが、体への負担の大きさやボディイメージの問題からこれまであまり浸透していませんでした。2014年より保険適用となった仙骨神経刺激療法は、これまでの治療に比べ体への負担が少なく、高い有効性を示しています。
1.どんな治療か
仙骨神経刺激療法は排便に関連した神経を殿部に埋め込んだ装置で継続的に刺激し、症状の改善を図る治療方法です。
2.治療の進め方
仙骨神経刺激療法は以下の4つのステップから成り立ちます(図2)。①「リード線植込み」臀部から仙骨神経に沿うようにリード線を挿入します。1〜2時間の手術です。②「試験刺激」リード線を体外刺激装置に接続し試験刺激を行います(1〜2週間)。効果が得られた方のみ刺激装置植込みに進みます。③「刺激装置植込み」リード線を刺激装置に付け替え、臀部皮下に植込みます。約30分の手術です。④「治療継続」24時間継続的に刺激を行い、刺激装置のバッテリーがなくなると交換が必要となります(5〜10年が目安)。
3.当院での治療実績
当院では2016年1月より本治療を導入し、これまでリード線挿入を11例実施しております。原因疾患は、直腸癌術後4例、前立腺癌放射線治療後3例、特発性3例、潰瘍性大腸炎術後1例でした。11例中10例で50%以上の失禁回数の減少が得られており、その有効性は9割に達しております。感染および癌再発により2例で装置を抜去いたしましたが、現在8例で治療を継続しております。
諦めずにまずは受診を!
便失禁でお悩みの方、誰にも相談できず引きこもりがちになってはいませんか?治療により多くの方で症状の改善が得られています。当院は新規治療であるバイオフィードバック療法、仙骨神経刺激療法の県内唯一の実施施設です。諦めずにまずは当院外科外来(担当:富岡)にご相談ください。