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「痛み」と 「ペインクリニック」

我が国において慢性的な痛みを抱えた患者さんの数は、2200 〜2500万人と報告されています。実に6人に1人は痛みを抱えながら日常生活を送っていることになります。「冷やす」、「温める」、「揉む」、「放っておく」…皆さんはその痛みにどう対処されていますか?今回は「痛みの専門外来」である私たち「ペインクリニック科」についてご紹介いたします。

 

JA長野厚生連 佐久総合病院 ペインクリニック科 (☎0267-82-3131) 深澤 正之 医師

 

痛みとは
痛みとは本来、私たちの身体に起こった異常事態を教えてくれる感覚であり、生きるために備わった非常に大切な機能の1つです。痛みを感じなかったらどうでしょうか?身体に起こった怪我や病気などの異常事態に気づくことができず、命を落とすことにつながるかもしれません。
しかし、一部の痛みには不必要で不快な感覚でしかないものがあります。その1つが「慢性痛」といわれる長期間続く痛みです。
慢性痛は私たちへの警告信号としての意味はなくなり、快適な日常生活を遮る障害、いわばそれ自体が病気ともいえるでしょう。

 

痛みの伝導と慢性痛
私たちの身体に痛みの原因が発生した場合、その伝導には主に3つの経路が関与します。まず1つは痛みを大脳皮質に伝え「痛い」と感じる脊髄視床路、もう1つは痛みによる「不快感」を生じる脊髄網様体路、この2つは何らかの侵襲が加わったとき、脊髄から大脳へ上行性に信号を伝えるため、上行伝導路といわれます。3つ目は下行性疼痛抑制系といわれ、反対に脳幹から脊髄方向へ下行性に信号を伝え、痛みを抑えようとする経路となります。
慢性痛の発生にはいくつかの要因が絡んではいますが、代表的なものとしてはこの上行伝導路の過活動や下行性疼痛抑制系の機能障害、または自律神経の一種である交感神経、更には運動神経の関与などが考えられています。

●痛みを伝える3つのルート

●痛みを伝える3つのルート

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペインクリニックとは
ペインクリニックとは皆さまが抱えている痛みの発生原因を診察や検査などからつきとめ、必要に応じた治療を行う専門の科です。治療の主な柱としては「薬物療法」といわれる薬の調整と「神経ブロック療法」といわれる特殊な治療となります。

 

薬物療法と神経ブロック療法
「薬物療法」とは主には鎮痛剤、いわゆる痛み止めといわれる痛みや炎症を鎮めるための薬や、抗うつ剤や抗けいれん薬などの鎮痛補助剤といわれる種々の薬を使用し、上行伝導路の遮断や下行性疼痛抑制系の働きを活発にさせることを目的とします。
また、「神経ブロック療法」とは診察や検査などから痛みの原因と推測される神経や神経周囲に局所麻酔薬などの注射を行い、上行伝導路の一時的な遮断を繰り返すことにより、痛み自体の低下や消失を狙った治療となります。また、痛みの神経の遮断だけでなく身体全体の機能のバランスを司る自律神経への作用により、血流改善作用や痛みに付随した自律神経症状の改善も期待できます。
ただし、あくまで注射による治療ですので、注射が苦手という方にはご相談に応じて、代替的な加療のご提案も行います。

 

痛みと上手につきあうには
痛み、特に慢性的な痛みをお持ちの場合、常日頃から痛みのことが頭から離れず、また思うように動けないため日常生活を楽しめません。私たちの身体は不思議なことにそういった心理・活動状況の中では痛みをより一層強く感じてしまう傾向があります。
慢性的な痛みは原因にもよりますが、全て取り去ることが難しいこともあります。私たちと一緒に治療の目標設定を行い、障害された日常生活の改善のお手伝いができればと考えております。
頭痛、肩こり、腰痛、膝関節痛、帯状疱疹後神経痛、手術後の長引く痛みなど、どのような痛みでも随時、ご相談に乗りますので、つらい痛みをあきらめず一度お気軽にお問い合わせください。
*神経ブロック療法の実施にあたっては内服している薬の種類によっては行えない場合もあります。ご来院の際は是非「おくすり手帳」のご持参をお願いいたします。

●交感神経・運動神経が関与する痛みの悪循環

●交感神経・運動神経が関与する痛みの悪循環