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皮膚がんを知ろう ~転ばぬ先の杖~

21世紀に入り、わが国は世界一の高齢化国となりました。がんは今や身近な病気の一つであり、生涯に2人に1人はがんに罹り、3人に1人はがんで亡くなると言われています。皮膚がんは、がん全体の中では数は少ない方ですが、近年は罹患数および死亡数も右肩上がりで増加を続けています。(表1)この記事をお読みいただき、心当たりがあれば遠慮なく皮膚科医に相談しましょう。

 

はせがわ皮ふ科クリニック (☎0267-78-3116) 長谷川 淳一 院長

 

皮膚がん患者の年齢階級別推移(1975〜2006年)

表1 皮膚がん患者の年齢階級別推移(1975〜2006年)

 

 

がんを見たことがありますか?

ところで、がんそのものを見たことがありますか?胃がん、肺がんなどはカメラやCTなどの検査で見つかります。ところが、皮膚のがんは目で見えます。皮膚がんはがんと診断されてから5年後も生存している確率が90%以上ある、予後が非常に良いがんです。なぜなら自分の目で発見できるので、早期治療が可能なためです。代表的な皮膚がんには、基底細胞がん、有棘細胞がん、日光角化症、悪性黒色腫(メラノーマ)、外陰部パジェット病があります。それぞれの特徴を簡単にご説明します。

 

 

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図1

基底細胞がん
高齢者の顔面に好発します。進行すると中央部が潰瘍化し、その周囲に灰黒色の結節が縁取るように配列しま

す。ダーモスコピーという病変部を拡大して観察する検査で診断が可能です。転移することは

まれで、早期に切除すればほぼ100%治癒します。(図1)

 

 

 

 

 

図2

図2

有棘細胞がん
皮膚の慢性先行病変に好発します。過度の日焼け、熱傷、ヒ素、放射線などの瘢痕や後述する日光角化症から発症することもあります。硬い結節で、しばしば壊死、潰瘍化し悪臭を伴います。花キャベツ様に増殖し、厚いかさぶたが付着することも多いです。治療は早期であれば手術ですが、リンパ節に転移しやすいため進行例では放射線治療や化学療法(抗がん剤)なども行います。(図2)

 

 

 

 

 

 

図3

図3

日光角化症
高齢者の日光露光部位(手、顔など)に生じるかさかさしたフケが付いた境界明瞭な赤いシミとして発症。自覚症状はありません。進行すると角のような突出した結節を形成します。さらに進行すると潰瘍形成もしくは急激な増殖を認め、前述の有棘細胞がんになります。治療は液体窒素による凍結療法、免疫力を高める軟膏の外用、手術などを症例に応じて選択します。(図3)

 

 

 

 

 

 

 

図4

図4

悪性黒色腫(メラノーマ)
皮膚にある色素細胞が悪性化して発症。ホクロのがんと言われていますが、ホクロから発症することはまれです。紫外線、外傷、熱傷瘢痕などが誘因となります。日本人は足底に好発し、

かつ足底の中で荷重部位に好発することが信州大学から発表され、最近の新聞にも記事が掲載されました。成人後に足底の黒いシミが出現したら鉛筆を当ててください。鉛筆からシミがはみ出す大きさであれば皮膚科を必ず受診してください。進行するとリンパ節転移、血行性に遠隔転移を生じ、極めて予後不良です。治療は早期発見、早期切除が大原則。進行がんに対してはようやく効果のある治療薬が出てきましたが、完治する人は多くはいないのが現状です。(図4)

 

外陰部パジェット病
高齢者の外陰部に生じ、男性は女性の2~3倍の発生頻度です。男性は陰茎基部から陰嚢にかけて、女性は陰唇部から会陰部にかけて好発します。不規則な形をした赤いシミのようなことが多いですが、ゆっくりと周囲に拡大し、びらん、色素沈着、色素脱失を伴い、かゆみを伴うこともあります。陰部病変のため、恥ずかしさから受診が遅れ症状が進行しやすいです。また湿疹や真菌症(カビ)と誤診されていることもあります。治療は手術が第一選択で、放射線治療を行うこともあります。

 

読者へのメッセージ

以上、簡単ですが代表的な皮膚がんを紹介しました。皮膚がん患者の高齢化も著しく、今後もさらに進むことが確実です。身近にいるおじいちゃん、おばあちゃんの皮膚に気になるできものができていないか尋ねて、少しでも不安があれば遠慮なく皮膚科を受診するように勧めてください。
また、“百聞は一見にしかず”ということで、『皮膚のがん』のタイトルで市民公開講座を企画しました。参加費は無料ですので、ご家族、ご近所さまをお誘い合わせのうえ、多くの方のお越しをお待ちしております。