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(2015年12月1日)
JA長野厚生連 佐久総合病院 心臓血管外科 (☎0267-82-3131) 白鳥 一明 医師
下肢静脈瘤とは? 足(下肢)の静脈は、大きく分けると、筋肉内部の深いところにある「深部静脈」と、皮膚のすぐ下を走っている「表在静脈」とがあります。表在静脈は深部静脈と合流し、その中の血液は心臓に
向かって流れていきます。また静脈の内側には、立った時に血液がつま先の方へ落ちていかないように、逆流防止の「弁」がいくつも付いています。表在静脈の弁が何らかの原因で壊れて、深部静脈から血液が逆流し、表在静脈内に血が溜まって膨らんだものが、「静脈瘤」です。
静脈瘤の症状は? 静脈瘤があるほうの足が、疲れやすい・むくむ・かゆい・こむら返りがよく起こる・ほてる・痛いなどの症状があります。老廃物を含んだ静脈の血液が、皮膚の下に長時間とどまると、皮膚に炎症を起こしやすくなります。「うっ滞性皮膚炎」といいますが、皮膚の炎症が長期化すると、色素沈着をきたして茶色や黒っぽくなったり、皮膚が硬くなったり、ひどい場合は「皮膚潰瘍」といって皮膚が部分的に欠損したような状態になってしまうこともあります。その一方で、足の皮膚がボコボコしているだけで、まったく症状を訴えない方もいます。
どんな人が静脈瘤になりやすい? 静脈の圧が高い状態が続くと、静脈が膨らんで弁が壊れやすくなります。立っていると体の下側にある足の静脈圧が高くなるので、立ち仕事を長時間する方、たとえば床屋さんや美容師さん、調理師の方、デパートの店員さんなどがなりやすいといえます。また女性は、妊娠出産の過程で、骨盤の中で子宮が大きくなります。大きな子宮が骨盤の中で静脈を圧迫すると、足の静脈も圧が高くなり、静脈瘤ができやすくなります。遺伝も関与するといわれており、親や兄弟姉妹に静脈瘤の人がいるとおっしゃる患者さんはけっこういます。長時間立ち仕事をする方、女性、近親者に静脈瘤がある方などが静脈瘤になりやすいといえます。
静脈瘤の治療法は?主に3つあります。 1.弾性ストッキング 普通のストッキングより弾力性の強いしっかりしたもので、それを履くことにより表在静脈を圧迫し、血液が逆流しないようにして悪化を防ぎます。 2.硬化療法 膨らんだ静脈の中に硬化剤という薬を注入し、静脈に炎症を起こさせて血管をつぶしてしまう方法です。逆流の強くない、軽症な静脈瘤に対し行う方法です。 3.手術治療 皮膚を切開し静脈を糸でしばってしまう方法(高位結紮術)や、静脈を引き抜いてしまう方法(静脈抜去術、ストリッピング)、血管内治療などがあります。静脈は網の目のようにあり、一部分を取り除いてしまっても血液は別のところを通って心臓に戻っていくので、大丈夫なのです。
静脈瘤があれば手術しなければいけないの? 静脈瘤があれば必ず手術しなければいけない、ということはありません。しかし症状が強く、皮膚の変化を生じている場合は手術した方が良いでしょう。また、症状が強くなくても、静脈瘤があることをとても気に病んでいる方にも、手術を行なっています。
静脈瘤の血管内治療とは? 瘤を作っている静脈内に細い管(カテーテル)を入れ、その管により高周波やレーザーで静脈を内側から焼いて静脈をつぶしてしまう治療法です。血管内治療では膝の辺りに管を入れる小さな穴をあけますが、皮膚を大きく切らずに治療できます。管が入りにくい曲がりくねった静脈の場合は、この治療に向きません。表在静脈が割とまっすぐな、太ももの内側やふくらはぎの裏側の静脈で、血管内治療を行なっています。以前は、静脈をすべて引き抜いて取り除いていましたが(ストリッピング術)、それに代わる治療法です。くねくねと曲がった太い瘤は、その上の皮膚を小さく(2〜3㎜)切開し、カギ状の特殊な細い器具(フック)を用いて引き抜く方法で手術します(スタブ・アバルジョン法)。この治療は、1泊2日の入院で行なっています。 下肢静脈瘤があり悩んでいる方は、静脈瘤外来を一度受診してみてください。
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下肢静脈瘤とは、足の皮膚の下にある静脈が膨らんで、ボコボコと連なったコブのように見える状態をいいます。この疾患をお持ちの方は比較的多く、軽いものを含めれば約1割の方にあるといわれています。膨らんでいるだけで、まったく症状のない場合もありますが、皮膚の強い炎症を生じてくることもあります。今回は下肢静脈瘤に対する新しい治療法(血管内治療)をご紹介します。
JA長野厚生連 佐久総合病院 心臓血管外科 (☎0267-82-3131) 白鳥 一明 医師
下肢静脈瘤とは?
足(下肢)の静脈は、大きく分けると、筋肉内部の深いところにある「深部静脈」と、皮膚のすぐ下を走っている「表在静脈」とがあります。表在静脈は深部静脈と合流し、その中の血液は心臓に
向かって流れていきます。また静脈の内側には、立った時に血液がつま先の方へ落ちていかないように、逆流防止の「弁」がいくつも付いています。表在静脈の弁が何らかの原因で壊れて、深部静脈から血液が逆流し、表在静脈内に血が溜まって膨らんだものが、「静脈瘤」です。
静脈瘤の症状は?
静脈瘤があるほうの足が、疲れやすい・むくむ・かゆい・こむら返りがよく起こる・ほてる・痛いなどの症状があります。老廃物を含んだ静脈の血液が、皮膚の下に長時間とどまると、皮膚に炎症を起こしやすくなります。「うっ滞性皮膚炎」といいますが、皮膚の炎症が長期化すると、色素沈着をきたして茶色や黒っぽくなったり、皮膚が硬くなったり、ひどい場合は「皮膚潰瘍」といって皮膚が部分的に欠損したような状態になってしまうこともあります。その一方で、足の皮膚がボコボコしているだけで、まったく症状を訴えない方もいます。
どんな人が静脈瘤になりやすい?
静脈の圧が高い状態が続くと、静脈が膨らんで弁が壊れやすくなります。立っていると体の下側にある足の静脈圧が高くなるので、立ち仕事を長時間する方、たとえば床屋さんや美容師さん、調理師の方、デパートの店員さんなどがなりやすいといえます。また女性は、妊娠出産の過程で、骨盤の中で子宮が大きくなります。大きな子宮が骨盤の中で静脈を圧迫すると、足の静脈も圧が高くなり、静脈瘤ができやすくなります。遺伝も関与するといわれており、親や兄弟姉妹に静脈瘤の人がいるとおっしゃる患者さんはけっこういます。長時間立ち仕事をする方、女性、近親者に静脈瘤がある方などが静脈瘤になりやすいといえます。
静脈瘤の治療法は?主に3つあります。
1.弾性ストッキング
普通のストッキングより弾力性の強いしっかりしたもので、それを履くことにより表在静脈を圧迫し、血液が逆流しないようにして悪化を防ぎます。
2.硬化療法
膨らんだ静脈の中に硬化剤という薬を注入し、静脈に炎症を起こさせて血管をつぶしてしまう方法です。逆流の強くない、軽症な静脈瘤に対し行う方法です。
3.手術治療
皮膚を切開し静脈を糸でしばってしまう方法(高位結紮術)や、静脈を引き抜いてしまう方法(静脈抜去術、ストリッピング)、血管内治療などがあります。静脈は網の目のようにあり、一部分を取り除いてしまっても血液は別のところを通って心臓に戻っていくので、大丈夫なのです。
静脈瘤があれば手術しなければいけないの?
静脈瘤があれば必ず手術しなければいけない、ということはありません。しかし症状が強く、皮膚の変化を生じている場合は手術した方が良いでしょう。また、症状が強くなくても、静脈瘤があることをとても気に病んでいる方にも、手術を行なっています。
静脈瘤の血管内治療とは?
瘤を作っている静脈内に細い管(カテーテル)を入れ、その管により高周波やレーザーで静脈を内側から焼いて静脈をつぶしてしまう治療法です。血管内治療では膝の辺りに管を入れる小さな穴をあけますが、皮膚を大きく切らずに治療できます。管が入りにくい曲がりくねった静脈の場合は、この治療に向きません。表在静脈が割とまっすぐな、太ももの内側やふくらはぎの裏側の静脈で、血管内治療を行なっています。以前は、静脈をすべて引き抜いて取り除いていましたが(ストリッピング術)、それに代わる治療法です。くねくねと曲がった太い瘤は、その上の皮膚を小さく(2〜3㎜)切開し、カギ状の特殊な細い器具(フック)を用いて引き抜く方法で手術します(スタブ・アバルジョン法)。この治療は、1泊2日の入院で行なっています。
下肢静脈瘤があり悩んでいる方は、静脈瘤外来を一度受診してみてください。