ぷらざINFO/教えてドクター みんなの医学

老いに負けない、いきいきライフ

「月刊ぷらざ佐久平 平成26年7月号」掲載

皆さんのなかには、「アンチエイジング」という言葉をお聞きになったことがある方もいらっしゃると思います。「アンチエイジング」は日本語では「抗加齢」と訳します。医療では「抗加齢医学」、つまり健康で長寿を目指す医学ということで、すべての診療科に関わる概念です。今回は形成外科における抗加齢医学についてお話いたします。

 

JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター(☎0267-62-8181)
副診療部長・形成外科副部長 中村 健 医師

 

〝老化〞は 誰にでも訪れ、その時計の針を戻すことは出来ません。だからこそ、誰もがいつまでも若々しく健康でありたいと願うことでしょう。形成外科における抗加齢医学は〝見た目のアンチエイジング〞です。見た目を若くすることで、気持ちが若返って元気になることもあります。そんな形成外科のアンチエイジングの一部をご紹介させていただきます。

ig07_01

 

しみ・しわ・たるみの治療法

局所的なしわやたるみに対しては、注入療法と、ボトックスという注射による治療があります。注入療法は主にヒアルロン酸を皮下に注入する方法で、皮膚の内側から皮膚を押し上げて、しわやたるみを目立たなくします。ボトックスは、しわを作る筋肉に神経毒を注入して、一時的に麻痺させることで、主に額や眉間、目じりのしわを解消します。
レーザー治療はしみやしわ、たるみを対象とした治療法です。しみはメラニンという黒い色素でできており、この黒い色素にレーザーの光を当てることで、メラニンの部分を破壊します。さらに皮膚の再生(ターンオーバー)をうながすことで、しみを薄くすることができます。また、皮膚全体にレーザーの光を当てると、再生が早まり皮膚のコラーゲンが増えるので、小さなしわが取れたり、たるんでいた肌が引き締まる効果が期待できます。
光治療はカメラのフラッシュのような光を照射する治療法です。肌の広い範囲をごく軽いやけど状態にして、新しい皮膚の再生をうながすことで、しみやしわ、たるみを同時に改善します。光治療はレーザー治療に比べると、肌への負担は小さいですが1回の治療では効果が出にくく、一般的には5〜6ヶ月の治療期間中に4回〜8回の治療が必要となります。

 

まぶたのたるみ…眼けん下垂

まっすぐ前を見ている状態では、若い頃は8〜9割ほどまぶたが上がっています。ところが知らず知らずの間にまぶたが下がってきて、6割〜7割のまぶたが黒眼にかかってきた状態を「眼けん下垂」と言います。眼けん下垂があると目がたるんでくるだけでなく、頭痛や肩こりといった自律神経系の症状を合併することもあります。
長年にわたるハードコンタクトの使用、目をこする癖、さらには加齢が主な原因で、まぶたのたるみを自覚する人も多いです。
眼けん下垂になると、まぶたが垂れ下がってしまうために、無意識のうちに額に力を入れて、まぶたを引っ張り上げようとします。まぶたが開けづらい、額に力が入ってしまう場合は眼けん下垂が疑われますので、眼科や形成外科を受診しましょう。

 

眼けん下垂の治療法

加齢性の眼けん下垂には、発症につながる2つの要素があります。1つは眼けん挙筋というまぶたの筋肉の先端にある腱膜が、まぶたの中にある腱板から外れる、或いは伸びてしまうことで、まぶたが持ち上がらなくなるため。もう1つは、加齢に伴ってまぶたの皮膚がたるんでくるため。治療ではこの2つの要素を、手術によって治す必要があります。
まずはたるんだ皮膚を、まぶたの二重のラインに沿って切除しますが、たくさん取る場合は眉の下で切除する場合もあります。
次に、まぶたの内側を修復する手術を行います。外れた腱膜を引っ張ってきて腱板に固定し直し、まぶたが開きやすくなったことを確認した後に皮膚を縫合します。手術時には入院が必要となる場合もあります。

 

アンチエイジングの注意点

見た目のアンチエイジングでは心構えが大切です。くれぐれも「時計の針は戻らない」ということを自覚する必要があります。
注入療法の場合、ヒアルロン酸は徐々に体内へと吸収されてしまうので、定期的に注入しなければなりません。また20代で顔のしわ取りをするなど、若い人が必要もないのに治療を受けてしまうと、将来かえってマイナスになります。さらに1回手術をして上手くいったからといって、何回も何回も治療を受けてしまう人がいますが、決して容姿を扱い過ぎないということも大切です。
若々しいということは、単にしみ・しわ・たるみが少ないということではありません。まずは体調をしっかり整えて、日々前向きな気持ちで過ごすなど、目に見えないアンチエイジングこそが、若さを保つ秘訣かも知れません。老いに負けずに、元気な毎日を過ごしましょう。
当院だけでは紹介したすべての治療は行えません。佐久市内の各形成外科でそれぞれ治療していますので、受診する前に電話でのお問い合わせをお勧めいたします。
 

社団法人 佐久医師会
〒385-0052 佐久市原569-7
TEL0267-62-0442 FAX0267-63-3636
http://saku-ishikai.or.jp