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開院から2年、佐久医療センター

佐久医療センターは、平成26年3月1日に開院しました。病院完結型医療から地域完結型医療をめざしてのスタートでしたが、平成27年6月には、当初からの目標であった地域医療支援病院の承認を県知事からいただきました。開院から約2年が経過しましたので、地域医療支援病院の役割を簡単に紹介するとともに、現在問題となっている救急医療、そして地域医療構想について説明したいと思います。

JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター (☎0267-62-8181) 渡辺 仁 院長

 

地域医療支援病院とは?

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図1 平成27年 収容病院別 搬送割合

地域医療支援病院は、医療法で定められた医療機関の機能の一つです。地域の医療機関を後方から支援するという形で機能分化と連携を目的につくられ、二次医療圏(ここは佐久医療圏)に一つ以上存在することが望ましいとされています。もう少しわかりやすく表現すると、入院治療と検査が主体、外来診療は主に紹介患者さんを対象、いざという時に地域からの紹介をすぐに受け、落ち着いたらお返しするという地域の頼れる兄貴分的な病院ということになります。紹介型・予約制、救急と専門医療を行う佐久医療センターは、佐久医療圏初の地域医療支援病院の承認を開院前から目標としてきました。地域の皆さんや医療機関、行政のご理解とご支援に心より感謝申しあげます。

 

救急医療の課題
佐久医療圏で、現時点における最大の課題は救急医療です。佐久広域連合消防本部の報告では、平成27年の救急出動件数は1万89件であり、ついに1万件を超えました。この20年間で約2倍に増加しており、年齢別では、65歳以上が搬送患者全体の6割を占めています。受け入れ病院は、図1のように、6病院で全体の88%を受けていますが、総ベッド数はむしろ減少しています。
ではなぜ救急医療が問題となっているのでしょうか。救急は、一次救急(軽症患者が対象)、二次救急(中等症患者が対象)、三次救急(重症患者が対象)と分かれており、佐久医療センターは主に三次救急の患者さんを受け入れています。佐久総合病院が分割したことで機能分化が図られ、搬送先の選択が明確になるはずでしたが、かえって混乱を招くことになりました。本来、救急患者の重症度は、診察や検査をして初めてわかることです。搬送患者数が単純に増加したことに加え、二次の患者さんだから、三次の患者さんかもしれないから等、現場での判断を求めるあまり、搬送先の選択が遅れてしまうケースが出てきました。ただ、搬送患者の約98%は、佐久医療圏の医療機関に搬送されており、一定のルールを作ることで良い方向に向くものと思われます。現在、保健福祉事務所及び広域連合消防本部が中心となり、医師会、各医療機関と相談しながらそのルール作りを行っております。救命救急センターを拝命している佐久医療センターとしても、この地域の救急医療最後の砦としての自覚をもち、受け入れ体制をさらに整備するとともに、消防本部や周囲の医療機関と連携してより良い救急医療体制の構築に貢献したいと思っております。

 

地域医療構想について
皆さんは、2025年問題をご存じでしょうか。団塊の世代が75歳以上、すなわち後期高齢者になる年が2025年であり、地域医療構想とは、それに向けて各都道府県が中心となり医療提供体制を整備することです。図2は、佐久医療圏の人口動態、及び医療需要、介護需要の予想を示しています。医療需要(緑線)及び介護需要(赤線)とも2025年まで上昇しています。人口は、2025年には20万人を切り、後期高齢者(棒グラフ上段)が増え、0_64歳人口(棒グラフ下段)が減っており、働き手の世代が確実に減少することが予想されます。これを前提に医療提供体制を検討することになります。

図2 佐久医療圏人口の年次推移(二次医療圏サマリーデータより)

図2 佐久医療圏人口の年次推移(二次医療圏サマリーデータより)

今年2月から保健福祉事務所を中心に具体的な内容を検討する会議が始まりました。この佐久医療圏の中で、すべての病床を、ある一定の基準に従って高度急性期、急性期、回復期、慢性期に割り当て、2025年に運用することになります。佐久医療センターは、佐久医療圏、そして上小医療圏も含めた東信地域の中で、高度急性期及び急性期医療の病床を持つ病院として、より重要な役割を担うことになります。地域医療支援病院として、地域住民が安心して暮らせる医療提供体制の構築に貢献していきたいと思います。