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運動器エコーによる診断から治療

エコー画像の精度が飛躍的に向上したことを背景に整形外科で急速にエコー診断が普及しています。時代の風が「まずはレントゲン」から「まずはエコー」へのパラダイムシフトを加速させていると言っても過言ではありません。今回は運動器エコーによる整形外科診療をご紹介します。

 

のざわ整形外科 (☎0267-88-6025) 野澤 洋平 院長

 

整形外科診療のパラダイムシフト1

整形外科の進歩は、まさに画像診断の進歩と足並みをそろえてきたと言っても過言ではありません。ここ最近、急激に普及しはじめたエコーによる画像診断は、この分野においてパイオニア的存在である城東整形外科診療部長の皆川洋至先生によれば〝エコーは「診断の道具」ではなく、診断から治療までを瞬時に完結させる「診療の道具」としての役割を担っている”と断言されるまでの存在になっています。2その皆川先生によればエコーによる整形外科診療が従来の診療スタイルよりも優れる点は、①レントゲンよりも素早く身体の内部情報がわかる、②CT・MRIよりも時間や手間がかからず、リアルタイムに観察できる、③装置そのものを簡単に持ち運びできる、④モニターへの目線が患者さんと一致するため疾患の情報をわかりやすく伝えることができる、⑤診療時間を大幅に短縮できることなどがあげられています。

 

 

エコー画像の特徴

エコーを使った整形外科診療の最大の特徴は、外来でリアルタイムに骨以外の軟骨・3筋・腱・靭帯・末梢神経・血管などの軟部組織を観察できることです。実際、肋骨骨折、成長期の裂離骨折、疲労骨折などレントゲンで診断困難な骨折も瞬時に診断できるようになってきました。また病態を静止画像ではなく、動画によって運動器の状態を視覚化し、詳細な診断が可能となり、さらにエコーにはカラー・ドプラと呼ばれる、血流を色表示した画像診断が可能で、関節リウマチの活動性の評価やアキレス腱断裂、骨折などの治癒までの経過、成長期のスポーツ障害で多い疲労骨折、骨端線損傷においても早期から診断が可能です。

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6超音波ガイド下注射

注射の標的となる筋、筋膜、腱、腱鞘、関節包、滑液包、末梢神経などの軟部組織をエコー画像として直視しながら針刺入の状態がリアルタイムに観察できるため、正確、確実な注射が容易に達成できます。そのことで注射直後の除痛効果から、疼痛の原因、病態をはっきり判断できるため整形外科、ペインクリニックなどでこの手技が頻用されています。

また、最近注目されつつある超音波ガイド下筋膜リリース注射とは、筋膜間を神経が走行していることに着目し、同部位へ超音波ガイド下に局所麻酔薬や生理食塩水を注入して運動器の痛みを軽減する治療法として学会やセミナーなどで報告されています。

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おわりに

昨今、「整形内科」という造語を耳にすることがありますがその背景にはエコー診療の普及によって運動器疾患に対する的確な診断と手術をしない保存治療のレベルが向上してきたことにあります。今後、運動器疾患は整形外科医だけでなく、ペインクリニシャンや総合診療医など他科も含めた臨床医必須の手技になると思われます。そうした風潮の中で整形外科医は運動器疾患を扱う専門家として運動器エコーを駆使することで診断、治療のさらなるレベルアップを図り、その存在価値を示してゆく必要があると考えます。