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飛蚊症 何かが飛んで見える? これって眼の病気?

「月刊ぷらざ佐久平 平成26年9月号」掲載

自分の目の前に何かが飛んでいると感じて取ろうとするが取れない、白い壁を見た時に何か黒い影が見える、といった経験をされたことがあるでしょうか。これは蚊が飛んでいるようにも見えるので飛蚊症と呼ばれています。さて、この現象は病気の前兆なのでしょうか? なぜ飛蚊症が起こるのでしょうか? 今回はそんな飛蚊症について話をしたいと思います。

 

佐久市立浅間総合病院 (☎0267-67-2295)
眼科 佐々木 秀憲 医師

 

 

飛蚊症の症状とは?

飛蚊症は蚊が飛んでいるような症状だけを飛蚊症と呼ぶのではありません。糸くずのようであったり、煙のようであったり、輪のようであったり、光が走るようであったり、さまざまな見え方をします。全てに共通して言えるのは片目にしか見えないということです。左右の目で全く同じように黒い影が見える、見えない部分が同じところにある症状は飛蚊症ではありません。

 

生理的飛蚊症(病気ではない飛蚊症)

飛蚊症が起こる原因は眼球の中の構造にあります。眼球はカメラと同じような構造をしています。カメラであればレンズとフィルムの間は何もない空間ですが、眼球の場合は硝子体と呼ばれるゼリー状の透明な物質が詰まっています。硝子体の成分は99%が水分で、残りはコラーゲン繊維です。本来、硝子体は無色透明な物質ですが、加齢とともに液化と呼ばれる現象を起こし、ゼリー状から液状に変化します。その変化の過程でIgaku01硝子体中の繊維物質や細胞成分が小さな個体となって液状になった硝子体中に浮かぶようになります(図1)。また、近視が強い人はこのような現象が若いうちから起こります。網膜と硝子体は若い人では密着していますが、加齢性変化によって網膜と硝子体の間にすき間ができて硝子体の一部Igaku02分である繊維状の物質が眼内に浮くようになります。この現象を後部硝子体剥離と呼びます(図2)。眼の中に浮いたこれらの物質が陰になって網膜へ写りこむようになり、「何かが飛んでいる。」または、「浮いている。」と感じるようになるのです。そのため両眼で同じものが同時に見える飛蚊症はありません。ほとんどの飛蚊症は正常な老化現象によって起こるものです。生理的飛蚊症であれば治療は必要なく、症状は徐々に改善していきます。しかし、完全に症状が無くなることはありません。

 

眼の病気でおこる飛蚊症

飛蚊症の全てが全く心配のない症状ではありません。網膜の異常や、眼の中の炎症によって病気として視力低下を自覚する飛蚊症もあります。これは生理的飛蚊症と区別しなければなりません。

1、網膜剥離
病的飛蚊症の代表例は網膜剥離です。初期症状では生理的飛蚊症と同じような症状ですが、飛んでいるもIgaku03のが急激に増えたり、ゆがんで見えたり、視界が半分見えなくなったりするのが特徴です。網膜剥離は網膜に穴(裂孔)が開いて、そこから網膜が眼の内側に向かって剥がれてしまう病気です(図3)。網膜裂孔から眼の細胞が噴出して本来硝子体中にはない細胞が出現します。これが影となって飛蚊症の症状が急激に悪化するのです。網膜剥離は手術でしか治らない病気です。飛蚊症が急激に増えるようであればすぐに眼科を受診しましょう。早期に発見されればレーザー治療を行うだけで手術の必要がない場合もあります。

2、硝子体出血
網膜の血管が切れたり閉塞したりすると、眼底に出血を起こします。その出血が硝Igaku04子体中に出ることで飛蚊症の症状が起こります(図4)。硝子体中に出た血液は少量であればすぐに吸収されて症状が改善されます。しかし、出血した原因がよくなったわけではないため、出血を繰り返して網膜剥離に発展したり、
網膜内の出血が増えて視力低下を起こしたりします。

3、ぶどう膜炎
網膜の外側の層にぶどう膜という膜があります。このぶどう膜に炎症が起こると硝子体内に炎症細胞が出現し、生理的飛蚊症と同じ症状が起こることがあります(図5)。この場合もIgaku05視力低下を感じるようになり、眼の充血などの症状も起こします。これは体の中から勝手に起こる炎症(自己免疫性炎症)のため免疫を抑える点眼薬や内服薬(ステロイドなど)を使用しなければなりません。できるだけ早い治療がその後の視力を守るためには必要となります。

 

まとめ

飛蚊症、そのほとんどは加齢性変化で起こる硝子体の変化ですが、病気かどうかの区別を自己判断することはできません。飛蚊症の症状かな?と思
ったら眼科医による専門的な検査を受け、病的な飛蚊症ではないことを確認してもらうことが重要です。

 

 

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