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(2017年4月1日)
佐久市立国保浅間総合病院 地域医療部 (☎0267-67-2295) 仲 元司 部長
糖尿病はなぜ増えているのか?
厚労省が平成9年から行っている調査では日本人の糖尿病は約950万人、5年ごとの調査のたびに増え続けています。一方IDF(世界糖尿病連合)によると、世界の糖尿病人口が2015年には4億人を突破しました。
糖尿病の増加は食習慣や車社会など社会経済、生活習慣などと密接に関係しています。日本の場合は確かに高度成長期に爆発的に糖尿病人口が増加しました。しかし最近の糖尿病の増加は年代別にみるとほとんどが高齢者の増加であることが分かります。
一方で日本人の肥満の割合はここ数年減少しているとは言え、男性約3割、女性約2割がBMI25以上の肥満です。かつては欧米に比べてやせ型が多いと言われていた日本の糖尿病患者さんのBMIは、21世紀になって上昇を続け、今や平均25を超えてしまいました。つまり高齢者の増加と若年層の肥満の増加が、日本の糖尿病人口の増加につながっていると考えられます。
高齢者糖尿病の問題点
日本の人口はすでに減少に転じていますが、団塊の世代が75歳以上になる2025年には高齢者人口が3657万人に達し、その後も2042年まで増え続けると言われています。高齢者と一口に言っても個人差が大きく、身体的・精神的・社会的な多様性が認められます。高齢者糖尿病の特徴としては①自覚症状が出にくい。従って高血糖も低血糖も発見が遅れがち。②認知症、腎障害、ADL(日常生活動作)低下など合併症が多い。③脱水等により全身状態が悪化しやすい。などが挙げられます。それに伴い、糖尿病の合併症と言われるものも従来の血管病変のみでなく、歯周病、癌、認知症、ロコモティブ・シンドローム、肝疾患まで広げて考えるべきと言われています。
透析予防について
その中でも特に重要なのが腎機能の問題です。腎機能は年齢とともに低下するものですが、悪化すると尿毒症となり命を落とします。そこで腎不全がある程度進行した時点で、人工透析つまり器械が腎臓の代わりに血液をきれいにする治療法を導入するのですが、週3回3〜4時間の治療を一生続けなくてはなりませんし、1人当たり年間600万円の医療費がかかります。
そこで現在、国を挙げて透析を予防しようという動きになっています。当院や佐久総合病院のように糖尿病専門のスタッフがいる病院では、2012年から外来で透析予防指導を行ってきました。今後はそのノウハウを市町村の保健師や栄養士に伝達し、地域を挙げて取り組んでいかなくてはなりません。
低血糖について
人の手を借りないと回復しない重症低血糖は認知症を進行させることが分かってきたために、これまでのようにHbA1cだけで血糖コントロールする診療では不十分と考えられるようになってきました。昨年の京都の学会では高齢者糖尿病の血糖コントロール目標が発表されました。若くて将来の合併症の進行を予防しなくてはならない人はHbA1cを7%未満にしなければなりませんが、高齢者は認知症状やADLによって個別に目標設定することが求められています。しかも低血糖の危惧される場合には目標下限値を設定し、より安全な治療を行うと謳われているのです。
昨年暮れにリブレ・プロという簡易型のCGM(持続血糖モニタリング)が使えるようになり、より多くの患者さんが日常の血糖変化を「見える化」することによって療養に活かす道が開けました。新しくオープンする糖尿病センターでもこのリブレ・プロを活かした療養指導外来の運用を考えています。
糖尿病センターとは
2017年3月21日から当院に糖尿病センターがオープンしました。センターと言ってもこれまでの糖尿病外来と同様気軽に受診できます。最新の検査や治療・療養指導を提供するのはもちろんのこと、小児・妊婦から高齢者に至るまで、あらゆるライフステージに合わせた糖尿病患者さんのサポートができる体制を整えていくつもりです。佐久平地域の医療連携の中心となり、専門スタッフ教育や研究、また市民の皆さんへの情報発信の場としても機能させて参ります。
月刊ぷらざ編集部(株式会社信州広告社)
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高齢者の増加に伴い日本の糖尿病患者さんの数は増え続けています。一方で患者さんの若年化、肥満の増加も目立ちます。21世紀以降、内服薬、注射薬ともかなりの数の新薬が登場し、糖尿病の治療の選択肢は増えましたが、必ずしも患者さんの幸せにつながっていない気がします。今度オープンした糖尿病センターでは新しい治療法や療養指導法を駆使して、この地域から糖尿病で苦しむ人をなくすことを目指します。
佐久市立国保浅間総合病院 地域医療部 (☎0267-67-2295) 仲 元司 部長
糖尿病はなぜ増えているのか?
厚労省が平成9年から行っている調査では日本人の糖尿病は約950万人、5年ごとの調査のたびに増え続けています。一方IDF(世界糖尿病連合)によると、世界の糖尿病人口が2015年には4億人を突破しました。
糖尿病の増加は食習慣や車社会など社会経済、生活習慣などと密接に関係しています。日本の場合は確かに高度成長期に爆発的に糖尿病人口が増加しました。しかし最近の糖尿病の増加は年代別にみるとほとんどが高齢者の増加であることが分かります。
一方で日本人の肥満の割合はここ数年減少しているとは言え、男性約3割、女性約2割がBMI25以上の肥満です。かつては欧米に比べてやせ型が多いと言われていた日本の糖尿病患者さんのBMIは、21世紀になって上昇を続け、今や平均25を超えてしまいました。つまり高齢者の増加と若年層の肥満の増加が、日本の糖尿病人口の増加につながっていると考えられます。
高齢者糖尿病の問題点
日本の人口はすでに減少に転じていますが、団塊の世代が75歳以上になる2025年には高齢者人口が3657万人に達し、その後も2042年まで増え続けると言われています。高齢者と一口に言っても個人差が大きく、身体的・精神的・社会的な多様性が認められます。高齢者糖尿病の特徴としては①自覚症状が出にくい。従って高血糖も低血糖も発見が遅れがち。②認知症、腎障害、ADL(日常生活動作)低下など合併症が多い。③脱水等により全身状態が悪化しやすい。などが挙げられます。それに伴い、糖尿病の合併症と言われるものも従来の血管病変のみでなく、歯周病、癌、認知症、ロコモティブ・シンドローム、肝疾患まで広げて考えるべきと言われています。
透析予防について
その中でも特に重要なのが腎機能の問題です。腎機能は年齢とともに低下するものですが、悪化すると尿毒症となり命を落とします。そこで腎不全がある程度進行した時点で、人工透析つまり器械が腎臓の代わりに血液をきれいにする治療法を導入するのですが、週3回3〜4時間の治療を一生続けなくてはなりませんし、1人当たり年間600万円の医療費がかかります。
そこで現在、国を挙げて透析を予防しようという動きになっています。当院や佐久総合病院のように糖尿病専門のスタッフがいる病院では、2012年から外来で透析予防指導を行ってきました。今後はそのノウハウを市町村の保健師や栄養士に伝達し、地域を挙げて取り組んでいかなくてはなりません。
低血糖について
人の手を借りないと回復しない重症低血糖は認知症を進行させることが分かってきたために、これまでのようにHbA1cだけで血糖コントロールする診療では不十分と考えられるようになってきました。昨年の京都の学会では高齢者糖尿病の血糖コントロール目標が発表されました。若くて将来の合併症の進行を予防しなくてはならない人はHbA1cを7%未満にしなければなりませんが、高齢者は認知症状やADLによって個別に目標設定することが求められています。しかも低血糖の危惧される場合には目標下限値を設定し、より安全な治療を行うと謳われているのです。
昨年暮れにリブレ・プロという簡易型のCGM(持続血糖モニタリング)が使えるようになり、より多くの患者さんが日常の血糖変化を「見える化」することによって療養に活かす道が開けました。新しくオープンする糖尿病センターでもこのリブレ・プロを活かした療養指導外来の運用を考えています。
糖尿病センターとは
2017年3月21日から当院に糖尿病センターがオープンしました。センターと言ってもこれまでの糖尿病外来と同様気軽に受診できます。最新の検査や治療・療養指導を提供するのはもちろんのこと、小児・妊婦から高齢者に至るまで、あらゆるライフステージに合わせた糖尿病患者さんのサポートができる体制を整えていくつもりです。佐久平地域の医療連携の中心となり、専門スタッフ教育や研究、また市民の皆さんへの情報発信の場としても機能させて参ります。