佐久、小諸、上田…東信のことなら、ぷらざINFO
マークはクーポン券付きのお店です
(2018年1月1日)
JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター 糖尿病内分泌内科 (☎0267-62-8181) 渡邉 琢也 医師
体の内側と外側
突然ですが医療における「内」と「外」ってわかりますか?「内科」と「外科」って何だかわかりますか?江戸時代に遡り、それまでは漢方を始めとした薬の治療が主流だった日本の医学にオランダから医学が入ってきて、初めて手術が持ち込まれました。その際に、ある医者が「そんな治療は外道だ!」といったのが始まりと言われています。わかりやすく言うと「メスをつかって体の外側から治療する外科」と「薬で体の内側から治療する内科」ということなのです。厳密には体の外、体表面はもちろんのこと、口から胃腸にかけても体の外という認識になるので、それ以外が人間の身体にとっての「内」ということになります。
内分泌ってナンデスカ?
では「分泌」とは何でしょう?わかりやすい例は唾液や汗です。これらはある特別な細胞で作られて放出される液体で、細胞で作られてから放出されるまでの現象を「分泌」と呼びます。唾液や汗は身体の外に分泌されるので外分泌ですが、からだの内側(ほとんどが血液中)に向けてある特別な液体が放出される現象を「内分泌」と呼び、その特別な液体を「ホルモン」と呼びます。突然ですがみなさん、糖尿病って何なのかわかりますよね。実は糖尿病は古来より内分泌の中の一分野という位置づけなのです。しかし今や国民病になりつつある糖尿病は、その需要と専門性の高まりにより独立した分野になりつつあります。糖尿病において、治療のキーワードとなるのはインスリンですが、これは膵臓に散在している分泌細胞から血中に分泌されるホルモンです。それが体中の様々な場所、筋肉、肝臓や脂肪などの標的臓器にある「受け皿」まで到達し、その信号が伝わることで血糖が下がります。
体内環境を一定に保つホメオスタシス
私達は「意識して」血糖を下げることってできますか?「血糖よ〜…下がれっ!」と願って血糖が下がれば医者はいりませんよね。そう、体の中で血糖が下がるという現象は無意識下での自動調節なのです。血糖だけではなく、体温もそうです。私達は寒いと勝手に身体が震えて熱をつくり、逆に暑いと自然に汗がでて体を冷却します。そうすることで人間の平熱は35〜36℃に保たれ、血糖は空腹時に110という数字を越えない様に自動調節されています。このような、人間の体内環境を一定に保つ働きのことを「恒常性=ホメオスタシス」と呼びます。そしてこのホメオスタシスを維持する立役者がホルモンであり、内分泌系なのです。人間が色々な環境に順応して生きていく上で内分泌系は欠かせないシステムなんですね。
甲状腺を例えに
少しはイメージが湧いてきたでしょうか。これまで体温、血糖を例に話してきましたが、自動調節されている体内状態は他に、血圧、体組成(やせ・肥満・身長)、尿、電解質(血液内の塩分・カルシウムなど)、性周期(生理など)があります。これらの背景にはそれぞれの調節を司るそれぞれのホルモンがあり、そのホルモンの量が過剰になったり、逆に低下してしまったりということが病気につながります。私達の外来にいらっしゃる患者さんの訴えはさまざまです。「最近ちょっとダルい…」とか、「そういえば最近寒がりになった」とか、日常の中でのちょっとした変化が実は内分泌疾患だったりします。実際これらは、内分泌領域で最も需要の高い疾患の一つである「橋本病」の主な訴えです。橋本病は、甲状腺に慢性的な炎症が起こることで甲状腺ホルモン分泌が低下し、全身の活性低下が引き起こされる病気です。有病率は軽症例も含めると成人女性の30人に1人と言われています。血液検査で大きく当たりをつけることができるので、もし心配であればかかりつけの先生に相談して、ホルモンの検査を受けてみてください。あなたの悩みが解決するかもしれませんよ。 いかがでしたか?今回は内分泌全体についてのお話でしたが、次回は少し専門的に特殊な高血圧の病態についてお話させていただきます。ご期待ください。
月刊ぷらざ編集部(株式会社信州広告社)
Copyright(c) saac.co.ltd All Rights Reserved.
みなさん、内分泌ってどんな診療を行う科かわかりますか?あまり馴染みのない単語ですよね。ということで、この度2号連続で執筆する機会を与えていただきましたので、初号にあたる今回は「内分泌って何なのか」についてお話したいと思います。
JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター
糖尿病内分泌内科 (☎0267-62-8181) 渡邉 琢也 医師
体の内側と外側
突然ですが医療における「内」と「外」ってわかりますか?「内科」と「外科」って何だかわかりますか?江戸時代に遡り、それまでは漢方を始めとした薬の治療が主流だった日本の医学にオランダから医学が入ってきて、初めて手術が持ち込まれました。その際に、ある医者が「そんな治療は外道だ!」といったのが始まりと言われています。わかりやすく言うと「メスをつかって体の外側から治療する外科」と「薬で体の内側から治療する内科」ということなのです。厳密には体の外、体表面はもちろんのこと、口から胃腸にかけても体の外という認識になるので、それ以外が人間の身体にとっての「内」ということになります。
内分泌ってナンデスカ?
では「分泌」とは何でしょう?わかりやすい例は唾液や汗です。これらはある特別な細胞で作られて放出される液体で、細胞で作られてから放出されるまでの現象を「分泌」と呼びます。唾液や汗は身体の外に分泌されるので外分泌ですが、からだの内側(ほとんどが血液中)に向けてある特別な液体が放出される現象を「内分泌」と呼び、その特別な液体を「ホルモン」と呼びます。突然ですがみなさん、糖尿病って何なのかわかりますよね。実は糖尿病は古来より内分泌の中の一分野という位置づけなのです。しかし今や国民病になりつつある糖尿病は、その需要と専門性の高まりにより独立した分野になりつつあります。糖尿病において、治療のキーワードとなるのはインスリンですが、これは膵臓に散在している分泌細胞から血中に分泌されるホルモンです。それが体中の様々な場所、筋肉、肝臓や脂肪などの標的臓器にある「受け皿」まで到達し、その信号が伝わることで血糖が下がります。
体内環境を一定に保つホメオスタシス
私達は「意識して」血糖を下げることってできますか?「血糖よ〜…下がれっ!」と願って血糖が下がれば医者はいりませんよね。そう、体の中で血糖が下がるという現象は無意識下での自動調節なのです。血糖だけではなく、体温もそうです。私達は寒いと勝手に身体が震えて熱をつくり、逆に暑いと自然に汗がでて体を冷却します。そうすることで人間の平熱は35〜36℃に保たれ、血糖は空腹時に110という数字を越えない様に自動調節されています。このような、人間の体内環境を一定に保つ働きのことを「恒常性=ホメオスタシス」と呼びます。そしてこのホメオスタシスを維持する立役者がホルモンであり、内分泌系なのです。人間が色々な環境に順応して生きていく上で内分泌系は欠かせないシステムなんですね。
甲状腺を例えに
少しはイメージが湧いてきたでしょうか。これまで体温、血糖を例に話してきましたが、自動調節されている体内状態は他に、血圧、体組成(やせ・肥満・身長)、尿、電解質(血液内の塩分・カルシウムなど)、性周期(生理など)があります。これらの背景にはそれぞれの調節を司るそれぞれのホルモンがあり、そのホルモンの量が過剰になったり、逆に低下してしまったりということが病気につながります。私達の外来にいらっしゃる患者さんの訴えはさまざまです。「最近ちょっとダルい…」とか、「そういえば最近寒がりになった」とか、日常の中でのちょっとした変化が実は内分泌疾患だったりします。実際これらは、内分泌領域で最も需要の高い疾患の一つである「橋本病」の主な訴えです。橋本病は、甲状腺に慢性的な炎症が起こることで甲状腺ホルモン分泌が低下し、全身の活性低下が引き起こされる病気です。有病率は軽症例も含めると成人女性の30人に1人と言われています。血液検査で大きく当たりをつけることができるので、もし心配であればかかりつけの先生に相談して、ホルモンの検査を受けてみてください。あなたの悩みが解決するかもしれませんよ。
いかがでしたか?今回は内分泌全体についてのお話でしたが、次回は少し専門的に特殊な高血圧の病態についてお話させていただきます。ご期待ください。