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人工関節置換術について 〜股関節・膝関節の痛みに悩んでいる方へ〜

人工関節置換術とはiga

加齢的変化や関節の病気・ケガなどによって変形した関節を、金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工関節に置き換える手術です。他の治療法と比較すると、短期間で痛みや歩行能力の改善が可能になる、切れ味の良い治療法です。手術件数は年々増加傾向にあり、2013年には国内で13万件以上の手術が行われています。その約96%が股関節と膝関節の人工関節です。

 

人工関節置換術が必要になる原因は?

ほとんどが変形性関節症という関節の疾患です。変形性関節症は、車のタイヤが走行距離に応じてすり減っていくのと同じように、関節の軟骨が長い時間をかけて少しずつすり減り、骨が変形します。関節の変形は全身のどの関節にも発生しますが、特に体重がかかって酷使されやすい股関節や膝関節に発症しやすい傾向にあります。70歳以上の女性の70%が変形性膝関節症を発症しているという報告もあります。

その他には関節リウマチや骨壊死症があります。関節リウマチは、身体を守る役割をしている免疫細胞が自分の関節を間違えて外敵と認識して攻撃してしまう病気で、全身の関節軟骨が破壊されるために体を動かすと激痛が生じます。

骨壊死症は、関節の体重がかかる部分の骨が血流の低下により壊死(骨組織が死んだ状態)に陥った状態です。骨壊死に陥った部分が潰れることにより、痛みが出ます。

 

まずは関節痛の原因と向き合って

股関節や膝関節の痛みに対する第一の治療が人工関節ではありません。外傷や著しい関節破壊など緊急性のある場合を除いて、まずは手術以外の治療(保存治療)を行います。その三本柱は①減量、②筋力訓練、③歩き方の矯正です。たったこれだけ?と思われるかもしれませんが、これがなかなか難しいようです。体重が関節の一番の負担であり、筋肉が何よりの支えです。それを知って痛みの出ない歩き方を身に付けるのです。この3つに加えて鎮痛剤の内服や関節内注射をすることもあります。

ある人工関節センターでは、手術目的で受診された方に適切な保存治療を行うことによって、約半数の患者さんの痛みが改善し、手術を回避できたという報告があります。痛みは体が本人に発した大切なメッセージですから、まずは関節痛に至った原因と向き合い、正しい知識を身に付けて保存治療を試してほしいと思います。

 

人工関節は最後の砦

〜負担の少ない、筋肉を切らない手術〜

保存治療をとことんやってみて、それでも痛みが取れない場合に、人工関節に入れ換える手術を考えます。人工関節の手術は患者さんにとって最終手段ですので、万全を期して行いますが、後に述べる合併症が起こる可能性もあります。じっくり考えて手術をするか決めてもらいます。

患者さんが手術をすると決めたからには、私たち整形外科医は最善を尽くします。以前は傷が大きく、関節周囲の筋肉を切り離して手術を行っていましたが、近年の医療技術と材料の進歩によって、筋肉を切らない人工関節置換術が可能となり、術後の回復が早く、早期退院、早期社会復帰が期待できるようになりました。当院では多くの患者さんが手術翌日から立って歩く練習を始めています。

 

人工関節の良い点・悪い点

人工関節置換術の良い点は、痛みがなくなることです。歩き始めや立ち上がる動作、階段の昇り降りが楽になります。必ずしも完全に痛みがゼロになるとは限りませんが、手術前の激痛と比べたらほとんど痛くないと言われる方が多いです。

逆に悪い点は、感染や血栓症などの合併症を起こす可能性があることと、将来人工関節が弛む可能性があることです。合併症の発生率は統計によると、感染が約1〜2%、重症な血栓症である肺血栓塞栓症は約1%です。人工関節は、材料の進歩によって今では20年以上持つだろうと言われていますが、弛んできた場合は再置換術が必要なこともあります。手術を受けたら、経過が順調でも年1回程度は医師の診察を受けることをお勧めします。

 

さいごに

股関節や膝関節の激しい痛みは、歩行や動作が困難になって筋力も低下し、日常生活が制限されるため、精神的につらくなることもあります。これを読んで、関節の痛みと真剣に向き合うきっかけになっていただければ幸いです。受診ご希望の際には、事前にお近くの整形外科に電話でお問い合わせの上、診察を受けることをお勧めいたします。