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認知症について

認知症の患者が増えています。人口の高齢化が主な原因といわれています。図に示した通り、当地には4000人を超える認知症の患者が存在すると推定されます。一口に認知症といってもその原因となる疾患は様々です。手術や、内服で治療ができる認知症、早期治療により症状の進行を抑える事もできるようになりました。今回、認知症に関し、原因となる疾患、治療方法、認知症を防ぐ方法に関し基本的なお話をします。認知症の理解の第一歩になればと思います。

 

JA長野厚生連 佐久総合病院 神経内科 (☎0267-82-3131) 三木 淳 医師

 

認知症とはiga01

さて、認知症とはどういった症状をいうのでしょうか。物忘れが認知症の始まりではないかと心配する人が多いかと思います。若いときと比べて「最近、物忘れが多い。名前が出てこない。物を置き忘れる」と感じる人も多いかと思います。認知症を疑う物忘れとはどういう状態なのでしょうか。認知症を疑う物忘れは「覚えていない」「少し前の事を覚えていない」が特徴です。覚えていないとは、相手から指摘されても「そうだった」とならないで「そんな事は知らない」となる状態です。少し前の事を覚えていないとは、昔の出来事、例えば自分の卒業した学校名、結婚式の思い出、家族旅行などは覚えていても、今朝の朝食の内容、数分前の電話の内容が思い出せない状態をいいます。他にはどういった症状があるのでしょうか。道に迷う、これまで出来ていた仕事や家事ができなくなる、入浴を嫌がる、いつも同じ服を着る、新聞やテレビに興味がなくなる、外出を極端に嫌う、幻覚を訴える、ボーッとして止まっている、歩くのが遅くなる、トイレの失敗が増える、怒りっぽくなる、性格が変わる、こうした症状が認知症の代表的な初期症状です。

 

認知症の原因

認知症の原因については、アルツハイマー病、脳血管性認知症が代表的です。その他に、レビー小体病、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺、腎臓、肝臓の機能障害、てんかん、ビタミン欠乏症なども認知症の原因となります。薬の副作用で認知症になる事もあります。うつ病も認知症と似た症状を起こす事があります。病院(内科、神経内科、精神科、脳神経外科)で診察、頭部画像検査、血液検査などをして診断をします。それぞれの病気に関する詳しい事は、別の機会にお話します。

 

認知症の治療

正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫が原因であれば手術で認知症は改善します。甲状腺、腎臓、肝臓の機能障害、てんかん、ビタミン欠乏症が原因の場合は薬で治療が可能な事があります。アルツハイマー病を治す治療法はありませんが、進行を抑える薬があります。早期からの治療が進行を抑える効果が高いとされます。脳血管性認知症は脳梗塞、脳出血の再発予防が重要です。いずれにしても、原因に合った適切な治療を早期から継続して行う事が重要です。

 

認知症にならないためには

認知症は誰にでも起こる可能性があります。遺伝する事は少ないとされます。認知症予防には成人病対策が重要です。高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、肥満などは脳梗塞、脳出血になる危険性を高めます。成人病対策は脳血管性認知症の予防に直結します。アルツハイマー病の予防はあるのでしょうか。残念ながら、確実に予防する方法は見つかっていません。アルツハイマー病になる危険性を高める病気は解っています。糖尿病です。アルツハイマー病は脳の中で起きている糖尿病に例えられる事があります。糖尿病の治療、予防はアルツハイマー病になる危険性を下げます。生活習慣では運動不足、社会活動の低下(家で独りでいる、仕事、趣味がない)、偏食がアルツハイマー病の危険因子といわれています。適度な運動、積極的な社会参加、適切な食事がアルツハイマー病になる危険性を下げます。

 

自分や家族が認知症と診断されたら

自分や家族が認知症と診断されると、他の人には知られたくないと思う気持ちになります。癌になっても認知症にはなりたくないというお話も、よく耳にします。認知症に対する社会的な偏見がある事も事実です。多くの初期、中期の認知症患者が苦手な事は、少し前の事を忘れてしまう事だけです。それ以外の事は大きな問題はありません。出来ない事より、出来る事がたくさん残されています。野山を歩いたり、家族、友人らとの交流を楽しんだり、美味しい物を食べたり、映画を見たり、時には泣いたり、笑ったりと人生を楽しめる事はたくさんあります。医師、看護師、保健師、介護職員、役場の職員らがそれぞれの立場で患者、その家族が人生を楽しめるようにお手伝いいたします。自分や家族だけで悩まないで、病院、役場に相談してください。きっと良い方法が見つかります。