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(2017年6月1日)
JA長野厚生連 佐久総合病院 地域ケア科 (☎0267-82-3131) 小松 裕和 医師
社会的孤立
「タバコは健康に良くない」ということは多くの方がご存知だと思いますが、「人とのつながりを失うことや孤立すること」がタバコと同じぐらい健康に良くないことはご存知でしょうか。一昔前はメタボとか肥満の健康への問題が大きく取り上げられましたが、地域社会の健康を考える上での一番の大きな問題は「社会的孤立」に変わってきています。
配偶者との死別
在宅医療の仕事をしていると、高齢のご夫婦での介護に関わることがよくあります。やがて病気の進行により配偶者との死別の時期が訪れるのですが、妻に先立たれた男性は不思議と体調を崩してしまうことが多く、一方で夫に先立たれた女性は体調を崩されることはそれほど多くありません。
この現象は世界中の調査をまとめた報告でも明らかになっています。これは、一番身近な「つながり」を失うことの健康への影響を示したものですが、おそらく食事や飲酒・喫煙、運動などの健康習慣、地域づきあいや友人との交流、買い物やお出かけなどの社会参加の面において、男性は女性を通じて得ているものが多いのでしょう。
震災後に起きたこと
東日本大震災ではたくさんの方が家族や友人など大切なつながりを失いました。復興に向けての支援の中でさまざまな調査や新しい取り組みが行われ、ここ1〜2年で結果が報告されています。
例えば、人と人とのつながりや地域コミュニティがしっかりしている地域では、精神障害の発症が少なかったようです。人と人とのつながりがもつコミュニティの力を「ソーシャル・キャピタル」と呼びますが、一人一人がつながることで、レオ・レオニの有名な絵本「スイミー」のような力が発揮されているのかもしれません。
また、避難所や仮設住宅へ移る際に、公平性を考えて「抽選」で入居した場合と、地域のつながりを考えて「ご近所単位」のまとまりで入居した場合では、「ご近所単位」での入居の方がお互いに助け合う関係が保たれ、精神障害の発症も少ないことがわかりました。災害時においても、人と人とのつながりをどのように維持していくかが、生活や健康にとても重要なようです。
幸せや肥満が3つ先まで伝染?
話は少し変わりますが、インフルエンザが人から人へ感染していくように、「幸せや肥満も人から人へ伝染していく」と言われると、あなたは信じますか。
びっくりされた方も多いかと思いますが、私たちの身近でも同じようなことが起きています。例えば、子供が褒められて喜んでいると、その両親は自分のことのように喜びます。時には祖父母や両親の友人まで喜んでくれることもありますよね。子供さんの喜びが、両親を通じて、祖父母や両親の友人にまで伝染しているのです 。
また、友人のすすめや口コミで、ついつい物を買ったり、レストランに行ったりしますよね。肥満が伝染するというのは、人の「考え方」や「行動」が人と人とのつながりから影響を受けていることのようです。ちなみに、この研究からは、3つ先のつながりまで影響を受けることが明らかになりました。3つ先というと、「友達の友達の友達」までです!
社会参加のもつ力
人と人とのつながり以外にも地域の健康を考える際に、「社会参加」の重要性が見直されています。趣味の教室に通ったり、友人と出かけたり、色々な集まりに参加したりすることで健康が保たれるようです。地域のサロン活動に参加している高齢者は、なんと3割も認知症になりにくいようです。
社会参加は高齢者にとってだけでなく、若い方や障害のある方、病気を持った方にもとても重要です。在宅医療の現場ではお花見などの外出支援を行うことで、体調の安定や介護負担の軽減につながることも経験します。また、障害をもった子供さんへの外出など社会参加の支援を通じて、色々な成長を感じることもあります。
つながりと社会参加で健康に
社会参加することで健康を維持し、さらに社会参加で新しいつながりをつくる。つながりと社会参加をどう維持していくか、人と人とのつながりの中に適切な健康知識をどう広めていくか、これが地域の健康を考える上で大事なのだと思います。
佐久総合病院向かいの「うすだ健康館」では、つながりと社会参加による地域づくりを目指して活動をしています。地域での健康教室の開催や、講演会の講師依頼なども対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
月刊ぷらざ編集部(株式会社信州広告社)
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人は人とのつながりを失うことや孤立することで、思った以上に健康を害してしまいます。年をとっても病気や障害をもっても、子育てのときも介護のときも、人とのつながりを大切にして、趣味の活動を続けたり、おしゃれをしたり、友人と出かけたりすることは、どの人の健康にとっても、とても大事であるようです。
JA長野厚生連 佐久総合病院 地域ケア科 (☎0267-82-3131) 小松 裕和 医師
社会的孤立
「タバコは健康に良くない」ということは多くの方がご存知だと思いますが、「人とのつながりを失うことや孤立すること」がタバコと同じぐらい健康に良くないことはご存知でしょうか。一昔前はメタボとか肥満の健康への問題が大きく取り上げられましたが、地域社会の健康を考える上での一番の大きな問題は「社会的孤立」に変わってきています。
配偶者との死別
在宅医療の仕事をしていると、高齢のご夫婦での介護に関わることがよくあります。やがて病気の進行により配偶者との死別の時期が訪れるのですが、妻に先立たれた男性は不思議と体調を崩してしまうことが多く、一方で夫に先立たれた女性は体調を崩されることはそれほど多くありません。
この現象は世界中の調査をまとめた報告でも明らかになっています。これは、一番身近な「つながり」を失うことの健康への影響を示したものですが、おそらく食事や飲酒・喫煙、運動などの健康習慣、地域づきあいや友人との交流、買い物やお出かけなどの社会参加の面において、男性は女性を通じて得ているものが多いのでしょう。
震災後に起きたこと
東日本大震災ではたくさんの方が家族や友人など大切なつながりを失いました。復興に向けての支援の中でさまざまな調査や新しい取り組みが行われ、ここ1〜2年で結果が報告されています。
例えば、人と人とのつながりや地域コミュニティがしっかりしている地域では、精神障害の発症が少なかったようです。人と人とのつながりがもつコミュニティの力を「ソーシャル・キャピタル」と呼びますが、一人一人がつながることで、レオ・レオニの有名な絵本「スイミー」のような力が発揮されているのかもしれません。
また、避難所や仮設住宅へ移る際に、公平性を考えて「抽選」で入居した場合と、地域のつながりを考えて「ご近所単位」のまとまりで入居した場合では、「ご近所単位」での入居の方がお互いに助け合う関係が保たれ、精神障害の発症も少ないことがわかりました。災害時においても、人と人とのつながりをどのように維持していくかが、生活や健康にとても重要なようです。
幸せや肥満が3つ先まで伝染?
話は少し変わりますが、インフルエンザが人から人へ感染していくように、「幸せや肥満も人から人へ伝染していく」と言われると、あなたは信じますか。
びっくりされた方も多いかと思いますが、私たちの身近でも同じようなことが起きています。例えば、子供が褒められて喜んでいると、その両親は自分のことのように喜びます。時には祖父母や両親の友人まで喜んでくれることもありますよね。子供さんの喜びが、両親を通じて、祖父母や両親の友人にまで伝染しているのです 。
また、友人のすすめや口コミで、ついつい物を買ったり、レストランに行ったりしますよね。肥満が伝染するというのは、人の「考え方」や「行動」が人と人とのつながりから影響を受けていることのようです。ちなみに、この研究からは、3つ先のつながりまで影響を受けることが明らかになりました。3つ先というと、「友達の友達の友達」までです!
社会参加のもつ力
人と人とのつながり以外にも地域の健康を考える際に、「社会参加」の重要性が見直されています。趣味の教室に通ったり、友人と出かけたり、色々な集まりに参加したりすることで健康が保たれるようです。地域のサロン活動に参加している高齢者は、なんと3割も認知症になりにくいようです。
社会参加は高齢者にとってだけでなく、若い方や障害のある方、病気を持った方にもとても重要です。在宅医療の現場ではお花見などの外出支援を行うことで、体調の安定や介護負担の軽減につながることも経験します。また、障害をもった子供さんへの外出など社会参加の支援を通じて、色々な成長を感じることもあります。
つながりと社会参加で健康に
社会参加することで健康を維持し、さらに社会参加で新しいつながりをつくる。つながりと社会参加をどう維持していくか、人と人とのつながりの中に適切な健康知識をどう広めていくか、これが地域の健康を考える上で大事なのだと思います。
佐久総合病院向かいの「うすだ健康館」では、つながりと社会参加による地域づくりを目指して活動をしています。地域での健康教室の開催や、講演会の講師依頼なども対応しておりますので、お気軽にご相談ください。