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(2018年5月1日)
JA長野厚生連 佐久総合病院 本院 泌尿器科 女性泌尿器科外来 (☎0267-82-3131) 須田 紗代 医長
女性に尿もれが多いワケ~骨盤底筋のゆるみと短い尿道~
女性の骨盤内には膀胱・子宮・直腸があり、骨盤底(股の部分)で骨盤底筋が厚い膜を張ったハンモックのように臓器を支えています。出産や閉経は骨盤底筋にダメージを与え骨盤底筋のゆるみにつながり、「尿もれ」や「骨盤臓器脱(性器脱)」を引き起こします。また、女性の尿道が男性よりも短く直線的な構造をしていることも、尿をもれやすくしています。(図1)
尿もれの主な種類
成人女性の3~4人に1人は尿もれを経験します。多いのは次の2つのタイプです。 ●腹圧性尿失禁 咳やくしゃみなどでお腹に力が加わった時の尿もれで、経験された人も多いでしょう。尿もれの中で最多で、原因は妊娠や肥満による体重増加、出産・加齢による骨盤底筋のゆるみと言われています。体調不良や補正下着等で締め付けすぎている時にも起りやすいですよ。 ●過活動膀胱(切迫性尿失禁) いわゆる「トイレに間に合わない」タイプで、膀胱が敏感になっていることが原因と言われています。尿もれを伴わない過活動膀胱もあります。原因は不明なものがほとんどですが、男女ともに加齢とともに生じやすく、40歳以上の男女8人に1人はこの症状があると言われています。
軽い尿もれのセルフケア
前述の通り、女性は尿もれしやすい構造をしていますので、誰でも起こりうる症状です。軽くてたまに生じるのであれば、セルフケアをして様子を見ることで改善することもあります。 ●尿ケア専用品を上手に使おう 薬局やドラッグストアでは昨今のニーズの高さを反映して、尿ケア専用の商品が所狭しと並べられています。臭い対策など質も良くなってきています。失禁量によってライナー型、パッド型、パンツ型と様々用意されていますので、ご自身の症状に合ったものを選びましょう。生理用品で代用する患者さんを外来で時々お見掛けしますが、生理用品は尿の吸収には適しておらず陰部の皮膚トラブル等の原因になりかねません。目的に合ったものを正しく使うようにしましょう。 ●骨盤底筋体操を習慣にしよう 軽いものであれば骨盤底筋体操が効果的です。最近はWEB上やメディアでもたくさん紹介されているので簡単に情報を手に入れることができますが、正しく行わないと症状が悪化することもあります。下腹部や臀部の筋肉はなるべく使わず、腟や肛門を締めあげることを意識してみましょう。続けて行うと、過活動膀胱や軽い骨盤臓器脱にも効果があります。日常生活にうまく取り入れて、日々トレーニングしましょう。
医療機関での尿もれ治療
日常生活に支障が出てくるほどのもれの回数や量で困るようであれば、医療機関での治療も考えてみましょう。 過活動膀胱は薬物療法が主体になります。最近は飲み薬だけでなく貼り薬も出ています。 以前は一部の緑内障があると使えない薬がほとんどでしたが、最近は薬の選択肢も増えてきました。 腹圧性尿失禁は内服や手術で改善が期待できます。手術は、短時間で合併症が少ないTOT手術(尿道吊り上げ術:ゆるんだ尿道を専用テープで吊り上げる)が主流です。(図2)
腟からピンポン玉みたいなものが触れる…骨盤臓器脱?
骨盤底筋がゆるむと、骨盤内の膀胱・子宮・直腸が中央にある腟を通してずるずると下がってきてしまいます。これが「骨盤臓器脱(膀胱瘤・子宮脱・直腸瘤)」です。目立ってくると腟からピンポン玉のようなものが触れたり、排尿に支障がでたり、脱部分から出血することもあります。女性の6~10人に1人は生じると言われています。(図3) 治療が必要な場合は、腟内にリング(ペッサリー)を入れて様子を見ていく方法と、手術で根本的に修復する方法があります。骨盤底の弱った部分に腟から医療用メッシュシートを挿入し補強するメッシュ手術(TVM)が主流です。 尿もれや骨盤臓器脱は、それだけで命をおびやかすものではないため、治療を強制するものではありません。しかし、それらが原因で外出が億劫になったり、趣味が楽しめなくなったりと活動の幅が狭まっているようでしたら、笑顔で過ごすために思い切って受診してみませんか?解決策を一緒に見つけていきましょう。
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尿もれは女性であれば誰しもが経験しうる症状です。それほど女性にとって非常に身近な症状にもかかわらず、人になかなか相談できなかったり話題にのぼらなかったり、いざ受診しようと思っても泌尿器科はちょっと…と1人で悩まれている方が少なくありません。女性が受診しづらいイメージの泌尿器科ですが、女性医師を希望され受診される女性の患者さんも増えています。気になる症状があれば思い切って受診してみませんか?
JA長野厚生連 佐久総合病院 本院
泌尿器科 女性泌尿器科外来 (☎0267-82-3131) 須田 紗代 医長
女性に尿もれが多いワケ~骨盤底筋のゆるみと短い尿道~
女性の骨盤内には膀胱・子宮・直腸があり、骨盤底(股の部分)で骨盤底筋が厚い膜を張ったハンモックのように臓器を支えています。出産や閉経は骨盤底筋にダメージを与え骨盤底筋のゆるみにつながり、「尿もれ」や「骨盤臓器脱(性器脱)」を引き起こします。また、女性の尿道が男性よりも短く直線的な構造をしていることも、尿をもれやすくしています。(図1)
尿もれの主な種類
成人女性の3~4人に1人は尿もれを経験します。多いのは次の2つのタイプです。
●腹圧性尿失禁
咳やくしゃみなどでお腹に力が加わった時の尿もれで、経験された人も多いでしょう。尿もれの中で最多で、原因は妊娠や肥満による体重増加、出産・加齢による骨盤底筋のゆるみと言われています。体調不良や補正下着等で締め付けすぎている時にも起りやすいですよ。
●過活動膀胱(切迫性尿失禁)
いわゆる「トイレに間に合わない」タイプで、膀胱が敏感になっていることが原因と言われています。尿もれを伴わない過活動膀胱もあります。原因は不明なものがほとんどですが、男女ともに加齢とともに生じやすく、40歳以上の男女8人に1人はこの症状があると言われています。
軽い尿もれのセルフケア
前述の通り、女性は尿もれしやすい構造をしていますので、誰でも起こりうる症状です。軽くてたまに生じるのであれば、セルフケアをして様子を見ることで改善することもあります。
●尿ケア専用品を上手に使おう
薬局やドラッグストアでは昨今のニーズの高さを反映して、尿ケア専用の商品が所狭しと並べられています。臭い対策など質も良くなってきています。失禁量によってライナー型、パッド型、パンツ型と様々用意されていますので、ご自身の症状に合ったものを選びましょう。生理用品で代用する患者さんを外来で時々お見掛けしますが、生理用品は尿の吸収には適しておらず陰部の皮膚トラブル等の原因になりかねません。目的に合ったものを正しく使うようにしましょう。
●骨盤底筋体操を習慣にしよう
軽いものであれば骨盤底筋体操が効果的です。最近はWEB上やメディアでもたくさん紹介されているので簡単に情報を手に入れることができますが、正しく行わないと症状が悪化することもあります。下腹部や臀部の筋肉はなるべく使わず、腟や肛門を締めあげることを意識してみましょう。続けて行うと、過活動膀胱や軽い骨盤臓器脱にも効果があります。日常生活にうまく取り入れて、日々トレーニングしましょう。
医療機関での尿もれ治療
日常生活に支障が出てくるほどのもれの回数や量で困るようであれば、医療機関での治療も考えてみましょう。
過活動膀胱は薬物療法が主体になります。最近は飲み薬だけでなく貼り薬も出ています。
以前は一部の緑内障があると使えない薬がほとんどでしたが、最近は薬の選択肢も増えてきました。
腹圧性尿失禁は内服や手術で改善が期待できます。手術は、短時間で合併症が少ないTOT手術(尿道吊り上げ術:ゆるんだ尿道を専用テープで吊り上げる)が主流です。(図2)
腟からピンポン玉みたいなものが触れる…骨盤臓器脱?
骨盤底筋がゆるむと、骨盤内の膀胱・子宮・直腸が中央にある腟を通してずるずると下がってきてしまいます。これが「骨盤臓器脱(膀胱瘤・子宮脱・直腸瘤)」です。目立ってくると腟からピンポン玉のようなものが触れたり、排尿に支障がでたり、脱部分から出血することもあります。女性の6~10人に1人は生じると言われています。(図3)
治療が必要な場合は、腟内にリング(ペッサリー)を入れて様子を見ていく方法と、手術で根本的に修復する方法があります。骨盤底の弱った部分に腟から医療用メッシュシートを挿入し補強するメッシュ手術(TVM)が主流です。
尿もれや骨盤臓器脱は、それだけで命をおびやかすものではないため、治療を強制するものではありません。しかし、それらが原因で外出が億劫になったり、趣味が楽しめなくなったりと活動の幅が狭まっているようでしたら、笑顔で過ごすために思い切って受診してみませんか?解決策を一緒に見つけていきましょう。