ぷらざINFO/教えてドクター みんなの医学

おひざの痛み ~変形性膝関節症について~

「月刊ぷらざ佐久平 平成25年8月号」掲載

黒澤 一也 院長みなさん、歩き始めや階段の昇り降りでひざが痛くなることはありませんか?特に中高年の方でこういった症状が出てきたら変形性膝関節症かもしれません。変形性膝関節症を放置しておくと痛みや変形が進行し、最終的には歩行困難になってしまう方もいらっしゃいます。ひざの痛みがあったらそのままにせず、状態にあった治療を早期に行い歩行能力を維持しましょう。

 

社会医療法人恵仁会 くろさわ病院(☎0267-64-1711)
整形外科・リハビリテーション科
黒澤 一也 院長

 

変形性膝関節症とは?

図1)変形性膝関節症の病態正常なひざは表面の軟骨が滑らかでスムーズに動くようになっていますが、加齢や様々な要因により軟骨がすり減り、関節の中で炎症がおきて水が溜まったり、かみ合わせが悪くなります。変形が進行すると歩行困難になったりすることもあります(図1)。
厚生労働省の調査では自覚症状を有する患者数は1千万人、潜在的な患者数も含めると実に3千万人が変形性膝関節症になっているとのことです。年齢と共に患者数は増加し、50歳以上では女性は男性の1.5~2倍といわれています。女性は筋力が弱かったり、ホルモンの影響があるといわれています。また肥満やひざのケガ、関節リウマチなどの病気も関わっています。

 

変形性膝関節症の症状

症状としては、まずひざの痛みがあります。歩き始めや階段昇降、また、ひざを伸ばして寝ていると痛みが出たり、寒い時に痛みが強くなることがあります。進行するとひざの動きの制限も出てきます。日本人は生活習慣の中でよく正座をしますが、正座が出来なくなったり、ひざが真っ直ぐ伸ばせないなどの症状もでてきます。さらには関節の腫れや熱感が出現したり、進行すると外からでも変形がわかるようになり、最終的に歩行困難になります。

 

変形性膝関節症の診断

図2)大腿四頭筋訓練ひざの痛みで医療機関にかかった場合、まず症状から変形性膝関節症を診断します。次に行なうのがX線撮影です。この検査で変形性膝関節症に伴う骨の変化、例えば関節の隙間が狭い、骨のトゲがあるなどがわかります。またX線画像で所見があまりない場合はMRI検査を実施することがあります。MRIでは関節に水が溜まっていたり、半月板や靭帯、軟骨といったX線画像で写らないものの損傷がわかります。画像検査により変形性膝関節症の程度を把握し、その程度に合わせた治療を行っていきます。

 

変形性膝関節症の治療

治療としてはひざへの負担を軽くするため、ひざ周囲の筋力、特に大腿四頭筋を鍛えたり(図2)、ひざの動きを良くする体操を行います。体重が重いとひざにかかる負担は何倍にもなるため、体重を適正に保ちます。また寝る時にひざの下に枕をいれてひざを軽く曲げた状態で寝たり、ひざを冷やさないようにします。医療機関では鎮痛剤の飲み薬やシップ、塗り薬などを処方します。保温や支持性向上のためサポーターを使ったり足底板などを使うこともあります。また、こうした治療で改善しない場合は、医療機関でヒアルロン酸の関節内注射や手術が行われます。よくひざに溜まった水は抜くと癖になると言われていますが、癖になるのではなく、炎症が持続するからで、必要に応じて水は抜いたほうが良いと思います。
以上、お話した保存的加療でひざの痛みが改善しない場合は手術療法を選択します。手術療法としては関節鏡というカメラで負担の少ない手術から、骨切り術・人工関節置換術といった大きな手術まで行われます。これらの手術療法はひざの痛みや状態、個々の全身状態や生活様式などを考慮して行っていきます。
関節鏡は半月板損傷や滑膜炎に対して行われます。キズが小さく低侵襲の手術ですが、適応は主に初期の変形性膝関節症に限られます。また骨切りは脛骨というすねの骨のひざに近い方を切って向きを変えO脚を矯正する方法です。人工物と違い、自分の骨で直せますので40~60歳代の世代を中心に手術適応となります。変形が進行した場合には人工関節置換術が適応となります。現在は主にひざの内側のみ換える単顆人工関節と、全部を換える全人工関節の2種類があります。ひざの変形の進行具合によってどちらかが選択されます。人工関節は緩みが問題になることがあるため、60歳以上の高齢の方が適応になることが多いです。

 

ひざの痛みがでてきたら…

まずはお近くの整形外科医にご相談ください。個人個人の状態に合わせて様々な治療を組み合わせて行い、ひざの症状を改善し、歩行能力を改善・維持していきます。
地域の皆さんが元気に歩いて生活できるよう、変形性膝関節症対策をしっかり行っていきましょう!

 

社団法人 佐久医師会

〒385-0052 佐久市原569-7
TEL0267-62-0442 FAX0267-63-3636
http://saku-ishikai.or.jp