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甲状腺の病気 特にバセドウ病の治療、妊娠について

「月刊ぷらざ佐久平 平成24年5月号」掲載

甲状腺疾患は大きく分けて二つあります。甲状腺はホルモンをつくるところなのでホルモンの病気と甲状腺自体に腫瘍ができる病気に分かれます。甲状腺腫瘍は外科の先生が専門で治療します。私は内科医なので主に腫瘍以外の病気を診ております。今回は頻度の高いバセドウ病、妊娠とバセドウ病についてふれてみましょう。

 

日本内分泌代謝科専門医 小林内科クリニック(☎0267-66-0500) 小林 博明 医師

 

甲状腺疾患は成人女性の20人に1人の高頻度に存在する疾病であります。典型例では容易に診断がつきます。しかし、軽症例では意外に見逃されやすい疾患です。
甲状腺ホルモンは、全身の細胞に作用しますので、その人の弱いところに症状が出やすいといわれております。そのため、臨床症状はいろいろあります。甲状腺疾患を見逃さないようにするにはまず疑わないといけません。

甲状腺ホルモンの病気は甲状腺ホルモンの多い、少ないで二つに分かれます。
甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症です。甲状腺機能低下症はほとんど慢性甲状腺炎、別名 橋本病が原因です。血液検査でTSH、F・T4、サイロイドテスト、マイクロゾームテストなどを検査するとわかります。甲状腺機能亢進症は甲状腺中毒症ともいわれます。そのほとんどがバセドウ病です。ほか、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎があります。バセドウ病はTSH、F・T4、抗TSH受容体抗体第三世代(TRab)で診断できます。

バセドウ病の症状

バセドウ病の症状は甲状腺機能亢進症の症状であり、発汗過多、動悸、頭痛、不安、不眠、筋力低下、しびれ、疲労感、生理不順、体重減少、甲状腺の腫れ、眼球突出が見られます。

バセドウ病の治療

バセドウ病の治療は内服療法、外科的治療、放射線治療があります。一般的には内服療法が選ばれます。内服薬は抗甲状腺剤と呼ばれ、MMI(チアマゾール)とPTU(プロピルチオウラシル)があります。治療効果、副作用頻度などからMMIが選択されることが多いです。怖い副作用は無顆粒症であり診断が遅れると命にかかわるものです。
抗甲状腺剤は他の薬剤に比し副作用の頻度が高いため、未治療の患者さんに処方する場合は、はじめの2ヶ月は二週間おきに診察検査をしてもらいます。昔はMMI30㎎から開始といわれていましたが、副作用発現の頻度から、15㎎で開始したほうが良いと最近は言われております。甲状腺機能がかなり亢進している場合は無機ヨード50㎎と併用することが最近推奨されています。

注意喚起妊娠と甲状腺疾患

甲状腺疾患は妊娠可能年齢に多くみられます。妊婦の1000人に1〜3人は甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症を合併すると言われ、潜在性甲状腺機能異常を含めると数パーセントに異常がみられます。
妊娠中のバセドウ病の治療は薬物療法でありますが、催奇形性の観点から妊娠初期はPTUが第一選択であり中期以降はMMIとなります。このことは、表にあります日本甲状腺学会ホームページの抜粋を参照してみましょう。

 

最後に

甲状腺疾患は診断がつけば、難しい病気ではありません。
今回は、一般の方、医療関係者も含めての話でしたので、難しいと思います。バセドウ病の治療、バセドウ病と妊娠に関しては最近の知見を知っていただきたいと思い掲載しました。

 

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