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(2011年6月30日)
「月刊ぷらざ佐久平 平成23年6月号」掲載
食道がん、胃がんは早期がんの段階で発見できればほとんどは治癒可能となっています。しかし自覚症状がないことが多いため早期がんの段階で診断するには定期的な内視鏡検査が必要になります。一方で「胃カメラは苦しいから受けたくない。」という方は多いと思います。従来の口からの胃内視鏡検査の苦痛を軽減するために鼻から挿入する胃カメラ(経鼻胃内視鏡検査)が開発されました。
佐久平ファミリークリニック内科・消化器科(☎0267-88-7200) 木村 雅樹 院長
従来から行われていました胃内視鏡検査では、口から内視鏡スコープを入れて、のどを通過し食道、胃、十二指腸を検査します(図1左)。一方経鼻胃内視鏡検査では、鼻から径の細い内視鏡スコープを入れて、のどを通過し、食道、胃、十二指腸を検査します(図1右)。数年前から徐々に普及してきています。
口からの胃内視鏡検査では内視鏡スコープが舌の付け根を圧迫することになり、吐き気の原因となる咽頭反射をひきおこします。一般に年齢の若い方ほど咽頭反射による吐き気が強くなる傾向があります。一方、経鼻胃内視鏡検査では、舌の付け根を通りませんので、吐き気がおこりにくくなっています。また内視鏡スコープ自体も柔らかいため、圧迫感を感じにくくなっています。経鼻胃内視鏡検査では検査中でも会話が可能です。従って検査中の不安感が軽減されますし、その場で痛みなどを訴えることもできます。検査画面を見ながら、質問することもできます。さらに口からの内視鏡検査と比較して心臓や呼吸に対する負担が少ないので、高齢の方にも適した検査と言えます。経鼻胃内視鏡検査の長所・吐き気、苦痛が少ない・検査中の会話が可能で、不安感が少ない・心臓や呼吸に対する負担が少ない
内視鏡スコープが鼻の粘膜に接触するので鼻の痛み、鼻出血などが起こりえます。これは、鼻の空間が狭い方、とりわけ若い女性に多いようです。しかしながら、鼻の痛みは内視鏡の先端部分が通過するときだけの場合が多く、前処置の局所麻酔で緩和されます。鼻出血も軽いものが多く、ほとんどの場合短時間の圧迫で止血されます。2番目にポリープを切除したり、出血を止めたりする際に使用する処置具の使用に制約があります。ポリープが見つかった場合、その一部をつまみ取ることはできますが、現時点では電気メスを使用できないためポリープ全体の切除はできません。また胃潰瘍などからの出血が見つかった場合も、口からの内視鏡では金属クリップで止血できますが、経鼻胃内視鏡ではクリップを使用できないため止血処置ができません。また口からの内視鏡検査と比較して、検査前の鼻の処置と検査中の内視鏡操作に時間がかかるために、全体として検査時間がやや長くなる傾向があります。最新の経鼻胃内視鏡スコープの画像の解像度は改良されており病変の正確な診断は十分可能になっていますが、それでも口からの内視鏡の画質には及びません。したがって口からの内視鏡でほとんど苦痛を感じない方にはより画質の良い口からの内視鏡をお勧めします。経鼻胃内視鏡検査の短所1.鼻痛、鼻出血2.処置具の制約3.検査時間がやや長い4.画質
口からの内視鏡検査では吐き気が強くでる方。また以前に検査で苦しい経験をしたりして不安感の強い方。健康診断目的で楽に検査を受けたい方。高齢者で肺や心臓のはたらきが低下している方などが良い適応となります。
経鼻胃内視鏡検査では前処置により鼻腔を広げ鼻の粘膜の麻酔も行いますが、それでも鼻腔が狭くどうしてもスコープが通過できない方もまれにいらっしゃいます。鼻腔内の変形が強い方や検査施行時に既に鼻出血が生じている方も検査ができないことがあります。またアスピリンやワーファリンなど血液が固まりにくくなる薬をお飲みの方は医師に相談してください。前処置で局所麻酔薬を使用しますので、麻酔薬に対するアレルギーのある方は向いていません。
現時点ではまだ経鼻胃内視鏡検査を受けられる施設は少ない状況です。インターネットで「経鼻胃内視鏡」で検索をしていただくと、内視鏡メーカーのウェブサイトから検査可能施設の検索ができます。もしくは近隣の医療機関に直接お尋ねいただくのがよいと思われます。胃がんや食道がんの検査と治療はめざましく進歩していますが、依然として胃がんや食道がんで亡くなる人が多いのが現実です。しかし早期に診断できれば完治できることが多いのです。そのためには1年に1回は内視鏡検査を受けることをお勧めします。経鼻胃内視鏡検査では口からの内視鏡検査と比べて苦痛と不安がだいぶ軽減されていますので、多くの人が気軽に検査を受けられることを期待します。
社団法人 佐久医師会〒385-0052 佐久市原569-7TEL0267-62-0442 FAX0267-63-3636http://saku-ishikai.or.jp
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「月刊ぷらざ佐久平 平成23年6月号」掲載
食道がん、胃がんは早期がんの段階で発見できればほとんどは治癒可能となっています。しかし自覚症状がないことが多いため早期がんの段階で診断するには定期的な内視鏡検査が必要になります。一方で「胃カメラは苦しいから受けたくない。」という方は多いと思います。従来の口からの胃内視鏡検査の苦痛を軽減するために鼻から挿入する胃カメラ(経鼻胃内視鏡検査)が開発されました。
佐久平ファミリークリニック内科・消化器科(☎0267-88-7200) 木村 雅樹 院長
経鼻胃内視鏡検査とは
従来から行われていました胃内視鏡検査では、口から内視鏡スコープを入れて、のどを通過し食道、胃、十二指腸を検査します(図1左)。一方経鼻胃内視鏡検査では、鼻から径の細い内視鏡スコープを入れて、のどを通過し、食道、胃、十二指腸を検査します(図1右)。数年前から徐々に普及してきています。
経鼻胃内視鏡検査の長所
口からの胃内視鏡検査では内視鏡スコープが舌の付け根を圧迫することになり、吐き気の原因となる咽頭反射をひきおこします。一般に年齢の若い方ほど咽頭反射による吐き気が強くなる傾向があります。一方、経鼻胃内視鏡検査では、舌の付け根を通りませんので、吐き気がおこりにくくなっています。また内視鏡スコープ自体も柔らかいため、圧迫感を感じにくくなっています。経鼻胃内視鏡検査では検査中でも会話が可能です。従って検査中の不安感が軽減されますし、その場で痛みなどを訴えることもできます。検査画面を見ながら、質問することもできます。さらに口からの内視鏡検査と比較して心臓や呼吸に対する負担が少ないので、高齢の方にも適した検査と言えます。
経鼻胃内視鏡検査の長所
・吐き気、苦痛が少ない
・検査中の会話が可能で、不安感が少ない
・心臓や呼吸に対する負担が少ない
経鼻胃内視鏡検査の短所
内視鏡スコープが鼻の粘膜に接触するので鼻の痛み、鼻出血などが起こりえます。これは、鼻の空間が狭い方、とりわけ若い女性に多いようです。しかしながら、鼻の痛みは内視鏡の先端部分が通過するときだけの場合が多く、前処置の局所麻酔で緩和されます。鼻出血も軽いものが多く、ほとんどの場合短時間の圧迫で止血されます。2番目にポリープを切除したり、出血を止めたりする際に使用する処置具の使用に制約があります。ポリープが見つかった場合、その一部をつまみ取ることはできますが、現時点では電気メスを使用できないためポリープ全体の切除はできません。また胃潰瘍などからの出血が見つかった場合も、口からの内視鏡では金属クリップで止血できますが、経鼻胃内視鏡ではクリップを使用できないため止血処置ができません。また口からの内視鏡検査と比較して、検査前の鼻の処置と検査中の内視鏡操作に時間がかかるために、全体として検査時間がやや長くなる傾向があります。最新の経鼻胃内視鏡スコープの画像の解像度は改良されており病変の正確な診断は十分可能になっていますが、それでも口からの内視鏡の画質には及びません。したがって口からの内視鏡でほとんど苦痛を感じない方にはより画質の良い口からの内視鏡をお勧めします。
経鼻胃内視鏡検査の短所
1.鼻痛、鼻出血
2.処置具の制約
3.検査時間がやや長い
4.画質
経鼻胃内視鏡検査に向いている人
口からの内視鏡検査では吐き気が強くでる方。また以前に検査で苦しい経験をしたりして不安感の強い方。健康診断目的で楽に検査を受けたい方。高齢者で肺や心臓のはたらきが低下している方などが良い適応となります。
経鼻胃内視鏡検査に不向きな人
経鼻胃内視鏡検査では前処置により鼻腔を広げ鼻の粘膜の麻酔も行いますが、それでも鼻腔が狭くどうしてもスコープが通過できない方もまれにいらっしゃいます。鼻腔内の変形が強い方や検査施行時に既に鼻出血が生じている方も検査ができないことがあります。またアスピリンやワーファリンなど血液が固まりにくくなる薬をお飲みの方は医師に相談してください。前処置で局所麻酔薬を使用しますので、麻酔薬に対するアレルギーのある方は向いていません。
最後に
現時点ではまだ経鼻胃内視鏡検査を受けられる施設は少ない状況です。インターネットで「経鼻胃内視鏡」で検索をしていただくと、内視鏡メーカーのウェブサイトから検査可能施設の検索ができます。もしくは近隣の医療機関に直接お尋ねいただくのがよいと思われます。胃がんや食道がんの検査と治療はめざましく進歩していますが、依然として胃がんや食道がんで亡くなる人が多いのが現実です。しかし早期に診断できれば完治できることが多いのです。そのためには1年に1回は内視鏡検査を受けることをお勧めします。経鼻胃内視鏡検査では口からの内視鏡検査と比べて苦痛と不安がだいぶ軽減されていますので、多くの人が気軽に検査を受けられることを期待します。
社団法人 佐久医師会
〒385-0052 佐久市原569-7
TEL0267-62-0442 FAX0267-63-3636
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