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(2016年8月1日)
JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター 循環器内科 (☎0267-62-8181) 堀込 実岐 医師
『大動脈弁狭窄症』とは?
心臓の内部には4つの逆流防止弁(大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁)があり、心臓の中を通る血液が逆戻りせず、一方向に進むような仕組みになっています。心臓弁膜症とは、心臓の中にある逆流防止弁が正しく機能せず、本来の役割を果たせなくなった状態のことです。逆流防止弁が硬くなり、開きが悪くなった状態が『狭窄症』、逆に逆流防止弁の閉まりが悪くなり、血液が逆戻りしてしまうのが『閉鎖不全症』です。近年増えてきている『大動脈弁狭窄症』は、左心室と大動脈の間にある大動脈弁が多くの場合、動脈硬化によって硬くなり、開きが悪くなる病気です。例外として、通常大動脈弁は3枚の膜でできていますが、生まれつき2枚の膜でできている(先天性大動脈弁二尖弁)ことにより起こる大動脈弁狭窄症もあり、これは若年や中年で発症する場合もあります。75歳以上では2・5%、85歳以上では8・1%の人に『大動脈弁狭窄症』があると言われています。 『大動脈弁狭窄症』は、軽症のうちは自覚症状がありません。いよいよ重症になると息切れや呼吸困難、むくみなどの心不全の症状や胸痛、動悸などが出現します。突然気を失って倒れる(失神)こともあります。怖ろしいことに、このような症状が出てきた場合、平均生存期間は2年から5年とされ、多くは突然死による死亡であるとされています。 ではこの病気を早期に見つけるにはどうしたらよいでしょうか。それは健診や普段の診察で胸に聴診器をあてて心臓の音を聞いてもらうことです。弁膜症がある程度進むと心臓に雑音がありますので、これを見つけてもらうことで早期発見ができると思います。心臓に雑音があるとなったら、心臓超音波検査を受けましょう。この検査をすると心臓のどの弁にどの程度の異常があるのか診断をはっきりさせることができます。聴診も心臓超音波検査もどちらとも痛みもなく、身体に負担もかからず行うことができますのでお気軽に受けていただくことをお勧めします。
『大動脈弁狭窄症』の治療
大動脈弁狭窄症の治療にはどのようなものがあるでしょうか。今のところ、この病気の進行を止める薬はありません。病状が進行し、症状が出てきた場合には症状をとるような薬で対症療法を行います。しかし、薬だけの治療では、症状を少し楽にすることはできますが、2〜5年とされている平均生存期間をのばすことはできません。根治的な治療法は硬くなった弁を新しい人工弁に交換してもらう心臓手術になります。自分の心臓を止めている間に手術を行うため、人工心肺装置を使う大手術で、時間も5〜6時間かかります。高齢者では負担が大きいということで、これまで手術が必要だができない患者さんが多くいらっしゃいました。そこで、従来どおりの心臓手術が難しい高齢者のために開発された治療が、経カテーテル大動脈弁留置術(Transcatheter aortic valve implantation; TAVI)です。
経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)
TAVI(タビ)はカテーテルを用いて硬くなり開きが悪くなった大動脈弁部に新しい人工弁をおいてくる治療で、経カテーテル大動脈弁置換術(Transcatheter aortic valve replacement; TAVR)と呼ばれる場合もあります。カテーテルは足のつけねの血管から入れる場合が多いですが、足の血管につまりがある場合や、血管が細い場合には、左胸部を開いて心臓の先から入れる場合、鎖骨の裏の血管から入れる場合などがあります。これまでの心臓手術とは異なり、小さな創で、自分の心臓を止めることなく、2〜3時間程度の短い時間での治療が可能となりました。全身麻酔で行う場合が多いですが、症例によっては局所麻酔で行う場合もあります。 日本では2013年10月より保険適用となっています。当院でも2015年6月からこの治療を開始し、現在30名余りの患者さまに治療を行いました。長野県内でこの治療が行えるのは現時点では当院のみのため、県内から広く患者さまが来院されています。ご興味のある方、TAVIを希望される方はかかりつけ医とご相談の上、ご来院下さいますようお願いいたします。
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佐久市は平均寿命が男性全国15位(81.7歳)、女性19位(88.0歳)、特に女性は長野県内1位となり、男女ともに長寿のまちとなっています。高齢者が増えるに伴い、動脈硬化によって起こる『大動脈弁狭窄症』という弁膜症が増えています。これまでは心臓手術しか治す方法がありませんでしたが、心臓手術は高齢者には負担が大きく、手術できないことも多くありました。そこで2013年からカテーテルによる治療が行われるようになり、高齢者でも負担が少ない治療が可能となっています。今回はこの治療についてお話ししたいと思います。
JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター 循環器内科 (☎0267-62-8181) 堀込 実岐 医師
『大動脈弁狭窄症』とは?
心臓の内部には4つの逆流防止弁(大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁)があり、心臓の中を通る血液が逆戻りせず、一方向に進むような仕組みになっています。心臓弁膜症とは、心臓の中にある逆流防止弁が正しく機能せず、本来の役割を果たせなくなった状態のことです。逆流防止弁が硬くなり、開きが悪くなった状態が『狭窄症』、逆に逆流防止弁の閉まりが悪くなり、血液が逆戻りしてしまうのが『閉鎖不全症』です。近年増えてきている『大動脈弁狭窄症』は、左心室と大動脈の間にある大動脈弁が多くの場合、動脈硬化によって硬くなり、開きが悪くなる病気です。例外として、通常大動脈弁は3枚の膜でできていますが、生まれつき2枚の膜でできている(先天性大動脈弁二尖弁)ことにより起こる大動脈弁狭窄症もあり、これは若年や中年で発症する場合もあります。75歳以上では2・5%、85歳以上では8・1%の人に『大動脈弁狭窄症』があると言われています。
『大動脈弁狭窄症』は、軽症のうちは自覚症状がありません。いよいよ重症になると息切れや呼吸困難、むくみなどの心不全の症状や胸痛、動悸などが出現します。突然気を失って倒れる(失神)こともあります。怖ろしいことに、このような症状が出てきた場合、平均生存期間は2年から5年とされ、多くは突然死による死亡であるとされています。
ではこの病気を早期に見つけるにはどうしたらよいでしょうか。それは健診や普段の診察で胸に聴診器をあてて心臓の音を聞いてもらうことです。弁膜症がある程度進むと心臓に雑音がありますので、これを見つけてもらうことで早期発見ができると思います。心臓に雑音があるとなったら、心臓超音波検査を受けましょう。この検査をすると心臓のどの弁にどの程度の異常があるのか診断をはっきりさせることができます。聴診も心臓超音波検査もどちらとも痛みもなく、身体に負担もかからず行うことができますのでお気軽に受けていただくことをお勧めします。
『大動脈弁狭窄症』の治療
大動脈弁狭窄症の治療にはどのようなものがあるでしょうか。今のところ、この病気の進行を止める薬はありません。病状が進行し、症状が出てきた場合には症状をとるような薬で対症療法を行います。しかし、薬だけの治療では、症状を少し楽にすることはできますが、2〜5年とされている平均生存期間をのばすことはできません。根治的な治療法は硬くなった弁を新しい人工弁に交換してもらう心臓手術になります。自分の心臓を止めている間に手術を行うため、人工心肺装置を使う大手術で、時間も5〜6時間かかります。高齢者では負担が大きいということで、これまで手術が必要だができない患者さんが多くいらっしゃいました。そこで、従来どおりの心臓手術が難しい高齢者のために開発された治療が、経カテーテル大動脈弁留置術(Transcatheter aortic valve implantation; TAVI)です。
経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)
TAVI(タビ)はカテーテルを用いて硬くなり開きが悪くなった大動脈弁部に新しい人工弁をおいてくる治療で、経カテーテル大動脈弁置換術(Transcatheter aortic valve replacement; TAVR)と呼ばれる場合もあります。カテーテルは足のつけねの血管から入れる場合が多いですが、足の血管につまりがある場合や、血管が細い場合には、左胸部を開いて心臓の先から入れる場合、鎖骨の裏の血管から入れる場合などがあります。これまでの心臓手術とは異なり、小さな創で、自分の心臓を止めることなく、2〜3時間程度の短い時間での治療が可能となりました。全身麻酔で行う場合が多いですが、症例によっては局所麻酔で行う場合もあります。
日本では2013年10月より保険適用となっています。当院でも2015年6月からこの治療を開始し、現在30名余りの患者さまに治療を行いました。長野県内でこの治療が行えるのは現時点では当院のみのため、県内から広く患者さまが来院されています。ご興味のある方、TAVIを希望される方はかかりつけ医とご相談の上、ご来院下さいますようお願いいたします。