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蜂刺症

「月刊ぷらざ佐久平 平成25年9月号」掲載

小口 真司 医師蜂に刺されやすい季節がやってきました。多くの人は、1回や2回は蜂に刺されたことがあると思います。蜂に刺されると、刺された部位が腫れて痛みが生じ、数日程度で腫れや痛みは治ります。しかし一部の人は、アナフィラキシーショックという重篤なアレルギー症状を引き起こすことが知られています。今回は、この蜂刺されについてお話します。

 

佐久総合病院 皮膚科
小口 真司 部長

 

図1人を刺す蜂の種類は?
蜂の仲間は、全世界で15万種類おり、そのうち5000種類が日本に生息しています。人を刺す蜂は、社会性蜂類と言われ、スズメバチ類、アシナガバチ類、ミツバチ類、マルハナバチ類の4種類が知られています。通常蜂は、人を攻撃することはありませんが、気付かずに蜂の巣に近づいたり、手で振り払おうとする時に刺されます(図1)。蜂に刺された時に強い痛みが生じるのは、蜂毒の成分に刺激性の強いアミン類やキニンなどの低分子ペプチド、酵素類などが含まれているからです。

 

蜂刺症の症状は?

刺される部位で最も多いのは手で、特に効き手が多いとされています。これは、効き手で蜂を払いのけようとして刺されるためと考えられます。また顔面、頭部も蜂に刺されやすい部位です。蜂に刺された部位は、赤く大きく腫れて、ジンジンした痛みや、時にかゆみを生じます。また、皮膚の神経の近くを刺されると、しびれ感を生じることもあります。蜂に刺された当日は軽く腫れるだけのことが多いのですが、最も腫れるのは刺された翌日から2日後です。その後、腫れは徐々に軽快します。通常刺した針は、蜂が人から離れる時に抜けますが、まれに刺し口に残ることがあります。

 

ショック症状を引き起こすことも

蜂に刺された直後に、めまいや呼吸苦、意識障害などが生じるアナフィラキシーショックと呼ばれる重篤なアレルギー症状を起こす人がいます。この症状は、前述の蜂毒の成分によって血圧が低下するために起こります。この症状で毎年命を落とす人が後を絶ちません。ショック症状は、通常蜂に刺されてから15分~30分以内に生じるとされています。また、過去に蜂刺されによるショック症状を生じた人が、次回蜂に刺された際に、ショック症状を引き起こす確率は、約50%とされています。

 

蜂刺症の治療は?

蜂に刺された患部は、濡れタオルなどで冷やしましょう。通常はこの処置で4~5日程度で症状は改善します。もし患部がひどく腫れてしまったら、お近くの皮膚科開業医の先生に診てもらいましょう。ステロイド外用剤などですみやかに軽快します。ショック症状を生じてしまったら、すぐに救急車を要請して下さい。ただし刺されてしまった人が慌てて動くと、アレルギー症状を増悪させてしまうことがありますので、その場で安静にして携帯電話などを使用するか、あるいは近くの人に助けを求めて下さい。アナフィラキシーショックは、血圧を上昇させる注射薬などで治療されます。

 

図2

蜂刺症の予防は?

最も大事な予防は、蜂に刺されないことに尽きます。蜂の巣には極力近づかないようにしましょう。蜂の習性は、刺激の強い匂いに敏感で、黒色のもの(頭髪や目など)を目標として攻撃してきますので、ヘアースプレー、香水などは避け、服装は肌の露出を少なくして、白色や黄色などの衣類や帽子を身につけるようにしましょう(図2)。また、蜂の眼は頭部の上についているため、下方向を感知しづらいとされていますので、もし蜂の巣などに遭遇してしまい、蜂に襲われたら姿勢を低くして、急いで逃げるようにしましょう。家の中に蜂が入ってきたら、図3明るい方向に向かう習性がありますので、部屋の中を暗くして窓を開けて、そこから逃がすようにしましょう。洗濯物や干したふとんで休んでいる蜂もいますので、蜂の有無をチェックしてから取り込むようにしましょう。また、以前にアナフィラキシーショックを生じたことがある人は、エピペンという血圧を上昇させる自己注射器を携帯していると安心です(図3)。エピペンは、処方認定を受けた病院や医院の医師に処方してもらえます。

 

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