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まぶたの重さ・垂れ下がり と頭痛・肩こり

「月刊ぷらざ佐久平 平成23年5月号」掲載

「年のせいでしょうか。最近、まぶたが重くなってきた気がします。」「上が見えにくく、まぶたがかぶさっているので、目を開けているのがつらくなります。」このような症状は、まぶたが下がって開きにくくなる、眼瞼下垂症という病気が原因です。「年のせいだから」と言ってあきらめている方も多いと思われます。しかし、「保険適応の形成手術で治せる」ということは、まだあまり知られていないようです。

 

しのはら形成・皮ふクリニック(☎0267-67-8825) 篠原 洋 院長


篠原 洋 院長

眼瞼下垂症とは

最近、この病気は、頭痛や肩こりとも関係があることが分かってきました。これは、まぶたの手術を行った患者さんから「頭痛がよくなった。」という話をいただくことが多く、その後の研究で理由が明らかとなってきました。皆さんの中には、仕事や学校に行かれないほどではないけれど、日頃から頭痛、肩こり、目の奥の痛みに悩まされている方、病院でCTやMRIも撮ってもらったが「異常ありません」と言われて薬を飲み続けている方がいらっしゃると思います。「頭痛・肩こり・樋口一葉」で有名な樋口一葉も、そのまぶたの形を観察してみると、眼瞼下垂症が原因で頭痛・肩こりで悩んでいたと思われます。(図1)

頭痛・肩凝り・樋口一葉

頭痛、肩こりのある方で、下記に挙げる症状があれば、その頭痛、肩こりは「まぶたが重く、開きにくい」ことと、関係がある可能性があります。

□いつも眠そうな顔だと言われる。
□写真を撮るとき必ず「あごを引いて」と言われる。
□車を運転していると、頭や首の後ろが痛くなってくる。
□眉毛と目の間が離れている、または離れてきた。
□二重(ふたえ)の幅が以前より広がってきた。または、二重(ふたえ)の線がいくつもある。
□まぶたが重く感じる、皮がたるんでいる。
□目を開けるとまゆ毛が挙がり、額に皺がよる。

図2少々詳しい話をしますと、まぶたの開け閉めは、上眼瞼挙筋という筋肉が縮んだり、緩んだりして行われています。この筋肉の先端は、腱膜と呼ばれる膜状になっていて、まぶたの縁の瞼板という硬い部分に付着しています。ところが、この腱膜が瞼板からゆるんだり外れてしまうと、上眼瞼挙筋の収縮だけではまぶたが開きにくくなってしまいます(図2)。この状態を腱膜性眼瞼下垂症といいます。特に、まぶたを擦る癖のある人(アトピー、逆さまつげなど)、コンタクトレンズをしている人などは、まぶたを上げる筋肉の端がゆるみやすく、年齢が進むにつれて目が開きにくくなります。これを補うため、額の筋肉を使って眉毛を挙げるようになったり、首、肩の筋肉を無意識に収縮させて、顎を前に出すようになったりします。まぶたには、上眼瞼挙筋のほかに、ミュラー筋という筋肉があります。上眼瞼挙筋だけでまぶたが開かなくなると、眼瞼挙筋に付随しているミュラー筋を収縮させてまぶたを上げようとします。ミュラー筋を収縮させるためには交感神経を入れる必要があります。つまり、腱膜性眼瞼下垂症になると、常に交感神経を緊張させていることになり、通常は物を見上げる時や、びっくりした時にしか収縮しない額や肩、首の筋肉が、無意識に収縮するようになります。そのため、頭痛・肩こりが生じ、人によっては便秘、手足の冷えなどの自律神経症状を引き起こす場合があります(もちろん前頭筋や、首、肩の筋肉は意識的にも動かせます)。

図3手術について

手術の目的は、努力しないでまぶたが開いていられる状態にすることです。手術は局所麻酔で行われます。たるんだ分のまぶたの皮膚を切除し、腱膜の一部である眼窩隔膜を切開して、瞼板前面の適切な位置に戻し、糸で縫合するという方法です(図3)。これにより上眼瞼挙筋の力でまぶたを挙げることができるようになります。また、ミュラー図4筋にかかっていた過剰な負荷が少なくなり、顔や体、精神の緊張症状が改善するという効果もあります。 個人差がありますが、術後はまぶたに腫れが生じます。2週間程度でだいぶ落ち着いてきますが、完全に腫れがひくまでには2ヶ月程度、かかります。術後は二重まぶたになりますので、目元の印象が変わることがあります(図4)。

白内障や膝の関節症と同じように、まぶたの垂れ下がりも年とともに進んできます。頭痛や肩こりの原因になることもあり、潜在的な患者さんは非常に多いと考えています。

 

 

 

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