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子宮頸がん検診の現状と実際

「月刊ぷらざ佐久平 平成23年12月号」掲載

太田医長集団検診としての子宮頸がん検診は日本では1960年代から行われてきました。体の中で最も初期の段階で見つけることができるがんであるにもかかわらず検診を受診しなければ早期発見ができません。近年、若年から性交渉の機会が増えてきたためにヒトパピローマウイルス感染が原因の子宮頸がんを発症する20代、30代の人が増えています。子宮頸がん検診を若い人に受けていただき初期の病変で発見することができれば不幸な子宮摘出をしなくて済むのです。

佐久市立国保浅間総合病院 産婦人科(☎0267-67-2295) 太田 雄治郎 医長

 

子宮頸がん検診の受診率

日本では、産婦人科の子宮頸がん検診はバス健診による集団検診が古くからおこなわれて来ました。1961年に宮城県で始まり、次第に全国に展開するようになりました。そして世界に先駆けての大規模検診で子宮頸がんによる死亡の減少が見られることが示されました。しかし、有効性が示されたものの検診率が伸び悩んでおり、組織的大規模検診を我が国より遅れて開始した欧米諸国に検診率ははるかに追い抜かれてしまっています。検診率が最も高いのはアメリカで80%を超えています。アメリカでは子宮頸がん検診を受けないと連絡が来るような仕組みになっています。なぜここまで徹底しているのでしょうか?理由は子宮頸がん検診によるがん死の抑制効果がはっきりしているからです。日本の子宮頸がん検診受診率は20%台にとどまっています。高い自治体でも30%程度です。今年になって子宮頸がんワクチンの公費による接種が始まり一般の人の関心が高まってきているので子宮頸がん検診の受診率の上昇が期待されます。

子宮頸がん検診を受けるには

では、がん検診を受けるにはどうしたらよいでしょうか?日本では自治体が実施している住民健診を受けると自治体から補助が受けられます。自治体にもよりますが1000〜2000円で子宮頸がん検診が受けられます。20歳から始まり偶数年齢に実施するところが多く、2年ごとの検診です。受けられる病院が決まっていたり、日程が限られていることもありますので広報を見たり市町村に問い合わせをしてください。また、政府広報によると平成21年度の補正予算によって一定年齢(乳がんは40歳、子宮頸がんは20歳)に達した女性に無料クーポン券が配布されるようになりました。20歳より5年ごとに40歳まで子宮頸がん検診の無料クーポン券が送付され、乳がん検診の無料クーポン券は40歳より5年ごとに60歳まで送付されることになっています。働いている方は会社で健康診断を受ける際にぜひ子宮頸がん検診を一緒に受診してください。また、住民健診や健康診断とは別に、婦人科などで子宮頸がん検診を受けることもできます。症状がない場合、費用は全額自己負担となるため、住民健診などより割高です。ただし、出血などの症状がある場合には保険診療になりますのでぜひ受診してください。

子宮頸がんワクチンと検診

今年から子宮頸がんワクチンの公費による接種が開始されました。佐久市では平成23年度は中学1年から高校3年までの女子が接種対象になっていました(来年からは変わる可能性があります)。それでは何歳くらいまでの方に接種が勧められているのでしょうか?日本産科婦人科学会では最も推奨されるのは10から14歳、次に推奨されるのは15から27歳、そして28から45歳に推奨するとなっています。公費による助成が受けられない年齢の方は3回の接種で約5万円かかります。気を付けなくてはいけないのはワクチンを接種したから一生子宮頸がんにならないとは言えないことです。子宮頸がんワクチンで予防できるのは子宮頸がん全体の60%程度と言われています。現在接種されているワクチンでは原因となるウイルス約20種類のうち2種類しか免疫ができないからです。したがって子宮頸がんの予防にはワクチンだけでは完全ではなく、子宮頸がん検診が必要なのです。

検診の特徴・手順

子宮頸がん検診はほかの臓器のがん検診とは異なり、発生しやすい部分を医師が直接観察して細胞や組織を採取してきます。内視鏡や超音波を使う検診とは異なりそれほどの熟練は必要なく、がん検診の知識のある産婦人科医師ならば外来ですぐに行うことができます。また、がん検診を受診していれば前がん状態や初期のがんの状態で発見することができます。ほかの臓器のがん検診では腫瘍が塊として数㎝以上なければ発見できないものがほとんどなのに子宮頸がん検診では、病気の発生しやすいところを直接見て、擦過することができるのです。もちろん例外はあり、特殊ながんで見つけにくいものもあります。子宮頸部を綿棒、ヘラ、ブラシなどで擦過してスライドグラスに塗布し、細胞を顕微鏡で観察するのが細胞診です。子宮口を擦過するので少量の出血が起こることがあります。痛みはほとんどありません。これで異常が見つからなければ子宮頸がん検診はこれで終わりです。細胞診で異常が見つかるとコルポスコープという子宮頸部を拡大して観察する機械を使って1−2㎜角くらいの組織を採取します。これが組織診です。これを標本にして顕微鏡で観察、病理の専門医にがんかどうか診断してもらいます。組織診をおこなうときには人によって痛みを感じる場合があります。出血が起こることがあるので止血操作をする場合があります。
精密検査を必要としなければほとんど痛みはなく終了します。初期の病変で見つかれば子宮摘出をしなくてすみます。簡単に予防できる子宮頸がんの検診をぜひ受けてください。

 

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