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(2012年10月31日)
「月刊ぷらざ佐久平 平成24年11月号」掲載
医療法人 雨宮病院 整形外科(☎0267-82-5311) 池田 正典 医師
歩行によって下肢のダルさ・重さ・疼痛(とうつう)などが出現して歩けなくなり、一定時間休憩することによって再び歩けるようになる症状を“間歇性跛行”といいます。間歇性跛行は、腰部脊柱管狭窄症(lumber spinal canal stenosis:LSS)に代表される神経性疾患と、末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)に代表される血管性疾患によって、主として起こります。LSSは主に整形外科、PADは血管外科もしくは循環器内科が担当する事となります。
閉塞性動脈硬化症ともいい、四肢の主要動脈が動脈硬化性の変化により、狭窄(きょうさく)・閉塞を起こし、血流障害を起こした状態で、間歇性跛行の他に、下肢の冷感・しびれ・レイノー症状といった症状が出現します。重症となってくると、安静時痛や潰瘍(かいよう)・壊死(えし)などが現れます。
LSSは高齢者に罹患率の高い疾患で、腰椎後方の神経が、骨や軟部組織による圧迫のため障害され、下肢・臀部(でんぶ)の疼痛・しびれ、といった症状が出現します。神経の障害が強いと、下肢の麻痺や膀胱直腸障害などが現れます。
1.姿勢因子神経性と血管性を見分けるのに最も有用な身体症状は、姿勢因子の有無となります。LSSの場合、前屈したり、しゃがみ込んだりすると下肢症状が軽快するという症状で、前屈で脊柱管の狭窄が減少することによる変化です。歩行では下肢症状が現れますが、自転車では現れないというのも、これと同様の機序となります。PADでは、姿勢による変化はありません。
2.立位負荷LSSの場合は立位のみで下肢症状が誘発されますが、PADの場合は歩行の負荷により、初めて下肢症状が出現します。
3.下肢動脈の脈拍腸骨動脈・膝窩動脈・後脛骨動脈・足背動脈の脈拍に、消失・減弱といった異常があればPAD、異常がなければLSSが支持されます。
4.下肢症状の発現部位腓腹部(ふくらはぎ)に限局する疼痛は、PADに比較的特徴的な症状です。一方、LSSでは、臀部から下肢後~側面を通り、足へと至る痛み・しびれ・ほてり・脱力などの症状が認められます。
ABI(両側の下肢・上肢血圧比:ankle brachial pressure index)検査下肢の動脈閉塞の有無をチェックする検査で、特にPADの検査には有用です。ABI≦0.9であればPADと診断でき、0.9<ABI≦1.4であれば、画像診断や運動後ABIの測定で、PADと診断、または否定します。
PAD軽症例では、薬物治療(抗血小板薬等)が一般的です。薬物治療では症状が改善できない場合には、血管内治療やバイパス手術などの血行再建術が必要となります。
LSS軽症例では、薬物治療(プロスタグランディンE1製剤等)、また種々の理学療法(リハビリ)やブロック療法を行います。症状が改善しない場合は、脊柱管の手術が必要となる事があります。
歩行による下肢の痛み・ダルさといった症状は、大部分は筋肉の疲れや筋力低下によるものですので、基本的には問題ありません。しかし、これまで述べた様に、神経性疾患や血管性疾患からの症状である事もありますので、症状が続くようでしたら、医療機関への受診をお勧めします。
社団法人 佐久医師会〒385-0052 佐久市原569-7TEL0267-62-0442 FAX0267-63-3636http://saku-ishikai.or.jp
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「月刊ぷらざ佐久平 平成24年11月号」掲載
歩行によって、下肢に痛みやダルさ・シビレが現れてくるのは、もちろん、筋肉の疲れや筋力低下によるものが大部分なのですが、 ある疾患の症状である、“間歇性跛行(かんけつせいはこう)”であることがあります。
医療法人 雨宮病院 整形外科(☎0267-82-5311) 池田 正典 医師
間歇性跛行とは
歩行によって下肢のダルさ・重さ・疼痛(とうつう)などが出現して歩けなくなり、一定時間休憩することによって再び歩けるようになる症状を“間歇性跛行”といいます。
間歇性跛行は、腰部脊柱管狭窄症(lumber spinal canal stenosis:LSS)に代表される神経性疾患と、末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)に代表される血管性疾患によって、主として起こります。
LSSは主に整形外科、PADは血管外科もしくは循環器内科が担当する事となります。
末梢動脈疾患(PAD)
閉塞性動脈硬化症ともいい、四肢の主要動脈が動脈硬化性の変化により、狭窄(きょうさく)・閉塞を起こし、血流障害を起こした状態で、間歇性跛行の他に、下肢の冷感・しびれ・レイノー症状といった症状が出現します。
重症となってくると、安静時痛や潰瘍(かいよう)・壊死(えし)などが現れます。
腰部脊柱管狭窄症(LSS)
LSSは高齢者に罹患率の高い疾患で、腰椎後方の神経が、骨や軟部組織による圧迫のため障害され、下肢・臀部(でんぶ)の疼痛・しびれ、といった症状が出現します。
神経の障害が強いと、下肢の麻痺や膀胱直腸障害などが現れます。
神経性・血管性を見分けるのに有用な症状
1.姿勢因子
神経性と血管性を見分けるのに最も有用な身体症状は、姿勢因子の有無となります。
LSSの場合、前屈したり、しゃがみ込んだりすると下肢症状が軽快するという症状で、前屈で脊柱管の狭窄が減少することによる変化です。
歩行では下肢症状が現れますが、自転車では現れないというのも、これと同様の機序となります。
PADでは、姿勢による変化はありません。
2.立位負荷
LSSの場合は立位のみで下肢症状が誘発されますが、PADの場合は歩行の負荷により、初めて下肢症状が出現します。
3.下肢動脈の脈拍
腸骨動脈・膝窩動脈・後脛骨動脈・足背動脈の脈拍に、消失・減弱といった異常があればPAD、異常がなければLSSが支持されます。
4.下肢症状の発現部位
腓腹部(ふくらはぎ)に限局する疼痛は、PADに比較的特徴的な症状です。
一方、LSSでは、臀部から下肢後~側面を通り、足へと至る痛み・しびれ・ほてり・脱力などの症状が認められます。
ABI(両側の下肢・上肢血圧比:ankle brachial pressure index)検査
下肢の動脈閉塞の有無をチェックする検査で、特にPADの検査には有用です。
ABI≦0.9であればPADと診断でき、0.9<ABI≦1.4であれば、画像診断や運動後ABIの測定で、PADと診断、または否定します。
治療
PAD
軽症例では、薬物治療(抗血小板薬等)が一般的です。
薬物治療では症状が改善できない場合には、血管内治療やバイパス手術などの血行再建術が必要となります。
LSS
軽症例では、薬物治療(プロスタグランディンE1製剤等)、また種々の理学療法(リハビリ)やブロック療法を行います。
症状が改善しない場合は、脊柱管の手術が必要となる事があります。
おわりに
歩行による下肢の痛み・ダルさといった症状は、大部分は筋肉の疲れや筋力低下によるものですので、基本的には問題ありません。
しかし、これまで述べた様に、神経性疾患や血管性疾患からの症状である事もありますので、症状が続くようでしたら、医療機関への受診をお勧めします。
社団法人 佐久医師会
〒385-0052 佐久市原569-7
TEL0267-62-0442 FAX0267-63-3636
http://saku-ishikai.or.jp