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帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛

「月刊ぷらざ佐久平 平成23年11月号」掲載

田村真院長
ペインクリニックって?
ペイン:pain=痛み クリニック:clinic=診療所で「痛みの診療所」と言う意味です。
痛みのために命にかかわる事はありませんが、自分の痛みはまわりには理解してもらいにくく、他の人と比較する事も共有する事も出来ません。このように、痛みのために辛い思いをしないために、これを専門に診断治療する医学の分野をペインクリニック科と言います。そのなかで、代表的な病気の1つ、帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛を紹介します。

 

たむらペインクリニック(☎0267-82-3981) 田村 真 院長

 

帯状疱疹帯状疱疹とは

だれでも子供の頃に水ぼうそうにかかったことがあると思います。水痘ヘルペスウイルスに感染する事により発病します。2週間ぐらいで治ってしまいます。「おたふくかぜ」や「はしか」と同様に一度かかると免疫が出来て、二度かからない事は、ご存知と思います。しかし、水ぼうそうのウイルスは、水ぼうそうが完全に治ってからも体の神経の中に潜んでしまい、ずーっと成りを潜めています。年齢を重ねたり、病気になったり、季節の変わり目で体が疲れたりして抵抗力が落ちてきた時などに、ここぞとばかりに潜んでいる神経を伝わって皮膚にいっせいに出てきます。何の原因もないのに、いきなり背中や顔、足が夜も眠れないくらい痛くなり、1〜3日ほど経つと今度は、その痛い場所に合わせて、独特な小さな水膨れが帯状に、しかも決まったように体の左右のどちらか一方に出てきます。(写真1、2:原本転載可)

●かかりやすい年齢
60歳前後を中心に45歳以上の年齢でよく見られます。しかし、過労、病気などで体が弱っているとそれよりも若い方でもなる事があります。

●どこに出来るか
胸部や背中が最も多く、顔、頭部も出来やすい場所です。

●発症したときの治療
まず、第一にウイルスの増殖を抑える薬:抗ヘルペスウイルス薬を内服します。5日から1週間程度服用してもらいます。痛みも、皮疹も段々に治って行きます。又、痛みが強い場合、鎮痛薬もいっしょに服用します。あまりにひどく体力が低下した時は、入院して点滴で投薬することもあります。それでも痛みがとれず、神経ブロック治療を行う場合もあります。そして、次に説明します帯状疱疹後神経痛にならないためにも、出来るだけ早くきちんと治療する事が大事です。

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹は、2〜3週間ぐらいで皮膚の腫れや痛みも引いて治ってしまうのですが、なかには痛みだけがなかなか良くならないで激痛が尾を引く事があります。それを、帯状疱疹後神経痛と言います。帯状疱疹になった人が、すべてなるわけではないのですが、とっても痛くて大変です。これには、なりやすい人がいます。まずは、1.年齢が65歳以上、2.たいへんひどい帯状疱疹の皮疹が出来てしまった場合です。また、3.帯状疱疹になった時、夜も眠れないくらいの痛さが続いた場合、4.抗ヘルペスウイルス薬を飲んでも痛みが軽くならない場合、帯状疱疹後神経痛になってしまう場合が多いようです。この痛みは厄介なもので、一日中休むまもなく続き、ひどい場合は、年単位で続く事もあります。治療は、いろいろな種類の内服薬や神経ブロック治療などを組み合わせて行います。内服薬も、鎮痛薬ばかりでなく、うつ病の薬やけいれんの薬をうまく組み合わせて使います。
いずれにしても、早く治療する事が大事ですので、我慢していないで、かかりつけ医に相談してみてください。
帯状疱疹にかかってしまった時の日常生活は、体をゆっくり休め、睡眠と栄養を十分にとる事が大事です。また、痛みに寒さが堪えますので、患部や体を暖める工夫をしましょう。

最後に良く聞かれる事ですが、帯状疱疹のウイルスが移って他の人が帯状疱疹になる事はありません。しかし、帯状疱疹のウイルスは、水ぼうそうのウイルスと同じですから、水ぼうそうにかかった事のない免疫を持っていない子供に移って水ぼうそうになる事はあります。ただし、移る時期は限られていて、帯状疱疹が水膨れの時だけです。かさぶたになってしまえば移りません。また、ふつう帯状疱疹は、2回はかかりません。ごくまれに、2回、3回とかかる人がいますが、普通は1回と思っていただいてけっこうです。

 

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