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「透析患者さんの日常生活」 *どうすれば快適に過ごせるか*

「月刊ぷらざ佐久平 平成24年7月号」掲載

三木 正也院長血液透析治療を開始すると、透析スタッフから色々な教育、指導を受けると思います。シャントの管理や、水分や食事の制限など、透析医療は他の治療に比べ自己管理しなければならないことが大変多いと思います。それだけに、どなたも疑問な点は多々あるのではないでしょうか。今回は少しでも快適な日常生活を送れるように、どのように自己管理すれば良いのかについて述べてみたいと思います。

 

佐久平透析クリニック(☎0267-65-7700) 三木 正也 院長

 

内シャントの不具合

シャントは血液透析には不可欠なものですので、特に関心を持ってもらいたい問題です。皆さんは毎朝、自分のシャントの振動(スリル)を手で触って確認していますか。スリルが弱いとか無いと思ったら透析室で申し出て下さい。血管が細くなりそこの上流の流れの悪い時、血が固まってやがて閉塞します。血流不良を早く見つけ、血管拡張術(PTA)を行うのが最適です。流れが悪くなるのは、除水が過度になり透析中の低血圧が続いた後に起こり易いので要注意です。シャントには低血圧は大敵です。
シャントの血流が良くないと感じたら、非透析日に肘から手の方向にさすりマッサージして下さい。これで出来かけていた新しい血栓なら取れます。またゴムボールなどを握る運動もお勧めです。

計算例どうして体重が増えてしまうのか

人間の体は約0.9%の食塩水の環境にありますから、塩分摂取が過度になると、これを薄めようとしてのどの渇きが起き飲水が多くなります。透析前の体重が増えてなかった時が、適切な塩分摂取量であったと考えられます。塩分計算は、ナトリウムで表示されている食品は、2.5倍して食塩に換算して下さい。漬物、味噌、ラーメンなどは特別塩分が多い食品です。どれだけ飲水できるか考えるとき、まず自分の尿量を確認して下さい。1日0㎖~500㎖の方が多いと思います。他に体外に出るものは、体からの水分蒸発でどなたも800㎖位あります。さて入るものですが、三食の重さを測って、内75%が水分と考えて下さい。食事の水分量は1ℓ(食事重量で1.3㎏)なら理想的ですが、1.3㎏を超えていれば水けが多い食事です。他に食事とは別に、飲水が有るわけですが、表のように尿量が200㎖の場合、飲水量と同じ量が体重増加になります。透析間の体重増加は、4時間透析でドライウエイトの5%以内である必要があります。これを超えて体重が増えてしまうのは、塩分の摂りすぎか、水分の多い食事かのどちらかが原因です。

蛋白質とリンと栄養

患者さんのデータを見ますと、蛋白質を制限しすぎて尿素窒素(蛋白質の分解産物)が低く、栄養失調の方を時々みかけます。これが元気が出ないもとです。蛋白質は、1日に体重1㎏あたり1.0~1.2g(60㎏の人で60g~72g)摂って下さい。この時蛋白質は、大豆などの植物性のものより豚肉など動物性のものが勧められます。例えば豚肉60gの蛋白量は12gです。蛋白質は内臓や筋肉などの維持に不可欠です。また感染症に対する抵抗力の面からも大切です。肉はいけないと全く食べていない方も多いと思いますが、肉や魚を1日1食は摂って下さい。蛋白を摂ると自然にリンが高くなりますが、最近は便秘の副作用の少ないリンを抑えるお薬なども出ていますので、しっかり食直後に服用してもらえば大丈夫です。

透析中や透析後に具合が悪くなる

これはドライウエイトが合っていない(低過ぎる)場合が多いのです。いつの間にか肥り、体の水分が少ないのに多くの除水をすると、血液が減少し血圧が下がり、ひどい場合はショックといって意識消失が起こります。また、透析後早期は血圧が突如下がり易く、透析後から帰宅までに具合が悪ければまず横になり頭を下げることが重要です。透析は、何しろ血圧が下がる治療ですので最大限の警戒をして下さい。このドライウエイトは、レントゲンで心臓の大きさを測定することや、血液所見などから割り出して上下させています。ドライウエイト、除水量が適切でも、血圧が下がる透析困難症の方がいますが、透析液(血液を浄化するためのお薬)が改良されて、重曹透析液(カーボスター)の登場により激減したように思います。

医学イラスト快適に過ごすための治療薬

糖尿病の方に起こり易い透析中の足の痙攣(こむらがえり)ですが、透析による大量の除水で下肢の筋肉が脱水になり起こります。10%食塩水注入、グリセオール点滴などが行われていますが、最近はカルニチンの内服薬が注目されています。ビタミンDが不足し関節の痛みなどを生じやすい透析患者さんですが、レグパラというお薬の登場で二次性副甲状腺機能亢進症を効率的に抑えられるようになってきています。腎不全特有の頑固な体のかゆみには、画期的なお薬(レミッチ)が発売され効果を発揮しています。透析関連の治療薬は、日進月歩で良くなっていると思います。

 

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