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女性は乳がん手術後も素敵なライフスタイルを

橋本 梨佳子 医師「月刊ぷらざ佐久平 平成24年10月号」掲載

現在乳がんは日本人女性の16人に1人と言われています。女性なら誰もが発症しうる病気です。そして必要な治療の1つが手術です。乳癌の手術は、乳房に傷をつけずして行う事は不可能です。しかし手術を行っても女性らしいおしゃれ、日常を楽しんでもらうため、治療の手術だけでなく乳房再建手術(ふくらみを取り戻す手術)があります。

佐久総合病院 乳腺外科(☎0267-82-3131)
がん研有明病院 形成外科研究員 橋本 梨佳子 医師

図1乳がん手術って?

乳がんは、30歳代から徐々に発症する人が増え40歳代後半にもっとも患者さんが多くなるため、若い女性に多い癌といえます。乳がんと診断されると、治療としてがんを取り除くために手術が必要となります。乳癌手術はがんの広がりが小さい場合は乳房温存手術を行い、広い場合は乳房切除手術を行います。乳房温存手術は部分的な摘出なので乳房のふくらみは残りますが、乳房切除手術は乳房全部を摘出します(図1)。特に乳房切除手術は喪失感が大きく、精神的負担の大きな手術といえます。自分のbodyに自信がなくなりおしゃれやパートナーとの生活が楽しめなくなっていく女性も多くみられ、それを改善するために乳房再建手術が生まれました。

図2乳房再建手術って?

先の乳房切除手術が必要な方を中心に当院では以下の方法で乳房再建手術を行っています。
①乳房切除手術と同時(1期再建)もしくは乳房切除手術後に行う(2期再建) 組織拡張(ティシュエクスパンダー挿入)手術(図2)
②人工物(シリコンインプラント)による乳房再建手術(図3)*②は現在保険がまだきかない手術ですが、多くの方が行っていらっしゃいます。
③自家組織乳房再建手術(図4)
まずは、上記の①の手術を行って頂きます。こ図3れはティシュエクスパンダーというバックを使って、失ってしまった皮膚や乳房のボリュームを取り戻し、人工物や自分組織(自家組織)を入れるためのスペースを作るのに必ず必要な手術です。この①の手術を行ってもらった後に、②もしくは③の方法で乳房再建手術を行っています。シリコンインプラントといえばいわゆる豊胸手術などに使図4われてきたもので美容の世界では一般的に使用されています。また③の自家組織というのはご自身のお腹や背中の脂肪・筋肉を使って膨らみをとりもどします。これはもちろん新たな場所に傷が増えてしまうので②に比べるとかなり大変な手術ですが、人工物であるシリコンインプラントに比べれば温かみがあり、よりオーダーメードに近い再建手術といえます。日本人の場合は、欧米人に比べると乳房が小さな方が多いので②による乳房再建が適した方が多いといえます。

乳房再建手術をして女性の楽しいライフスタイルをサポート

図5現在当院では、先の乳房切除が必要な患者様には乳房再建手術がある事を説明させて頂き、1期もしくは2期再建手術を希望された方々を中心に手術を行っています。しかしこの分野は乳腺外科医だけで完結する事は不可能であり、現在形成外科の先生方の協力を得て行っています。施設によって方針や手術方法が異なっているため、混乱をされる方もいらっしゃいますが、一番重要な事は治療を優先しつつ、乳腺外科の主治医ときちんと相談しながら決めていくことです。あせる必要はありません。乳癌と診断されると、その日から人生が大きく変わってしまうと思われがちです。しかしいつかは治療がひと段落して日常生活にもどっていく方が多くいらっしゃいます。そして治療後も、活発にスポーツを楽しんだり、おしゃれを楽しみながらバリバリ仕事をされている方がたくさんいます。乳腺外科医とし、女性として乳癌の方が手術後おしゃれをして病院にお越しになる姿が何よりもうれしい瞬間です。そのための手助けの一つとして、乳房再建手術があることを知って頂ければ幸いです。そしてすべての女性に、まずは何よりも早期発見に努めて頂きたいと考えております。

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