ぷらざINFO/教えてドクター みんなの医学

過活動膀胱おしっこの悩みを解決

「月刊ぷらざ佐久平 平成25年1月号」掲載

さとう院長過活動膀胱は「急に我慢できないような尿意が起こる」「トイレが近い」「急にトイレに行きたくなり、我慢ができず尿が漏れてしまうことがある」などの症状を示す病気です。40歳以上の男女の8人に1人が過活動膀胱の症状をもっているといわれています。今回は、膀胱の機能を理解していただいた上で、過活動膀胱の原因とその治療法について説明します。

 

さとう泌尿器科クリニック(☎0267-68-2233) 佐藤 智哉 院長

 

膀胱の機能

膀胱には、尿を貯める働き(蓄尿)と尿を出す働き(排尿)という2つの働きがあります。頭の付け根には蓄尿と排尿の切替スイッチがあり、脳が持つ意識の力がスイッチを切り替えています。蓄尿と排尿は、膀胱や尿道、意識の力と切替スイッチ、情報を伝える神経の働きが関与して成立しています。図1は蓄尿機能を表しています。膀胱には少しだけ尿が貯まっています。弱い尿意の情報は神経を通して意識に伝わります。排尿する図2気がなければ意識は切替スイッチを蓄尿の状態にします。この指令が神経を通して膀胱や尿道に伝わることで、膀胱はゆるみ尿道は締まって、尿漏れせずに尿を貯めることができます。これが蓄尿です。図2は排尿機能を表しています。膀胱にたくさんの尿が貯まり、強い尿意を感じてきました。トイレに入って支度をすると、意識は切替スイッチを蓄尿から排尿へ切り替えます。この指令が伝わると、膀胱が縮み尿道が開くことで、勢いよく尿が出ます。これが排尿です。

過活動膀胱の原因

①神経の老化現象
神経の働きは老化によって低下します。脳梗塞を患った方では特に顕著です。そのため、意識が蓄尿の状態にしたくてもその情報が切替スイッチに伝わりにくくなります。さらに切替スイッチの命令も膀胱に届きにくくなります。ヒトは尿が漏れても死にませんが、尿が出なくなると死んでしまいます。したがって、膀胱は神経からの指令がないと蓄尿よりも排尿を優先させます。意識とはうらはらに膀胱が縮んでしまい、過活動膀胱の原因になります。

②膀胱の老化現象
本来、膀胱は神経からの強い指令がなければ縮まないようにできています。老化によって膀胱の筋肉の性質が変化し、弱い指令でも縮みやすくなってしまいます。

③冷え
尿意を伝える神経の一部は冷たい感覚を伝える機能を持っています。そのため、ヒトは気温が低いと尿意に敏感になり、さほど尿が貯まっていなくても強い尿意を感じることがあります。これは女性に多い現象です。

④前立腺肥大症
前立腺とは男性だけにある臓器です。膀胱の出口で尿道を囲むようにあるため前立腺が肥大すると尿道が狭くなり尿の勢いが悪くなります。すると、膀胱に負担がかかり、膀胱の筋肉が鍛えられて分厚くなります(肥厚)。肥厚した膀胱の筋肉は刺激に敏感になるため、神経からの指令がなくても勝手に縮んでしまうようになります。

過活動膀胱の治療

一般的には膀胱の過敏な活動を抑える薬が有効です。これまでは口内乾燥や便秘などの副作用がありましたが、最近になって副作用が少ない新薬が開発されました。下腹部を冷やさないようにすることも重要です。
前立腺肥大症による過活動膀胱は、原因となっている前立腺肥大症の治療が原則です。安易に頻尿治療薬を内服すると、排尿の勢いが低下して体に負担がかかることがあります。

おわりに

おしっこの悩みの多くは、正しい治療を受けることで改善します。恥ずかしがらずに専門医を受診しましょう。

 

社団法人 佐久医師会
〒385-0052 佐久市原569-7
TEL0267-62-0442 FAX0267-63-3636
http://saku-ishikai.or.jp