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ペースメーカーについて

「月刊ぷらざ佐久平 平成25年10月号」掲載

フルタクリニック 古田 豪記 院長ペースメーカーという言葉はよくお聞きになっていると思います。例えばマラソンのペースメーカーはペース(速度、進行度、テンポなどの意味があります)を一定に保つために走る人のことですね。同じように心臓の脈拍が遅くなったときに電気的刺激を与え、脈拍のペースを増やす働きをする機械をペースメーカーと呼びます。今回は、その適応症、手術法、植え込み後の経過などについてご説明いたします。

 

フルタクリニック(☎0267-63-0202)古田 豪記 院長

 

 

徐脈

脈が遅くなりすぎることを徐脈と言います。医学的には1分間の脈拍数が60回を下回る場合です。例えば脈拍数が持続的に60を少し下回り、徐脈と診断されても、失神・めまいなどの症状がない方には病的な意味合いはなく、治療も必要ありません。ただし、症状がある方や脈拍が40回/分以下になると心臓内に血栓ができやすくなることもあるため、治療が必要になることが多くなります。

 

徐脈の治療法

徐脈の治療をするにあたって第一選択は、薬物療法です。脈拍を遅くする薬をやめる、脈拍を速くする薬を投与することから始めます。ただし、徐脈になっている病気によっては無効のことが多くなっています。そして、今回のテーマであるペースメーカー植え込み術があります。徐脈の治療としては、最終手段となりますが、必ず徐脈を治すことができる最強の手段です。必ず診療の初めから頭に置いて治療していく必要があります。

 

ペースメーカーが必要な病気(病名)や状態

ペースメーカーの植え込みをしたほうが良い方は脈拍数40回/分以下になる、あるいは3秒以上脈が途絶えてしまう方です。ペースメーカーが必要な主な病気は、完全房室ブロック、洞不全症候群、徐脈性心房細動とともに心不全などの治療のために徐脈を招いてしまう薬剤の投与が不可欠な場合です。

 

図1ペースメーカーと手術方法

植え込み方法:基本は効き腕と反対の鎖骨下に約5㎝の皮膚切開を加え、ペースメーカー本体が入るポケットを作成します。続いて、心臓の脈拍状態を把握し、刺激を伝える働きをするリードと呼ばれる線をレントゲンを見ながら鎖骨下の静脈から心臓の筋肉に挿入します。最後にジェネレーターと呼ばれるペースメーカーの本体(図1)をリードと接合して終了です(図2)。手術時間は施設に図2よって違いますが、15~30分です。
電池寿命:ペースメーカージェネレーターは頭脳・刺激・電池の働きをします。もちろん、後から記録を呼び出すことも可能です。心臓の不整脈、刺激を出した履歴などすべてを記憶しています。電池の寿命は、人によって大きな違いがありますが、約10年が目安です。電池がなくなってきた場合は、ジェネレーターのみを交換します。手術時間は施設によって違いますが、リードの交換の必要はありませんので、10分程度です。
手術後:ペースメーカーの不具合や不整脈、電池切れで生命を脅かすことになりますので、半年に1回はチェックを受ける必要があります。

 

最新情報

現在、寝たきり以外の方には、遠隔モニター付きのペースメーカーの植込みが主流になりつつあります。遠隔モニターとは、ご家庭にいながら、病院にいる医師のパソコンにペースメーカーの異常や致死的不整脈のデータが送られてくるシステムで、一生涯続けることができます。このシステム導入により異常をより早期から発見することが可能になっています。
また、ジェネレーター交換の時には、疼痛や感染などの問題があり入院して行うことが一般的でしたが、佐久地域には日帰り手術を開始した施設もあります。ペースメーカーが入った後には生活の制限が少しありますが、特殊なこと以外はすべてできると考えていただいてよいと思います。具体的な禁止項目は専門医へお尋ねください。禁止項目の一つとしてMRIの検査がありましたが、MRI検査を受けることができるペースメーカーも使用され始めました。

 

最後に

ペースメーカー植え込み術は、弁膜症の手術や冠動脈バイパス術などの生命のリスクが高い心臓手術(リスクは医師の努力により低下してきています)と同等の手術と考える方が多いようです。しかし、体に対する負担は軽く、大きな合併症をお持ちでない方には生命のリスクはない手術です。専門医が必要と判断した場合には、過度な不安を持たずに治療をお受けになることをお勧めいたします。

 

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