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見ようとする字が見えない!ゆがんで見える! こんな症状に要注意!!~加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)~

「月刊ぷらざ佐久平 平成26年5月号」掲載

新聞でもよく見かけるようになった目の病気、加齢黄斑変性《かれいおうはんへんせい》。
人間ドックや健康診断で“黄斑変性”と指摘され急いで眼科に受診、という方も多くいらっしゃいます。
加齢黄斑変性とは、いったいどんな病気で、どんな症状があるのか。治療法はあるのでしょうか。またどんなことに気をつけて生活したらよいのでしょうか。

 

佐久総合病院本院 眼科(☎0267-82-3131)三浦 文英 医師

 

図1)カメラの構造と目の構造は似ています一体どこの病気?黄斑ってどこのこと?

眼の働きはカメラにたとえることが出来ます。虹彩(茶目)はカメラの絞りに、水晶体はレンズに、網膜はフィルム(今ではCMOSなどの撮像素子)に相当します。
網膜の中で、最も視力に関係するのが“黄斑”です。そこには重要な細胞が集中していて、物の形、大きさ、色など光の情報の大半を識別しています。この黄斑に異常が起こる病気です(図1)。

 

写真1)加齢黄斑変性何人ぐらい病気になるの?

加齢黄斑変性は、欧米先進国において、成人(特に50歳以上)の失明原因の第1位です。日本でも、近年の急激な高齢者人口の増加、生活スタイルの欧米化に伴って患者数が増えています。日本でも、50歳以上の有病率が2003年には0.9%でしたが、最近の調査で1.3%に増えています。
病名が示す通り“加齢”が原因で、男性に多く、喫煙との関係も指摘されています。1日20本以上煙草を吸う人は、吸わない人の3倍発症しやすくなります。また活性酸素が発症に関与していることも指摘されています。

 

写真2)見え方のシミュレーション例症状は?

加齢黄斑変性は、黄斑部にできた病的な新生血管から出血し、むくみが出て、黄斑の機能に大きなダメージを与えます(写真1)。そうすると視野の中心部分、すなわち一番見たいところがゆがんでしまったり、見えなくなったりします(写真2)。

 

どんな検査が必要でしょう?

病気が疑われる患者さんには、視力検査、眼底検査のほかに、病気の状態や病気の分類のため光干渉断層計(OCT)検査や蛍光眼底造影検査を行います。(専門的な検査になりますので当院で出来ない検査があります。必要に応じ専門病院へ紹介します。)

 

治療法はありますか?

今までは視力予後不良で、治療が難しい病気でした。しかし2004年に光線力学療法が登場し、治療法は大きく進歩しました。また2008年、2009年と続けて抗VEGF療法に使用する薬剤が日本でも承認されました。2012年にも新しい薬剤が承認され、治療に使われています。
1.光線力学療法
光に反応する薬剤を注射し、病気の部分に特殊なレーザーを投射します。“弱いレーザー”によって薬剤が活性化され、正常網膜へのダメージを抑えながら病気のもとになる新生血管や異常血管を退縮させます。
2.抗VEGF療法
加齢黄斑変性の原因である脈絡膜新生血管の発生や進展には、血管内皮増殖因子(VEGF)が関与しています。そのVEGFを抑制する薬剤(抗VEGF薬)が3種類認可され、臨床使用されています。近年の研究結果では、抗VEGF薬が光線力学療法と同程度またはそれ以上に、視力改善維持に有効であったと報告されています。また、病気の種類によっては、両方の治療を行います。

 

アムスラーチャート

早期発見が大切

前駆病変があると4.4  倍病気になりやすい!
加齢黄斑変性は、正常な段階から、前駆病変であるドルーゼンや網膜色素上皮異常を経て発症するといわれています。視力低下やゆがみなど自覚症状が少ない段階で予防することが大切です。早期に発見できれば、効果的な治療が行え、視力低下を防ぐことが出来ます。まったく自覚症状がない人でも、50歳を過ぎたら一度眼底検査を受けましょう。

加齢黄斑変性の予防には、禁煙、食生活の改善(緑黄色野菜や青魚などをバランスよく摂る)、サプリメントなどが推奨されています。

 

自己チェック法

30センチ程度離して、格子状の表の中心を見つめ、片目ずつ見え方に異常がないかチェックします。両眼で検査をすると、片目が病気でも、反対の目で補ってしまい異常を感じにくくなります。線がぼやけて薄暗く見える、部分的に欠けて見える、中心がゆがんで見えたりしたら、黄斑部の病気が疑われます。すみやかに眼科受診をしましょう。

 

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