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アレルギー性鼻炎の診断と治療 予防と対策について

「月刊ぷらざ佐久平 平成23年2月号」掲載

谷口医師アレルギー性鼻炎の我が国における患者数は1970年代に入り急激に増加し、いまや国民全体の約30%が罹患(りかん)しているとされる国民病の一つであります。その原因がハウスダスト、ダニなどを抗原とする通年性アレルギー性鼻炎が主体でありましたが、最近ではスギ花粉の飛散数増加などに伴い花粉症が急増しており、社会問題にもなっています。

佐久総合病院 耳鼻咽喉科(☎0267-82-3131)  谷口 雄一郎 医師

アレルギー性鼻炎とは?

アレルギー性鼻炎はくしゃみ発作、鼻汁および鼻閉を3主徴とする鼻粘膜のアレルギー疾患です。大別するとダニやハウスダストなどによる通年性アレルギー性鼻炎とスギ、ヒノキなどの花粉抗原による季節性アレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症)に分類されます。

アレルギー検査および診断法

アレルギー性鼻炎の診断に最も重要なのは問診であり、症状を正確に把握することが必要です。アレルギー性鼻炎のための検査は大きく分けて2種類あります。

①アレルギー性鼻炎があることの証明
②原因抗原がなんであるかを判断するための検査

前者では問診、鼻鏡検査、X線検査、血液・鼻汁好酸球数、血清総IgE検査、後者では皮内テスト、スクラッチテストなどの皮膚テスト、血清特異的IgE検査、抗原誘発テストがあります。しかしこれらの検査が全て必須ではないので、それぞれの症状に応じて必要な検査を行っていく事が大切です。最終診断は問診を基本にし、検査成績を総合して行います。

予防と治療

アレルギーの治療法は患者とのコミュニケーション、抗原の除去と回避、薬物療法、特異的免疫療法、手術療法に分けられます。抗原の除去と回避に関しては、ハウスダストやダニによるアレルギーには掃除や寝具の洗濯によるアレルゲンの除去が大切です。掃除とともに除湿機を用いて室内の湿度を上げないことも、ダニの減量に効果的です。スギ花粉の飛散に対する制御は難しいので吸入阻止の対策を立てる必要があります。近年ではスギ花粉情報は精度が向上しつつあり参考になります。室内に侵入した花粉は掃除で除去する事が必要です(表1)。近年のアレルギー疾患に対する治療上の進歩は新しいアレルギー性鼻炎治療薬の開発にあります。主な内服の治療薬としては抗ヒスタミン薬(第一世代、第二世代)、抗ロイコトリエン薬、抗プロスタグランジン・トロンボキサン薬と鼻噴霧用ステロイド薬(点鼻薬)が主に用いられています。これらの種類は多岐にわたっており、正確な診断とそれぞれの病型(くしゃみ・鼻漏型、鼻閉型)及び重症度により適切な薬剤の選択が必要になります。

花粉症の初期療法とは?

毎年のように強い花粉症症状を示す症例に対しては初期療法が勧められています。初期療法とは花粉が飛び始める前から、抗アレルギー薬の内服を開始し花粉シーズン中のアレルギー症状を軽減する治療法です。基本的には飛散予測日の1〜2週間前から、あるいは症状が少しでも現れた時点から内服を開始します。初期療法のメリットとしては花粉が飛ぶ前から予防的に薬を服用することで、花粉が飛び始めても症状が出始める時期が遅くなります。花粉飛散の最盛期を迎えても、症状を軽く抑えた状態で過ごせるので、薬を服用する回数や点鼻薬などの併用薬を使用する回数を減らすことができます。今年は昨年に比べて花粉飛散量が2〜5倍に増加するとの予測がありますので、早めの治療が必要と思われます。

手術療法について

手術療法は反復する発作の結果、粘膜が不可逆に変化し薬物に抵抗する症例に用いられます。毎年、鼻閉が強く薬物療法の効果が不十分な方では鼻中隔彎曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)、肥厚性鼻炎(ひこうせいびえん)、鼻茸などの鼻腔形態の異常の有無について耳鼻咽喉科専門医の診察を受ける必要があり、鼻腔形態異常を手術的に矯正することにより花粉症時期の鼻閉は改善します。

最後に

本格的に治療をしたいと病院に行く場合は、「自分はアレルギー性鼻炎の治療に何を期待しているか」を明確にすることが大事です。急場をしのげればよいのか、完治することを望んでいるのか、通う回数はどれくらいにしたいのかなど、その人の症状や状況により、色々な希望があると思います。症状やライフスタイルに合わせ、自分にとって一番よい治療法を見つけてください。

表1 スギ花粉の回避(鼻アレルギー診療ガイドライン 2009)
①花粉情報に注意する。
②飛散の多い時の外出を控える。外出時にマスク、メガネを使う。
③表面がけばだった毛織物などのコートの使用は避ける。
④帰宅時、衣服や髪をよく払ってから入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。
⑤飛散の多い時は窓、戸を閉めておく。換気時の窓は小さく開け、短時間にとどめる。
⑥飛散の多い時のふとんや洗濯物の外干しは避ける。
⑦掃除を励行する。特に窓際を念入りに掃除する。

市民公開講座 第7回 「糖尿病フォーラムin佐久」

あなたも一病息災!

日時:2月26日(土)14:00 ~ 16:30(13:30開場)
会場:佐久勤労者福祉センター 1F ホール
栄養相談:13:00~ 2F会議室 「楽しく食べてコントロール良好」
入場無料/託児所有り
主催:佐久医師会
共催:長野県栄養士会佐久支部
東北信地域糖尿病療養指導士育成会

◆基調講演
「インスリン治療への道を開いた男~吉澤国雄先生の業績」
仲 元司先生(浅間総合病院)

「農村医療の礎を築く・八千穂村から始まった日本の健康管理活動~若月俊一先生の業績」
大橋 正明先生(佐久総合病院)

「カーボに気をつけよう!」
中澤 明子さん(浅間総合病院・管理栄養士)

「体を動かそう」
茂原 徹也さん(佐久総合病院・健康運動指導士)

柳澤 和也さん(佐久総合病院・糖尿病療養指導士)

◆特別講演
「あなたも一病息災!」 相澤 徹先生(相澤病院・糖尿病顧問)

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