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緑内障で失明しない為に

「月刊ぷらざ佐久平 平成26年6月号」掲載

長らく失明原因第一位は糖尿病網膜症でしたが、近年、緑内障が失明原因の第一位となりました。その要因は何と言っても発見の遅れにあります。緑内障の大部分を占める慢性緑内障では、初期には全く自覚症状がありません。まず視野が徐々に狭くなり、一般的に視力は最後まで保たれます。視力が1.5あっても視野が狭く手遅れに近いという方もおられるので、何より早期発見が重要なのです。

 

博愛眼科クリニック(☎0267-63-1300)多田 博行 院長

 

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緑内障とは

緑内障は、眼圧が高いか視神経が体質的に弱いために、視神経が障害されていき、視野が狭くなる病気です。眼圧とは眼球内の圧力のことで(図参照)、眼球がやわらかければ眼圧は低く、眼球が硬ければ眼圧は高くなります。視神経とは物を見るための神経で(図参照)、昔は、高眼圧のみが緑内障の原因と考えられていましたが、今は、視神経が弱いための緑内障が大半を占めていることが分かってきました。これを正常眼圧緑内障と呼んでいます。正常眼圧緑内障でも眼圧をより低くすればするほど緑内障の進行速度は遅くなることが知られています。緑内障は、けして稀な病気ではなく、40歳以上の4%位は緑内障で、しかも年齢が高くなればなるほど多くなり、超高齢化社会へ突入する日本ではますます増えることが懸念されています。

 

緑内障の症状

正常眼圧緑内障を含めた、緑内障の大部分を占める慢性緑内障では、初期には何も症状がありません。人間ドックなどの健康診断か、たまたま他の病気で眼科にかかり発見されます。進行するにつれて、まず視野が狭くなることから始まります。最後は視力も低下し光も見えなくなります。しかし、視野はかなり狭くなっていても、視野検査をしてみないと自分では分からないことが多く、自覚的に視野が狭いことに気づく時には、一般的にはもうかなり進行している緑内障です。一方、急性緑内障は、強い眼痛・充血と急激な視力低下がおこり、放置すれば数日以内に失明します。

 

緑内障の治療

慢性緑内障の治療は、正常眼圧緑内障も含めて、まず点眼治療です。緑内障がほとんど進行しないくらいに眼圧が下がるまで、点眼薬の種類や回数を増やしていきます。視野が狭ければ狭いほど、より低い眼圧にしていかないと、視野狭窄の進行を一般的には抑えきれません。眼圧の正常範囲は10〜20(mmHg)位ですが、重症末期の緑内障では、5(mmHg)位に眼圧を下げないと視野狭窄の進行速度を遅くできません。点眼で十分に眼圧が下がらない場合は、内服やレーザー治療も考えますが、基本的には緑内障手術が必要です。緑内障手術は白内障手術と違い、手術しても良く見えるようにはなりません。あくまでも視野や視力などの視機能をできるだけ長持ちさせるために行います。例えば、手術しなければ半年位でほとんど失明してしまうケースでも、手術をすることによって2〜3年以上、視力や視野を残せる可能性が出てきます。ただ、緑内障でも急性緑内障ではレーザー治療や手術が基本となり、2〜3日以内に治療を開始すれば、この場合のみ視力や視野が改善する可能性があります。

 

早期発見が大切

慢性緑内障では、視野や視力の障害を点眼でも手術でも回復させることはできません。治療はあくまでも今ある視野や視力をできるだけ長持ちさせるものですので、光しか見えない緑内障は完全に手遅れといえます。また、中等度以上の緑内障では、緑内障が進行すればするほど、手術で眼圧が下がっても手術直後に視力や視野が悪化してしまうリスクが高くなっていきます。ですから、重症末期緑内障では手術をしなければ早期に100%失明、手術をすると手術直後に5〜6割失明という深刻な事態に直面していきます。したがって、緑内障では早期の軽症のうちに発見することが何より大切です。人間ドックなどの健康診断を積極的に受けて早期にその兆候を掴むことは重要です。

 

まとめ

正常眼圧緑内障も含めて慢性緑内障は、かなり進行するまで全く自覚症状が出ないことがほとんどです。いったん生じてしまった視野狭窄や視力低下は最新の医学でも治すことはできません。ですから早期発見が何より大切といえますので、40歳以上になりましたら、人間ドックなどの健康診断を受けられることをお勧めします。また、せっかく人間ドックなどで「緑内障の疑いがあり眼科受診が必要」と言われたのに放置するケースや、いったん受診して点眼治療や定期検査の指示を受けても、その後中断してしまう方が本当に多いのです。手遅れに近い緑内障で受診された方のお話をよく聞くと、「以前ドックで緑内障の疑いと言われたことがある」「以前に緑内障の点眼をしていたが良く見えて何も自覚症状がないので放置していた」ということがかなりあります。

 

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