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皆さんは“形成外科”を ご存じですか?

「月刊ぷらざ佐久平 平成23年6月号」掲載

形成外科は、身体に生じた変形や欠損を、手術を始めとする数々の手法で正常に近づける外科系の専門領域です。“醜い状態”を“美しい状態”に治すことで、QOL(quality of life)の向上を目指します。数ある形成外科の治療法の中から今回は乳がん切除に伴う乳房再建手術についてご紹介します。

佐久市立国保浅間総合病院 形成外科(☎0267-67-2295) 宮下 宏紀 医師


宮下医師乳房再建について

日本では毎年4万人もの人が乳がんと診断されています。女性のシンボルとも言える乳房を切られてしまうことで、乳がん患者さんのQOL(quality of life)は大きく損われてしまいます。乳がんを切除した後の乳房再建は「こころの再建」とも言われます。乳房を失うことによる精神的損失を取り戻す治療です。2006年からは乳房再建術が正式に保険点数として収載されたことで、より一般的に行われる治療になってきました。乳腺外科と形成外科が協力して治療する施設はまだ少ないのが現状ですが、当院では乳腺外科と密接な連携のもと、一次再建(同時再建)を中心に整容的な乳房再建術を行っています。

 

再建の時期

乳房再建の時期としては、乳がん切除と同時に行う一次再建と、手術後の補助療法(化学療法、ホルモン療法)が終わってから再建を行う二次再建があります。一次再建では麻酔から覚めたときにはすでに再建された乳房があることになります。また、二次再建と比べると手術が1回少なくなるので経済的であることも利点です。二次再建では再建について十分に考える時間があるのが利点です。

再建の方法

患者さんの希望が第一となりますが、再建部位の皮膚と筋肉の状態、対側乳房の大きさ・下がり具合、妊娠希望の有無、組織採取部位の状態などからアドバイスをしています。

Ⓐ人工乳房による再建

Ⓐ人工物
初回手術ではシリコン製の風船のようなものを胸の筋肉の下に留置し、徐々に皮膚皮下組織を乳房の形に膨らませて、4〜6ヶ月後に人工乳房に入れ替えます。利点は体の他の部位に傷をつけないことです。基本的に は人工物ですからときに感染、破損や変形の可能性もあります。その際は再度バッグを入れ替えることになります。我が国はいまだ人工乳房を承認していないため、費用は自費診療となります。

Ⓑ-1.腹直筋皮弁術による乳房再建

Ⓑ自家組織

患者さん自身の身体の皮下脂肪の豊富な部分を胸に移植する方法です。より自然な形態が再建でき、メンテナンスフリーであることが最大の利点です。

1.腹部の皮下脂肪を利用する腹直筋皮弁術
2.背中やわき腹の皮下脂肪を利用する広背筋皮弁術
の2つが代表的な方法です。Ⓑ-2.広背筋皮弁術による乳房再建

 

乳頭乳輪の再建

乳房を再建したのち、約6ヶ月から1年経過してから乳頭乳輪の再建を行います。乳輪は医療用の色素で色を付けたりすることができます。

以上が一連の乳房再建の流れになります。乳房再建には言葉では伝えきれない精神面での大きな効果が期待できます。乳房のこと、乳がんのことでお悩みの方は是非一度形成外科で相談してみてはいかがでしょうか。


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