ぷらざINFO/スマートビズ

信州味噌株式会社 ー専務・工場長 森 健 氏ー

専務・工場長 森 健 氏原料選びから妥協なくこだわる
真摯な姿勢が深い味わいを醸す

江戸・北国街道の趣きを残す小諸市荒町に、「山吹味噌」の銘柄で知られる信州味噌の本社はあります。そもそも延宝2(1674)年、第12代当主小山久左衛門正顕が酢や醤油の醸造を始めたことが同社の始まり。昭和26(1951)年コクとかおりに味噌部門を独立させて新たなスタートを切った後は、浅間山麓の冷涼な気候を生かした伝統の仕込みで、塩分量や醸造期間を変えながら、多彩なバリエーションの「山吹味噌」を生み出してきました。

「長く愛される味噌を醸すためには、原料にこだわらなくては」と語るのは、同社で30年以上味噌造りに携わる工場長の森健さん。味噌の原料となる大豆は、色が黄色く、糖分とたんぱく質を多く含み、脂肪分が低く、さらに皮が薄いものが良いとされています。
黒龍江省の「白眉」の畑で、栽培者と共に国内産より中国大陸北部で栽培される豆が好条件と考えた森さんら製造スタッフは、中国の3000種近い大豆の中からさらに絞り込みをかけ、黒龍江省宝清県の「白眉」という品種に注目しました。一時は生産数の減少から幻の大豆と呼ばれていたそれを、外観現地の農家と協力して復活、栽培。平成2(1990)年には、白眉の中でも大粒の「大白眉」を原料とした低温長期熟成商品「コクとかおり」の製造にこぎつけたのです。「中国産といっても決して安くない。けれども、無添加で素材丸ごとを生かす我々の味噌造りには、白眉がベストだったのです」と森さん。今も現地に自ら出向き、農家の人たちと直接話をしながら、より良い大豆作りを模索しています。
sb064_05通常、味噌を醸す過程では大豆を煮ますが、蒸して旨みを閉じ込めているのも同社の特徴。その蒸し汁を濃縮するのには、NASAの宇宙技術が使われているというから驚きです。宇宙飛行店内士の飲料水を得るために開発された超精密ろ過装置を、逆に、蒸し汁から水分を取り除くために利用。濃縮された蒸し汁は、酵母菌を培養するのに使っているそうです。伝統と最先端の科学技術の共存。そこに原料からこだわる蔵人たちの熱い想いが加わって、300年来続いてきた蔵の中では、いっそう深い味わいの味噌が今日も醸されています。